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「イップ・マン 葉問」 [映画]

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〔2010年/香港〕


1950年代。香港。


佛山から移住してきた葉問(イップ・マン)は、
ある建物の屋上に、詠春拳の道場を開く。
最初こそ閑古鳥が鳴いていたが、
彼の評判は徐々に広がり、入門者が増える。


しかし、香港にいくつもある、
武道の道場主たちは、
香港で道場を開くには、
自分たちと対戦し、
勝たなければならないと言う。


試合には勝った葉問だが、
道場の組合(?)に属するには、
上納金を払わねばならないと、
元締めの洪拳の師範ホン(サモ・ハン・キンポー)に言われる。
納得のいかない葉問はそれを断るが、
そのせいで道場は閉鎖されてしまう。

実は、各道場から集めた金は、
白人の警察署長に賄賂として贈られているのだ。


その後、香港の武道家と、白人のボクシング選手との、
異種格闘技戦が行われる。
紆余曲折の末、
葉問は、香港代表としてリングに上がるが・・・。





昨日書いた、「イップ・マン 序章」の続編。


佛山では有名だった葉問も、
香港では無名。
一から出直す様子が描かれる。


けれど本当の実力者は、
黙っていても世間が放っておかないのね。
カンフーの腕もそうだし、
彼の、高潔で謙虚なその姿勢に、
人々が惹きつけられる過程がいい。


前作は日本人が敵だったけれど、
今度の最終決戦の相手は白人。


何というか、
カンフーや空手が、
多分に精神の鍛練に重きを置くのに対して、
ボクシングの勝ち負けは、
めっちゃ直接的。


なので、葉問のカンフーと、日本の将校の空手がぶつかり合った時は
殆ど感じなかった「異種」という言葉が、
こちらでは物凄く強く感じられる。


白人のボクサーは、
カンフーの型を完全に馬鹿にしていて、
その精神は全く理解できないようだ。
とにかく相手を倒せばいいという感じ。
途中からルールを変えたり、
どんな手を使ってでも。


私は空手もカンフーも、
全く縁はないけれども、
それでも、その精神を
何となく理解できるのが不思議。
やっぱり自分は日本人であり、
アジア人なのだなぁと思う。


試合が終わった後の、
葉問の言葉が素晴らしい。
白人の観客たちも感動させてしまうような。


そして、最後の最後に、
映画を観ている者を
ニコニコさせてしまう場面がある。
その瞬間を、巻き戻して二度見したくなる。


評価 ★★★★☆

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「イップ・マン 序章」 [映画]

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〔2008年/香港〕


1930年代の中国。


広東省・佛山で平穏に暮らす葉問(イップ・マン)は、
詠春拳の達人として名が知れていた。


彼に試合を挑み、
勝って名を上げようとする者も多いが、
相手が誰であれ、負け知らずな上、
穏やかで高潔なその人柄も、
人々から好かれる要素であった。


ところが日中戦争が勃発し、
裕福だった葉問一家の生活は一変する。


日々の食べ物にも事欠き、
葉問は炭鉱に働きに出る。
すると、炭鉱を仕切る日本軍の将校・三浦(池内博之)が、
空手の試合相手を募っている事を知る。
勝った者には米が与えられるというのだ。


試合に臨んだ葉問の、
その強さに驚いた三浦は、
日本兵たちに武術を教えるよう命じるが、
彼はそれを拒否。


紆余曲折の末、
葉問と三浦は命を賭けた試合をする事に・・・。





ブルース・リーの、たった一人の師匠だという、
葉問(イップ・マン)の人生を描いた作品。


カンフーの事はよく分からないけれど、
普通にストーリーが面白い。


とにかく葉問が強い。
どんな相手でも負ける事は絶対にないし、
それは、相手の人数が多い時でも変わらない。
安心して見ていられる。


さらに何がいいって、
葉問を演じるドニー・イェンが、
一見、それほど強そうに見えないって事なんだな。
彼に試合を挑んでくるのは、
皆、強面でギラギラした容貌の男ばかり。
そんな相手を、バッタバタとなぎ倒す様が、
見ていて気持ちいい。


そして、試合をしていない時の葉問が、
奥さんに頭が上がらない様子なのが可笑しい。
彼の妻はとても美しいのだけれど、
ちょっとキツそうで(笑)。
そんな葉問は、ちょっと可愛い。


