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「喜劇 団地親分」 [映画]

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〔1962年/日本〕


大阪キタを縄張りとする、
ヤクザ・大川組の親分・大川重五郎(伴淳三郎)。


東京の大学に通う、
重五郎の娘・エリ子(環三千世)が、
久し振りに帰省したが、
どこか元気がない。
彼女は重五郎に、ヤクザをやめてほしいと懇願する。


エリ子は、
東京で恋人ができたのだが、
恋人の父親は検事。
ヤクザの娘など、嫁にできるわけがないのだ。


そんなエリ子のために、
重五郎は大川組を解散し、
子分たちと一緒に、
近所の「虹ヶ丘団地」に引っ越した。


団地には、「虹の会」という、
文化人たちで結成される会があった。
重五郎は、その会に入りたいと熱望するが・・・。





ヤクザの親分が、
娘のために足を洗い、
団地の住人になる、という物語。


ポスターの文字を見ていただくと分かるけど、
それはもう、
大変な出演者さんの数と、
豪華さ。


なにせ、映画の冒頭、
テーマ音楽に乗って、
「関西喜劇人協会」
「東京喜劇人協会」
の文字が出てくる。


しかも、脚本を手掛けるのが、
花登筐さん。


やはり、この映画の肝は、
「団地」。
今、「団地」と聞いても、
特に何も思う事はないけれど、
おそらく、当時は、
文化的生活の最先端のようなイメージだったのだろう。


つまり、伴淳さん演じるヤクザの親分が、
生活を一転させて住むには、
最適の場所、と。


けれど、いくら伴淳さんが、
真っ当な人間になる事を望んでも、
子分たちは、
中々ヤクザ気分から抜け出せない。


困った事があると、
すぐに、
大声を出す、
恫喝する、
暴力を振るう。
あれじゃ、親分だけが変わったって意味ないわけで。


そして、伴淳さんがなりたいのが「文化人」。
そもそも、「文化人」の定義って何だろうと思うけど、
わたしには、よく分からない。
だって、ここに出てくる自称「文化人」の皆様は、
嫌味な奴らばかり。


伴淳さん、
あなたがなるべきなのは、
「文化人」でなく、
「一般人」じゃないんですか?と声を掛けたくなる。


そして、その「文化人」たちが
詐欺事件に巻き込まれるんだけど、
詐欺師を演じているのが、
渥美清さん。
やっぱり豪華。


詐欺師に騙されるなんて、
やっぱり自称文化人は、
本物ではないって事ね。


評価 ★★★☆☆

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「長崎の鐘」 [映画]

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〔1950年/日本〕


長崎大学医学部の学生・永井隆は、
内科医を志していたが、
雨に打たれた事が原因で、
急性中耳炎をおこし、
右耳が不自由になってしまう。


そんな状態では、
聴診器を使っての診察ができない。
泣く泣く、内科医を諦めた永井は、
物理療法科(レントゲン科)の道に進む。


当時、物理療法科は、
他の医学より、一段下に見られ、
永井も失意の中にいたが、
次第に研究にのめり込むようになる。


看護婦の山田幸子(津島恵子)は、
そんな永井を支える一人。
内科への転科の話を断り、
永井の傍にいる事を決める。


もう一人、永井の身近にいる女性が、
下宿先の娘・森山みどり(月丘夢路)。
みどりの両親は、
永井とみどりの結婚を望んでおり、
永井はそれを承諾する・・・。





実在の医師・永井隆の半生を描いた映画。


耳を悪くしたせいで、
内科医を諦めた永井が、
不本意ながら、
レントゲン科の道に進むが、
その研究に没頭してゆく様子がいい。


人間、誰しもが、
希望する進路に進めるわけでなく、
時として、失意の中、
嫌々、その道に進む事もあろう。


それでも、
そんな状況の中から、
生き甲斐を見出し、
まるでそれが天職のようになってゆく、
永井先生の仕事への取り組み方は
見習いたいものがある。


そんな真面目で、素敵な永井先生は、
女性からもモテモテである(笑)。


看護婦の幸子と、
下宿先の娘・みどり。
先生はどちらを選ぶのかと、
気になって観ていたら、
選んだのみどり。


そっかぁ、
私は、どちらかというと幸子の方が好きだけど・・・
・・・って、
私の好みはどーでもよろしい(笑)。


実は、この映画、
日本で初めて、
原爆が描かれた映画なのだそうだ。


長崎在住の永井先生は、
原爆で妻を失う。
被爆状況などを、
もっと詳しく描きたかったようだけれど、
GHQの検閲が入り、
叶わなかったそうだ。


評価 ★★★☆☆

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「黒の切り札」 [映画]

