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「グランド・イリュージョン」 [映画]

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〔2013年/アメリカ〕


ジェシー・アイゼンバーグ、ウディ・ハレルソンら、
4人のイリュージョニストは、
「フォー・ホースメン」というチームを名乗り、
ラスベガスに乗り込む。


大観衆が見守る中、
彼らは、無作為に選んだ観客を、
瞬時にパリの銀行の金庫内に送り、
大金を奪う事に成功、
拍手喝采を受ける。


FBIとインターポールは、
すぐに彼らの身柄を強盗容疑で拘束するが、
証拠不十分で釈放するしかなかった。


捜査陣は、種明かしを得意とする
モーガン・フリーマンに協力を要請、
彼らの次の犯罪の阻止を狙う。


しかし、全ての行動が後手後手に回り、
どうしても尻尾を掴む事ができない。
この対決は、どちらが勝つのか・・・。





めちゃくちゃ華やかで煌びやかなショーや夜景を堪能。
アメリカには色々な顔があるけれど、
こういった派手なショービジネスもその一つで、
その世界にすっかりハマってしまった。


「フォー・ホースメン」のしている事は、
マジックであり、
トリックがあるのは分かっているのだけれど、
映画とはいえ、本気で見入ってしまう。
本物のイリュージョンを目の前で見ているような気分。


さらに、ショーの場面だけでなく、
たとえば、警察の取り調べ室での彼らが、
ビックリするような方法で、
手錠抜けしたりするのを、
子供のようにポカンと見てしまう。
まったく目が離せない。


しっかし、あんな事ができるのなら、
もう何でも有りって感じになってしまうね(笑)。
不可能な事は何も無い、みたいな。


日本の、メンタリストと呼ばれる青年が、
監修として名前が載っていたけれど、
ああいった方々って、
例えば、恋愛なんか本気でできるんだろうかと思ってしまう。
人の心を、ある程度導く事ができるなら、
恋愛も、ある種の錯覚と言えなくもないものね。
私だったら、すんごく冷めた目で相手を観察してしまいそう。


それから、これは偶然だけど、
ついこの間観てレビューにも書いた「ゾンビランド」で、
共にゾンビと戦っていた、
ジェシー・アイゼンバーグとウディ・ハレルソンが、
今度はイリュージョニストとして一緒にステージに立っているのを見て、
なんだか嬉しくなってしまった。
映画の楽しみって、そういう所にもある。


まぁ、とにかく、
オチだとか、
誰が黒幕だとかなんて、どうでもいい感じ(笑)。
ショーやマジックだけでワクワクできる作品。


評価 ★★★☆☆

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「淑女は何を忘れたか」 [映画]

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〔1937年/日本〕


栗原すみ子、飯田蝶子、吉川満子の有閑マダムは、
集まって、他愛のない話をしている。
夫の噂話や、
子供の家庭教師の事などを。


栗原の夫・斎藤達雄は恐妻家で、
妻の言う事に、大抵は言いなりだ。


その日も、ゴルフに行くのを躊躇している斎藤に、
栗原は、なんやかやと理由をつけ、
ゴルフバッグを持たせて、
家から出してしまう。
どうしても気の進まない斎藤は、
自分の弟子・佐野周二の家に泊まらせてもらう事にする。


そんな夫妻の様子を見ているのが、
大阪から遊びにやってきている、斎藤の姪・桑野通子。
桑野は斎藤に、
「もっと妻にガツンと言ってやらなければ駄目だ」と
けしかける・・・。





小津安二郎監督作品。


夫婦の在り方を、
姪を通して描いた作品なのであろうが、
それよりなにより、
全体のコミカルな感じが大変に良い。
セリフが軽妙で、
何度も笑わされる。


まずは有閑マダム3人の会話。
彼女たちはかなり仲がいいようで、
家の事情なども、
何でもポンポン言い合っている。
しかも、いい年をした大人が、
「子供か!」と思うような、
言葉の遊びを繰り返す(笑)。
昔の大人の人って、
もっとしっかりしていたものだと思っていたから、
これは意外。


それから、吉川満子の小学生の息子と、
家庭教師を引き受けた佐野周二、
そして、息子の友人の3人が会話する場面。
子供たちは、変な歌を盛んに歌うのだけれど、
その歌詞が面白くて。
映画のオリジナルかと思っていたら、
当時、流行っていた歌のようだ。
今あの歌があったら、私も歌っているだろうなぁ(笑)。


