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「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」 [映画]

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〔2015年/イギリス〕


1929年。ニューヨーク。
ヘミングウェイやフィッツジェラルドを見出した
名編集者・マックス・パーキンズ(コリン・ファース)の所に、
無名の作家・トマス・ウルフ(ジュード・ロウ)が
原稿を持ってやって来る。


トマスの、その原稿は、
あらゆる出版社から相手にされず、
最後にマックスに持ち込まれたのだ。


大変に長いその小説を読んだマックスは、
トマスの才能に気付き、
出版を約束する。
しかし、それには条件がある。
この膨大な量の文章を、
大幅に削除する事だ、と。


話し合いを重ねながら、
やっと完成した処女作「天使よ故郷を見よ」は、
一躍ベストセラーとなり、
歓喜する2人。


しかし、トマスの恋人・アリーン(ニコール・キッドマン)や
マックスの家族は、
すっかり置いてけぼりとなり、
さらに、世間では、
トマスはマックスがいないと作品が書けないとの
噂が立ってしまう・・・。





試写会で観た。


実在の作家・トマス・ウルフと、
彼を見出した編集者・マックス・パーキンズの
友情と葛藤を描いた物語。


才能のある編集者って凄いものだなと、
マックス・パーキンズの力に感動してしまう。
なにせ、彼は、
どの出版社からも相手にされなかった、
トマスの小説を読み込み、
「これはいける」と直感する。


電車の中で読了した瞬間、
マックスの顔に浮かんだ、
かすかな笑みが全てを物語る。
そんなマックスを演じるコリン・ファース、
凄い俳優だわ。


トマスの頭の中は、
言葉で溢れかえっているように感じられる。
彼は饒舌で、
初めて会うマックスの家族にも、
お喋りが止まらない。


どれだけ語彙が多いんだろう。
やはりベストセラー作家になるような人は、
語彙の量が一つの勝負なのだろう。
何せ彼が、次回作として持ってきた原稿は、
ワゴン3つ分(笑)。
つまり、それだけの数の言葉を
持っているという事だものね。


トマスの恋人のアリーンは、
トマスとマックスの仲に、
激しい嫉妬を感じるのだけれど、


同じ経験がないので、
その辺りの心理は、想像でしか考える事ができない。


自分の恋人が、
異性でなく、同性と親密に仕事をしていても、
嫉妬って感じるものなんだろうか。
その親密の度合いにもよるんだろうか。
私がアリーンだったら、
恋人がいい編集者に巡り合えて、
本が売れて良かった良かった、と思ってしまいそうだけど、
人の心って、そんなに単純ではないのだろうか。


イギリスを代表するような俳優、
コリン・ファースとジュード・ロウ、
そして、
オーストラリア出身のニコール・キッドマン。
彼らが、
実在したアメリカ人を演じるというのも
面白く感じた。


・・・と、ここまで書いて調べたら、
これってイギリス映画なの!?
アメリカ人にしたら、
「お前関係ねーじゃん」と言いたくならないのかしら(笑)。


日本でいえば、
隣国が、隣国の俳優を使って、
実在した日本人の物語を作るようなものなんじゃ・・・
って、ちょっとニュアンスが違うんだろうけど(笑)。


評価 ★★★☆☆

「起きて転んでまた起きて」 [映画]

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〔1971年/日本〕


辺山修(なべおさみ)は、
家業のクラッカー製造が当たり羽振りがいい。
一方、修と同じ大学の友人・桜井正明(堺正章)の
実家のかつら屋は経営不振。


ところが、修の父親が突然死し、
2,000万円の借金だけが残ってしまう。
彼は借金返済のため、
大学をやめてタクシーの運転手として働くことになる。


そんな修の前に、
大金持ちになった正明が現れる。
輸出用のかつらがヒットしたのだという。


修と正明は、
幼馴染のマリ子(安倍律子)に惚れているが、
修が借金をしているのは、マリ子の父親。
2人は、修の借金を返し終わったら、
正々堂々とマリ子を争おうと、約束する。


そんな中、修の家の掛け軸を、
芸者の〆香(大原麗子)が2万円で売ってくる。
ところが、その掛け軸には
2,000万円の価値がある事が分かり・・・。





先日書いた、「喜劇 昨日の敵は今日も敵」と
似たような感じの、
渡辺プロが作ったと明らかに分かる映画。


私は、どちらかというと、
ストーリーのハッキリしている映画が好きなので、
「昨日の敵」より、
こちらの方が好きかも。
といっても、
比べれば、というくらいだけれど(笑)。


桜井センリさんや、
いかりや長介さんが、
どーでもいい役で出てくる。


特にいかりやさん演じる
日本舞踊の先生はいい。
彼はオカマのような口調で、
大原麗子さんに、踊りを教えるのだけれど、
なんか可愛くて(笑)。
大原さんに、
「あなたには色気がないのよぉ」などと怒る。