誇張もあろうが、
彼が人格的に優れているのもいい。
どんなに相手に挑発されても、
決して感情を露わにはせず、
力を見せるのは試合の時のみ。
見ていて清々しい。


こんないい映画なのに、
日本が悪く描かれているのが悲しいなぁ。
まぁ、仕方ないんだけどさ。


続編が楽しみ。


評価 ★★★★☆

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「翼よ!あれが巴里の灯だ」 [映画]

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〔1957年/アメリカ〕


1927年5月。
チャールズ・リンドバーグ(ジェームズ・スチュアート)は、
ベッドに入ってもなかなか寝付けなかった。


明日はいよいよ、
単独で大西洋無着陸横断飛行に挑戦するのだ。
彼の心の中を、
今まで起こった出来事が去来する。


そして当日。
天候は雨。
周囲の者たちは、飛行を明日に順延したらどうかと進言するが、
1日遅れれば、
他の誰かに先を越されてしまうかもしれない。
リンドバーグには出発以外の選択肢はなかった。


ついに彼の操縦する飛行機、
“セントルイス魂”号が飛び立った。
昨夜ほぼ眠っていない彼は、
睡魔と戦いながら、
また、過去の出来事を思い出していた。


彼は目的地であるパリに、
無事到着できるのか・・・。





リンドバーグといえば、
何か飛行機に関係した人、
それから、
映画「J・エドガー」から得た、
子供さんが誘拐されて亡くなった人というくらいの知識しかなかった。


そうか、初めて大西洋を飛行機で渡った人なのか、と、
あらためて確認したような思い。


今でこそ、飛行機は毎日、
世界中を飛び回っているけれど、
初めて大西洋を横断するって、
どれだけ勇気が要ったのだろうと想像するし、
その成功に賞金が賭けられている事からも、
いかに難しい事だったかがわかる。


リンドバーグは、
飛行機の重さを1グラムでも軽くするため、
歯ブラシ1本、カミソリ1枚も持たない。
とにかく、重さには気を使っていたようだ。


飛行中、ハエが1匹機内に迷い込むが、
「お前が飛んでいる時と、機内にとまっている時とでは、
 飛行機の重量は違うのかな」などと独り言を言ったりする。
その答えは私にも分からないけれど。


飛行中は、特別大きなアクシデントはない。
寒さで羽が凍り付いて、
その重さを気にする事と、
襲ってくる眠気に、悪戦苦闘するくらい。
殆どは回想シーンで綴られる。


この飛行機には屋根がなく、
(車でいえばオープンカーのよう)
羽が凍り付くくらい気温が低いという事は、
リンドバーグ自身も、
めっちゃ寒かったんじゃないかというのが、
気になって仕方なかった。


けれど彼は、眠いとは言っても、
寒いとは一言も言わなかった。
あえてそこにスポットを当てなかったのか、
実際、寒さを感じなかったのかは分からないけれど。


飛行機に乗るのは嫌いじゃない。
ワクワクするし、
目的地に着いた時の別世界感は、
旅行の醍醐味の1つだと思う。
どんなことにせよ、そういった現代の娯楽は、
この映画のように、
「最初にした人」の功績に支えられているのだと思うと、
いつも本気で尊敬してしまう。


評価 ★★★☆☆

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「女人哀愁」 [映画]

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〔1937年/日本〕


銀座で働く入江たか子は、
従兄の佐伯秀男に、
仄かな恋心を抱いており、
親から見合いを勧められていると相談する。


しかし、入江の気持ちに気付いていない佐伯から、
結婚すればいいと言われ、
大きく乗り気ではないものの、
見合い相手・北沢彪のもとに嫁ぐ。


北沢は裕福な家の長男で、
入江は彼の家族と同居するが、
家族は入江を家政婦扱いし休む暇もない。


さらに、家を出ていた北沢の妹・澤蘭子が、
戻ってくる。
澤は、大川平八郎と同棲していたのだが、
彼の生活力の無さに呆れ、
見限ったのだ。


しかし、大川は澤を忘れられず、
北沢の家を訪ねてくる。
そんな日々の中、
入江は、自分の置かれている状況への疑問が
日に日に募ってゆき・・・。





1930年代の女、そして家族の有り方が分かって、
とても興味深い映画だった。


入江たか子がとにかく従順で、
嫁いだ先でこき使われても、
笑顔で応える様子に、
こちらのフラストレーションがたまる。


けれど、当時の女がみんなこんなだったというわけではないようだ。
北沢彪の妹たちは、
「自分は入江のような、従順な嫁にはなれない」と言ったり、
友人たちと、
「結婚するなら絶対恋愛よねー」などと、
声高に話したりする。


