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「DISTANCE」 [映画]

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〔2001年/日本〕


カルト教団「真理の箱舟」の信者5人が、
水道水にウィルスを混入させ、
118人の死者、8000人の被害者を出す。


事件後、実行犯は教団によって殺害され、
教祖は自殺する・・・。


3年後。
ある山あいの駅に、
夏川結衣、寺島進、ARATA、伊勢谷友介の4人が集まる。
彼らは実行犯の遺族たちで、
殺害された実行犯が捨てられたという湖に、
慰霊のために、毎年行っているのだ。


山道を車で進んだ彼らは、
これ以上入れない地点で、
車を駐車し、歩き出す。
ところが、湖で手を合わせ戻ってみると、
車が無くなっている。
どうやら盗まれたようだ。


そこへ同じく、バイクを盗まれたという、
元信者・浅野忠信がやって来る。
浅野の案内で、
実行犯が潜伏していた小屋に行った4人は、
浅野から、犯行直前の家族の様子を聞き、
また、入信直前の家族と自分たちの思い出に入ってゆく・・・。





カルト集団による無差別大量殺人を扱ってはいるが、
センセーショナルな場面はなく、
淡々としている。
ドキュメンタリー映画のようだ。


4人が落ち合って、
車で進む場面や、
湖の場面は、
さして面白いものではない。
脚本なしで会話が進められているような感じで、
雑談が続く。


けれど、
山小屋で一夜を過ごす事になってからの、
彼らの回想シーンは、
やはり興味深い。


これはもう、人それぞれであろうが、
家族がカルト教団に、今まさに入ろうとしている時の
対応の違いに見入ってしまう。


夏川結衣は、教師の夫・遠藤憲一から、
一緒に入信しようと説得される。
2人の話はまるで交わる所がなく、
遠藤は、「お前は変わったな」と言う。
夏川にしたら、「変わったのはお前だ」と言いたい所であろう。


寺島進の方がよりリアルかも。
彼と元妻は、ファミレスで対峙する。
妻は、教団の男と一緒だ。
この男は寺島の友人でもあるらしい。


寺島は、あのキャラクターそのままに、
妻と男を罵倒する。
しかし2人は動じない、というか、のれんに腕押しという感じで、
別世界に逝っちゃってる。
特に妻は、貼り付いたような微笑を崩さず、
どこか異様。
男は何か、御託を並べていたが、
ここに書くのも面倒臭いような屁理屈が続く。


ここまで逝っちゃってる人を現実世界に戻すのは、
もう無理な気がすると、
観ていて思う。
ある意味、教団は、
寺島の妻にとって、
大変に居心地がいいんだろうなぁとも想像できる。


2人に引きかえ、伊勢谷友介は、
感情を露わにはしない。
入信するという兄を、受け入れも拒絶もせず、
「人それぞれだから」といったスタンス。


人って面白いな。
人生が変わってしまうような出来事に直面した時、
それまでのその人との関係が如実に現れる。
たとえば伊勢谷と兄は、
元々、本音で話し合うような兄弟じゃなかったんだろうな、とか。


ラスト、ARATAの意外な正体が仄めかされて、
映画は終る。
これは分かりにくいという方が多いようだし、
私もそうだった。
もう少しハッキリ描いてくれた方が助かるかも(笑)。


評価 ★★★☆☆

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