しまいにはドリフターズのコントのような動きを
大原さんに付けるというオチで、
それに従った大原さんも凄いけど、
当時の渡辺プロの力を思い知った気持ちになる。


2,000万円の価値がある掛け軸を
買い戻す場面にはちょっとイライラ。
売った先の嫁が業突く張りで、
中々手放そうとしないのよ。
あぁ、もう!早く返せー!と気を揉んじゃって(笑)。


タイトルの、「起きて転んでまた起きて」は、
人間万事塞翁が馬みたいな意味もある気がするな。
私も「起きて転んでまた起きて」、頑張ろっと。


評価 ★★★☆☆

「劇場版 エースをねらえ!」 [映画]

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〔1979年/日本〕


岡ひろみ、県立西高校の1年生。
彼女は、テニス部の3年生・竜崎麗香(通称・お蝶夫人)に憧れ、
軽い気持ちでテニス部に入る。


西高は、テニスの強豪校として名を馳せており、
麗香をはじめとして、
部員、特に3年生は実力者揃い。
そして、そんなある日、
テニス部に、かつての名プレーヤー・宗方仁が
コーチとして就任する。


宗方は、部員全員のプレイをビデオ撮影し、
それを見ていたが、
ひろみの映像を見た時、
ハッとして、何度も見直した。


宗方は、地区大会のメンバー5人を発表。
なんと、その中に、ひろみが入っていた。
そのせいで、3年生の実力者・音羽京子が選に漏れてしまう。
部員たちの反発は当然凄まじく、
お蝶夫人も宗方に抗議するが、
宗方は、意に介さない・・・。





「エースをねらえ!」は、
タイトルと、テニスがテーマだという事と、
登場人物の、岡ひろみとお蝶夫人の2人の名前しか知らず、
さらに、アニメ映画全般を、殆ど観た事がない私が、
「大傑作」と言われている本作を
観ていいものなのだろうかと、
少し迷った。


何も感じる事ができなかったらどうしようと、
ちょっと不安な気持ちで、
ビデオをデッキにセットしたけれど、
これが、なかなか面白かった。


まず、物語が大変に分かりやすい。
「エースをねらえ!」初心者でも、すぐに入っていける。
88分という短い上映時間なので、
無駄がなく、話がどんどん進む。
だからといって端折ってるという感じもなく、
物足りなさは全くない。


岡ひろみという、
平凡な高校1年生が、
テニスの地区大会の選抜メンバーとなった事への戸惑い、
周囲の反発、
厳しい特訓ゆえの挫折、
そして立ち直る心・・・
全てに共感できる。


ひろみが、ある理由で、宗方へ電話をかける場面が
2度ある。
1本の映画で、同じ場面が2度あるのは駄目だと、
個人的には思っているのだけれど、
この映画に限っては、2度目が必要不可欠。
ひろみの成長を表す場面として、素晴らしかった。


宗方が、
母とひろみを重ね合わせて考える場面に
考えさせられる。
母親と息子の間には、
切っても切れない絆があるといつも思う。
宗方のラストのセリフに涙。


ひろみがどんな立場になっても、
絶対に支えてくれる、
親友・マキの存在もめっちゃ大きい。
マキがいなかったら、ひろみはどうなっていたのか。
感謝してもしきれない。


ひろみとマキが、2人で映画に行く場面に
笑った。
なんと2人が観ているのは、
インターミッションまである、
めっちゃ長そうなコテコテの戦争映画。
女子高生がなぜそんな作品を選ぶ?って(笑)。


それから、すみません、
私の性格上、
ちょっとだけ茶化させて。
(誰に頼んでるんだか(笑))


竜崎麗香って名前が凄いよね(笑)。
主人公が岡ひろみという、
サッパリした名前なのと対照的に。
名は体を表すの諺通り、
見た目も、性格も、
2人にピッタリのネーミングだと思う(笑)。


しかも、高校生なのに、
あだ名が「お蝶夫人」て。
夫人よ、夫人(笑)。
ご本人は、そう呼ばれる自分の事をどう思っているのかしら。
原作ではそこに触れているのだろうか。


そのお蝶夫人、
どうやら超大金持ちらしく、
庭に噴水があるような大豪邸に住んでいる。
なのに通っている高校が、公立高校というのが、
面白い。


あれだけの金持ちなら、
K応か、A山学院 G習院、もしくはS城あたりに
小学校から入学しそうな気がするけど(笑)。
(あくまでも、東京近郊在住という場合ですが)


いや、しかし、
その件だけは、茶化してはいけないね。
もしかしたら彼女の親は、
色々な生徒のいる公立の学校で、
子供を逞しく育てる方針なのかもしれないし、
大学もエスカレーター式でなく、
一般受験で入りなさい、という考えなのかもしれない。
私もそういう考えって嫌いじゃないし。


そういった細かい事は、
原作を読めば分かるのだろうか。
今度読んでみよう。


評価 ★★★★☆