北沢の両親も妹たちも、
特に入江をいびっている自覚はないように見える。
自分でできる事まで、入江にやらせようとするけれど、
それは彼女が大人しくて、
それを幸福だと思っているからだと勝手に決め付けている。
「あの人は趣味もないし」などと、
入江に聞こえる場所で言っている。


無給で無休の家政婦を雇ったような感覚らしい。
「出来ない事は出来ないと言った方がいいよ」と
言いたくなるけれど、
性格的なものは、もうどうしようもないのだろう。


けれど、そんな入江も、
大川平八郎の様子には羨ましさを感じるようで、
何かが目覚めてゆく。
自分を特に愛してくれているとは思えない夫と比べて、
大川は、何度も澤を訪ねてくるくらい情熱的だものね。


ラストは胸がスッとするけれど、
このオチは、
当時の女性には「有り」だったんだろうかという思いも残る。


評価 ★★★☆☆

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「ストリートファイター」 [映画]

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〔1975年/アメリカ〕


ニューオーリンズを通る貨物列車から、
1人降り立った男・チャールズ・ブロンソン。


彼は、とある建物の中で、
2人の男が殴り合い、
その試合に金を賭け、大興奮した男たちが取り囲んでいるのを見る。


ブロンソンは、
負けた方のファイターのマネージャー・ジェームズ・コバーンに、
「自分なら必ず勝てる」と自らを売り込む。
翌日の試合で驚異的な強さを見せたブロンソンに
コバーンは驚き、
この男は金になると直感する。


コバーンは、
街一番のファイターのマネージャーで有力者のマイケル・マクガイアに
試合を申し込む。
死闘の末に勝ったブロンソンにマクガイアは、
「自分がお前のマネジメントをする」と言うが、
ブロンソンはそれを断る。


腹を立てたマクガイアは、
シカゴから最強のファイターを連れてきて、
ブロンソンにぶつけるが・・・。





渋いよ、渋すぎる(笑)。
主人公のチャールズ・ブロンソンは、
「流れ者」という言葉がピッタリで。


列車、それも貨物列車のコンテナから、
飛び降りるという登場シーンから、
彼がアウトローだと分かる演出。
彼がどこから来たのか、
今まで何をして食べてきたのかも分からない。


彼がなぜ、それほど強いのか、
どこで鍛えたのかも分からない。
自分より体の大きなファイターを、
バシバシ片付ける(笑)。
さらに、拳銃の腕前も一流。
そんな凄い男が、
なぜ今まで無名でいた?(笑)


彼の渋さはそれだけではない。
とにかく、感情を露わにしない。
「俺には関係ないぜ、ふっ」といった風情で、
自分の事でも傍観者みたいだ。


その態度は、女に対しても一貫していて、
ブレがない。
彼は酒場で知り合った女と深い仲になるが、
(感情を露わにはしないけれど、そういう所はぬかりない(笑))
彼女がどんなに頼んでも、
決して泊まってゆかず、
自分のねぐらに帰っていく。


女の深い愛情は、
足枷になるという事か。
淋しすぎる。
案の定、女は優しい男に乗り換え、
去ってゆく。
けれど、別れを告げられても、
やっぱり表情は変わらない(笑)。


ジェームズ・コバーンが、
儲けた金を、すぐ賭け事でスッってしまうのも、
気になって気になって。
なんで金が入るとすぐ、くだらない事に使う?
将来の為に、とっておきなよと言いたくなったら、
コバーンの恋人も同じような事を言って、
怒っておった(笑)。


何で女の事ばかり書いてるんだ、私は(笑)。
これはストリートファイトを見る映画だってのに。
男性はきっと、
そんなサイドストーリー、
思い出しもしない気がするわ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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