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〔1964年/日本〕


根来恭平(田宮二郎)、
林哲也(山下洵一郎)、
多田健吉(待田京介)
の3人は、
それぞれ別の理由で、
新日本開発の会長・深沢に深い恨みを抱いていた。


根来は、
深沢の請負業者・郷田が経営する
ナイトクラブに、
サックス奏者として入り込み、
郷田に取り入る事に成功する。


根来たちは、
復讐の計画を練ってゆくが、
根来の大学時代の親友で、
検事になった大崎(宇津井健)は
そのことに気付き、
計画の中止を警告する。


実は、大崎の婚約者・知子(藤由紀子)は、
根来と恋人同士だった過去があり・・・。





昨日書いた、
「黒の挑戦者」では、
悪を許さない弁護士を演じていた田宮二郎さんが、
本作では、
復讐に燃える男を熱演。


敵陣が経営するナイトクラブに、
サックス奏者として入り込んで、
相手の動向を探る田宮さん。


ボスの情婦を手懐けて、
情婦が怒った時も、
キス一つで、
怒りを解いてしまう田宮さん。
する事なす事、全部がカッケー。


けれど、そんな彼にも、
悲しい過去がある。


結婚まで考えた女性・知子がいたのに、
悪党のせいで家庭が崩壊し、
知子の前から、姿を消さざるをえなかったのだ。


そして、その知子は、
今は、学生時代の親友の婚約者。
俺は、あやつより、
成績も、楽器の腕前も、顔面偏差値も(とは言ってはいないが(笑))、
勝っていたのに、
チックショー!と自分の運命を呪いたい気持ちなのだ。


まぁ、仕方ない。
人は、才能や努力だけでは
どうする事も出来ない、
運やタイミングのようなものがある。


クライマックスの、
山の中での、
ダイナマイトの場面は、
中々の見応え。


あー!もうダメだ、
田宮さんも、最早これまでか、という危機を、
何度も乗り越えて、
事件解決。
田宮さんって、運が悪いように見えて、
本当はめっちゃ強運の持ち主なんじゃ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「黒の挑戦者」 [映画]

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〔1964年/日本〕


あるホテルで、女がシャワーを浴びている隙に、
連れの男が殺されていた。
女は、驚いて逃げ出すが、
何者かに、ベランダから突き落とされる。


女は命からがら、
弁護士の南郷次郎(田宮二郎)に
公衆電話から助けを求めるも、
死んでしまう。


南郷は、死んだ女のバッグにあった
パーティ券を持って
箱根のホテルに赴く。


そこでは、金持ちの男女が集まり、
醜悪な催しが行われていた。
南郷は知り合いのホステスに会い、
彼女の部屋に行くが、
ホステスは殺されており・・・。





大映の「黒」シリーズは、
なかなか面白い。
この作品は、シリーズ8作目。
公開順に観ているわけじゃないけど、
未見の作品はあと4本。
いつか全制覇したい。


このシリーズは、
主役の俳優さんが決まっているわけではないけれど、
田宮二郎率、高し。
サスペンスな内容と、
田宮さんのクールな雰囲気がよく合っている。


本作の田宮さんは、
不正を許さない弁護士を演じている。
不正を許さなさすぎて、
警察から、ちょっと煙たがられている。
やっている事は、弁護士というより、
探偵みたい。


そんな田宮さんが、
事件解決の為に潜入した、
ホテルでの催しが、ちょっとグロテスク。
そこでは「競馬」が行われている。
半裸の男たちが、四つん這いになり、
その男たちに、これまた半裸の女たちが跨り、
レースをする。


金持ちの客たちは、
そのレースに大金を賭け、
大興奮しながら、結果を見守る。
なんだか、そんな事って、
現実にも、秘密クラブなどで、やっていそうな気がする。


他にも、
全身を見えないように覆い、
足だけを出した美女を、
男たちが選ぶ、というゲームもある。
「この中で、一番気に入った足の
 ハイヒールを脱がせてください」と。


そして、男は、
ハイヒールを脱がせた女と、
ホテルルームに行く、という仕掛け。


金持ちの道楽って、
私の想像の範囲を完全に超えているわ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「ハウス・オブ・カード 心の扉」 [映画]

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〔1992年/アメリカ〕


6歳のサリーは、
両親と兄とで、南米で暮らしていたが、
父親が古代遺跡の修復中に事故死し、
アメリカに戻ってくる。


父親の死を受け入れられないサリーは、
心を閉ざし、
口をきかなくなる。
そして、驚異的な平衡感覚で
高い所に登るようになり、
母・ルース(キャスリーン・ターナー)はその度に、
肝を冷やす。


そんなサリーを診察した、
精神科医・ビアランダー(トミー・リー・ジョーンズ)は、
サリーを自閉症だと診断。


しかし、ルースは、
診断に疑問を覚え・・・。





とてもいい映画だと思うのだけれど、
この物語の主人公の少女・サリーが、
自閉症なのか、違うのか、
それによって、
映画の感想は全く違うものに
なるように思う。


サリーの突然の変化、
お話をしなくなった、とか、
どんな高い所でもまるで恐れずに登ってしまう、
などの事が、
自閉症が原因だとしたら、


セリフの中に何度も出てくる、
「治る」とか、
「治療する」という言葉は、
違和感がある。


では、サリーが自閉症ではなく、
父親が死んだことによる、
ショックのせいで、
一時的におかしくなっているのだとしたら、


通常では考えられないような能力が、
なぜ突然、発揮されるようになったのか、
よく分からない。


サリーの能力、といえば、
ジャケット写真にもあるけれど、
彼女が作った、
カードの城が、
目を見張るほどに素晴らしい。


それは、トランプや野球カードなど、
家にある、あらゆるカードを使って、
組み上げられた城で、
それは微妙な力学で成り立っており、
ほんの少しの刺激でも
崩れてしまうものだ。


6歳の少女がこのような物を作れる事を
どう捉えるか、
うーん、
難しい。
父親が亡くなったショックだけで、
このような物が作れるようになるのか・・・。


私は専門家ではないので、
軽々しい事は言えないし。


評価 ★★★☆☆

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