佐野は、小学生の算数が、
まるでできず、モタモタするばかり(笑)。
何の為の家庭教師か分からない。
その算数というのが、
ちょっとしたクイズのようで、
私も解いてみたくなった。
今度、もう一度見直して、
問題を書き取って、やってみたいな。


他にも、
桑野が斎藤に、叱られてるフリをする場面や、
斎藤がゴルフに行かなかった事がバレる場面など、
現代では、使い古されたような手法でも、
こんな昔に描いた人がいたんだと思うと、
嬉しくなってしまう。


結婚や出産など、
現代なら、
親子でも踏み込むのは躊躇する事を、
平気で、きつい言葉で言ったりする場面だけ、
ちょっと閉口。
まして、他人相手に。
今、あんな事言ったら、
周囲からどれだけ顰蹙買うんだろう。


ラストも、味わいがあって良い。
若い桑野にはまだ分からないようだけれど、
斎藤の言いたい事がよく分かる。
それが年を重ねるという事なのね。


評価 ★★★★☆

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「ザ・ディープ」 [映画]

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〔1977年/アメリカ〕


バミューダ海域で、
ダイビングを楽しんでいた新婚カップル、
ニック・ノルティとジャクリーン・ビセットは、
海底で、古い金貨と、
何かの薬品のアンプルを発見する。


するとその夜、
暗黒街のボス・ルイス・ゴセット・Jrがやって来て、
そのアンプルを売ってほしいと言う。
断った2人は、
翌日、沈没船に詳しいという地元の男・ロバート・ショウを訪ね、
発見した物を見せる。


ショウ曰く、
ノルティたちが発見したアンプルの中身はモルヒネで、
沈没した船には、
1千万ドル相当の量が積まれていたと言う。


ノルティとビセットとショウの3人は、
再び海底に潜り、
アンプルと、そして財宝を探しに出るが、
ゴセット・Jrの一味から、
命を狙われる事に・・・。





「栄光のアメリカ映画ヒット作50年」という本を読むと、
1977年のアメリカでの映画売り上げランキングで、
本作は7位になっている。
(ちなみに1位は「スター・ウォーズ」)


そんなヒット作にもかかわらず、
解説が可笑しい。
「大したことない映画」みたいな事が書かれている。


映画に限らず、
流行って、たまにそういう事があるから面白い。
後になってみると、
「なんであんな物が」と不思議になるような作品が、
上位に入っていたりする事があるもの。


各映画サイトを見てみると、
男性方は、ジャクリーン・ビセットの、
素肌に濡れたTシャツの事だけしか書いていない。
もしかして、ヒットした理由はそこ?(笑)
「ジョーズ」の直後で、
海洋物がウケたという説もあるようだけれど。


別に本に影響されたわけじゃないけど、
本当にこの映画は、
凡作と言わざるをえないかなぁ。
女の私は、
ビセットの裸には興味ないし(笑)。


財宝や麻薬を見つけたカップルが、
それを狙う悪人に命を狙われるって、
見飽きたようなストーリーだし、
特筆すべき点はあまりない。


一つ言えるのは、
私が彼らの立場だったら、
命を狙われてまで財宝探しなんかしないなぁ、って事。
一つ見つけた宝を売って、
小金をもらって、
「いい経験した」って満足して終わり。
こんなだから、金持ちになれないんだろうけど(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「コーラス」 [映画]

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〔2004年/フランス〕


1949年。
音楽教師・クレマン・マチュー(ジェラール・ジュニョ)は、
「池の底」という名の、
寄宿学校の赴任してくる。


ここで暮らす生徒たちは、
何らかの問題を抱えており、
皆、暗い瞳で、悪さを繰り返す。
校長はそんな生徒に、
体罰を含め、厳しく接していた。


着任早々、
マチューも、ロッカーを壊され、
中の楽譜を盗まれる。
けれどそれがヒントになり、
彼は生徒たちに合唱をさせようと思いつく。


合唱を始めた生徒たちは、
少しずつ明るくなり、
悪戯の件数も減ったように思える。


特に、一番の問題児といわれる
ピエール・モランジュ(ジャン=バティスト・モニエ)は、
大変に美しい歌声の持ち主だと分かり、
ソロのパートを任される・・・。





月並みだけど、
大変にいい映画だった。


赴任してきた音楽教師が、
合唱によって、
すさんだ生徒の心を明るくする・・・
こう書くと、「感動してください」と言わんばかりの内容かと
思われるけれど、
綺麗事だけではないのが、この映画の良いところ。


まず、生徒たちの様子があまりに凄い。
「悪ガキ」などという言葉では済まされないような、
悪さを繰り返す。
下手すれば、相手を失明させるか、
殺してしまうような、酷い事をやってのける。


