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◆棺に跨る◆ [本]


棺に跨がる

棺に跨がる

  • 作者: 西村 賢太
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/04/22
  • メディア: 単行本


今年4月に出た、西村賢太氏の新刊。


西村氏のファンにはお馴染みの、
北町貫多と、彼の同棲相手である秋恵の物語。
おそらく、西村氏には初めての、
連作という形をとっており、
4章が収められている。


例によって、物語は、
秋恵の数本の肋骨に
貫多からの激しい暴力のせいで
ヒビが入ってしまういう、
最悪の出来事から始まる。


このできごと自体は、
もう何度か西村氏の小説で読んでいるので、
マンネリといえばマンネリだけど、
細かい状況を知るのはこれが初めてなので、
やっぱり真剣に読んでしまう。


貫多は、
秋恵の体の心配よりも、
傷害罪で訴えられる心配が先に頭によぎるという、
最悪の小者っぷりに加えて、
やっと手に入れた素人女・秋恵を手離す事はできないと、
その後の内容は、
ひたすら彼女へのご機嫌伺いに終始する彼が描かれる。


で、ラスト。


秋恵さん、天晴れだよ。
こんなに溜飲が下がる思いをしたのは久し振りってくらい。
あまりにお見事な、
彼女の身の処し方に感心して、
ここの所、ラストの2ページを
必ず読んでから眠る毎日(笑)。


西村氏の小説として、
貫多の事は面白く読んではきたけれど、
やっぱり無意識に、
秋恵の心に寄り添って、
彼女の身に起こる事や、
人生そのものを心配していたのでしょうね、自分。


西村氏は、
秋恵との別れた時の状況が辛くて、
まだ本当に踏み込んだものは書けていないと
何かで読んだ。


人生でたった1度の、
それも1年ほどの同棲生活を、
ずっと小説にする事は、
ワンパターンで飽きられそうだけれども、
でも、私はこの2人の物語を
ずっと読んでゆくだろう。


西村氏が書けていない、
“もっと踏み込んだもの”を
いつか読めると楽しみにしている。

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