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「人生とんぼ返り」 [映画]

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〔1955年/日本〕


大正10年、大阪。
新国劇の殺陣師・段平(森繫久彌)は、
創立者の沢田正二郎から、
「もっとリアリズムのある殺陣をつけてほしい」と言われ、
困り果てる。
学校を出ていない段平は、
「リアリズム」と言われても、
まるで意味が分からなかったのだ。


しかし、沢田が町のチンピラを
投げ飛ばすのを見て、
そこにリアリズムを見出し、
殺陣が完成。
その芝居は大ヒットする。


しかし、
大阪でヒットしたものが、
東京で受けるとは限らない。
新国劇は東京の興行で苦戦し、
殺陣のない芝居をする事になる。


5年後、
新国劇は大阪で、
「国定忠治」を上演する事になり、
今こそ、段平の殺陣が必要となる。
しかし、段平は重い病に伏せっており・・・。





少し前に、
2本連続して、
「殺陣師段平」を観た。

1950年版 ⇒ https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2020-03-21
1962年版 ⇒ https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2020-03-22


本作は、
前の2本の間(1955年)に作られた作品で、
監督は50年版と同じ、マキノ雅弘さん。


段平の役は、
月形龍之介から森繫久彌さんに変わっているけれど、
女房のお春役の山田五十鈴さんは同じ。


なぜ、同じお話しを
たった5年でリメイクしたのか
理由は分からないけど、
前に観た2本より、
とっても、きめ細やかなものを感じる。


特に今回、強く感じたのは、
段平とお春の絆。


大阪で成功した段平が、
東京に行くため、
お春は荷造りをしてやっている。


けれど、本当は、お春は、
段平に行ってほしくはないのだ。
東京公演が上手くいってしないと知ったお春は、
「ここでゆっくり暮らしたらええやんか」と
段平に言う。


仕事で遠くに行く夫を、
泣いて引き留めるわけにもいかず、
かといって、なんとか留まらせたい、
そんな彼女の淋しい気持ちが
心に沁みる。


女中・おきくと段平の関係もいい。
実はおきくには、
出生の秘密があり・・・
いや、詳しい事はここには書かないけど、
その辺りも、上手く描かれていると思った。


森繁さんって、凄いなぁ。
以前、黒柳徹子さんが、
森繁さんと、楽屋で、
「痴呆老人同士の会話」というのをして、
遊んでいた、と読んだ事があるけれど、
病に倒れた後の森繁さんの演技を観て、
その事を思い出した。


こんな風に書くと、
「老人を馬鹿にしているのか」と言われそうだけど、
それは絶対に違う。


それは、芸なのだ。
森繁さんも、黒柳さんも、
お年寄りに敬意を持ちながら、
芸を磨いていたのだと私は思う。
何でもかんでも不謹慎と言ってしまえば楽だけど、
それでは、何も生まれない気がする。


評価 ★★★★☆

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