マチューも熱血教師ではない。
むしろ、こんな学校に来た自分の人生を呪っている。
合唱で子供を変えようなど、さらさら思ってはいない。
まぁ、「今より少しでも良くなれば」くらいの感覚だ。


でも、それがいいのだろう。
その緩さが生徒たちには具合がいいのかもしれない。
何かを無理矢理させられても、
生徒たちは反発するばかりだものね。


合唱を覚えた生徒たちは、
今度は、卑猥な替え歌を校長室の前で歌ったりもする。
生徒が劇的に変わる事はないのがリアル。


でも、それでも、
やっぱり今までとは何かが違う。
生徒たちの表情に笑みが見える。
笑顔って、本当に人をホッとさせる。


結局、更生させられなかった生徒もいる。
どんなにしても、
枠に収まらない人間がいるのは当たり前だとも思う。
それが社会というものなのだろう。


冒頭、大人になったピエールが、
ある世界的な職業に就いており、
ラストは、マチューが「池の底」を辞めたあと、
どのような人生を歩んだかが分かる演出となっている。
いい映画だった。


評価 ★★★★☆

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「DISTANCE」 [映画]

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〔2001年/日本〕


カルト教団「真理の箱舟」の信者5人が、
水道水にウィルスを混入させ、
118人の死者、8000人の被害者を出す。


事件後、実行犯は教団によって殺害され、
教祖は自殺する・・・。


3年後。
ある山あいの駅に、
夏川結衣、寺島進、ARATA、伊勢谷友介の4人が集まる。
彼らは実行犯の遺族たちで、
殺害された実行犯が捨てられたという湖に、
慰霊のために、毎年行っているのだ。


山道を車で進んだ彼らは、
これ以上入れない地点で、
車を駐車し、歩き出す。
ところが、湖で手を合わせ戻ってみると、
車が無くなっている。
どうやら盗まれたようだ。


そこへ同じく、バイクを盗まれたという、
元信者・浅野忠信がやって来る。
浅野の案内で、
実行犯が潜伏していた小屋に行った4人は、
浅野から、犯行直前の家族の様子を聞き、
また、入信直前の家族と自分たちの思い出に入ってゆく・・・。





カルト集団による無差別大量殺人を扱ってはいるが、
センセーショナルな場面はなく、
淡々としている。
ドキュメンタリー映画のようだ。


4人が落ち合って、
車で進む場面や、
湖の場面は、
さして面白いものではない。
脚本なしで会話が進められているような感じで、
雑談が続く。


けれど、
山小屋で一夜を過ごす事になってからの、
彼らの回想シーンは、
やはり興味深い。


これはもう、人それぞれであろうが、
家族がカルト教団に、今まさに入ろうとしている時の
対応の違いに見入ってしまう。


夏川結衣は、教師の夫・遠藤憲一から、
一緒に入信しようと説得される。
2人の話はまるで交わる所がなく、
遠藤は、「お前は変わったな」と言う。
夏川にしたら、「変わったのはお前だ」と言いたい所であろう。


寺島進の方がよりリアルかも。
彼と元妻は、ファミレスで対峙する。
妻は、教団の男と一緒だ。
この男は寺島の友人でもあるらしい。


寺島は、あのキャラクターそのままに、
妻と男を罵倒する。
しかし2人は動じない、というか、のれんに腕押しという感じで、
別世界に逝っちゃってる。
特に妻は、貼り付いたような微笑を崩さず、
どこか異様。
男は何か、御託を並べていたが、
ここに書くのも面倒臭いような屁理屈が続く。


ここまで逝っちゃってる人を現実世界に戻すのは、
もう無理な気がすると、
観ていて思う。
ある意味、教団は、
寺島の妻にとって、
大変に居心地がいいんだろうなぁとも想像できる。


2人に引きかえ、伊勢谷友介は、
感情を露わにはしない。
入信するという兄を、受け入れも拒絶もせず、
「人それぞれだから」といったスタンス。


人って面白いな。
人生が変わってしまうような出来事に直面した時、
それまでのその人との関係が如実に現れる。
たとえば伊勢谷と兄は、
元々、本音で話し合うような兄弟じゃなかったんだろうな、とか。


ラスト、ARATAの意外な正体が仄めかされて、
映画は終る。
これは分かりにくいという方が多いようだし、
私もそうだった。
もう少しハッキリ描いてくれた方が助かるかも(笑)。


評価 ★★★☆☆

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