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「青天の霹靂」 [映画]

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〔2014年/日本〕


マジックバーで働く、マジシャン轟晴夫(大泉洋)は、
もうとうに人生を捨てたような男。
母は、自分が生まれてすぐ、
父・正太郎(劇団ひとり)に愛想を尽かして出て行ったし、
その父とは、高校卒業以来会っていない。


ある日、警察から父が死んだとの連絡が入る。
父の骨壺を抱えた晴夫は、
父が生前住んでいたという河原の段ボールハウス行ってみる。
天涯孤独になった彼は、
生きる意味も見い出せず、その場で涙する。


すると、どうだろう。
天からの強い稲光が晴夫に当たり、
なぜか彼は、40年前の浅草にタイムスリップしてしてしまう。


浅草の演芸場で、
支配人(風間杜夫)にマジックを披露した晴夫は採用され、
助手に花村悦子(柴咲コウ)という女が付けられ舞台に立つ。
そして、同じ演芸場で働くマジシャンの男に会い、仰天する。
なんとそれは、40年前の父だったのだ。


正太郎と悦子は同棲しており、
悦子は妊娠しているという。
「つまり、悦子の腹の子は俺!?」
そう気付いた晴夫は、
自分を捨てて行った母と複雑な思いで接する。


悦子の妊娠により、
晴夫と正太郎がコンビでマジック漫才を始めた所、
それが大受け。
浅草で彼らの名前を知らない者はいなくなる。


悦子はもうすぐ出産を迎える。
そんな中、晴夫は、
母がいなくなった本当の理由を知る・・・。





劇団ひとり氏の原作小説を、
ご本人が監督し、
出演までしたという本作。


思っていたよりずっと良かった。
何より、無駄な場面が一つもなく、
96分という、短い時間に
描きたい部分だけをきっちり押さえている所に
なかなかの才能を感じる。


先日、ひとり氏が、
「徹子の部屋」でこの映画の宣伝をした際、
「96分という上映時間にはとても拘りがあった。
 なぜなら、自分はトイレがとても近く、
 これ以上の上映時間は苦痛だから」と言っておられた。


これは私も含め「ありがたい」と思う方も多い気がする。
もしかしたら、ひとり氏ご自身の性格も、
あれやこれやと欲張らない、
スッキリした方なのかなと思ったりもする。
彼の事はよく知らないし、
今まで、好きとも嫌いとも思った事がなかったけれど、
ちょっと好感を持ってしまった。


大泉洋演じる、売れないマジシャン・晴夫が過去へ行き、
まだ若い、自分の父と母に会う・・・
ちょっと「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と設定は似ているけれど、
まず、なぜ彼の頭の上に雷が落ちてきたのか、などの、
細かい説明は一つもない。
「とにかく落ちてきたんだよ、文句あるか」ってなもんである(笑)。


今まで一度も会った事のない母が目の前に・・・
本来なら深い感慨を覚える所であろうが、
晴夫の心は、反発でいっぱい。
母が父の生活態度を注意するのを見て、
「お前こそ、子供を捨てたじゃねーか、エラソーにするな」、とつぶやいたりする。


この母を演じる柴咲コウが素晴らしい。
美しく、強く、そして儚げで、
とても子供を捨てるような女とは思えない。
お腹の子供を大変に慈しんでいる様子が伝わってきて、
泣けてしまう。
母と息子の物語っていい。


そして分かる、母がいない本当の理由。
「もう、お父さんたら、息子にちゃんと説明してよ」
と言いたくなるけれど、
それを言わなかったのが、
父の思いやりであり、
また、父の適当さでもある(笑)。
さらには、父も、妻がいない現実を受け入れたくなかったのかもしれない。


母がこのまま出産すると、
1つの世界に2人の晴夫?
そこはどう折り合いをつけるのか、と、
心配していたけれど、
その場面も大変に上手い。
手堅くまとめてある。


晴夫と正太郎の、
舞台でのマジック漫才もなかなか楽しい。
あんなコンビが本当にいたら、
そこそこ笑ってしまいそう。


未来から来た晴夫は、
「これからはテレビの時代だ」と言い、
2人でオーディションを受ける。
浅草から出てきた2人組という話から、
北野武氏を連想してしまう。


評価 ★★★★☆

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