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「淑女は何を忘れたか」 [映画]

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〔1937年/日本〕


栗原すみ子、飯田蝶子、吉川満子の有閑マダムは、
集まって、他愛のない話をしている。
夫の噂話や、
子供の家庭教師の事などを。


栗原の夫・斎藤達雄は恐妻家で、
妻の言う事に、大抵は言いなりだ。


その日も、ゴルフに行くのを躊躇している斎藤に、
栗原は、なんやかやと理由をつけ、
ゴルフバッグを持たせて、
家から出してしまう。
どうしても気の進まない斎藤は、
自分の弟子・佐野周二の家に泊まらせてもらう事にする。


そんな夫妻の様子を見ているのが、
大阪から遊びにやってきている、斎藤の姪・桑野通子。
桑野は斎藤に、
「もっと妻にガツンと言ってやらなければ駄目だ」と
けしかける・・・。





小津安二郎監督作品。


夫婦の在り方を、
姪を通して描いた作品なのであろうが、
それよりなにより、
全体のコミカルな感じが大変に良い。
セリフが軽妙で、
何度も笑わされる。


まずは有閑マダム3人の会話。
彼女たちはかなり仲がいいようで、
家の事情なども、
何でもポンポン言い合っている。
しかも、いい年をした大人が、
「子供か!」と思うような、
言葉の遊びを繰り返す(笑)。
昔の大人の人って、
もっとしっかりしていたものだと思っていたから、
これは意外。


それから、吉川満子の小学生の息子と、
家庭教師を引き受けた佐野周二、
そして、息子の友人の3人が会話する場面。
子供たちは、変な歌を盛んに歌うのだけれど、
その歌詞が面白くて。
映画のオリジナルかと思っていたら、
当時、流行っていた歌のようだ。
今あの歌があったら、私も歌っているだろうなぁ(笑)。


佐野は、小学生の算数が、
まるでできず、モタモタするばかり(笑)。
何の為の家庭教師か分からない。
その算数というのが、
ちょっとしたクイズのようで、
私も解いてみたくなった。
今度、もう一度見直して、
問題を書き取って、やってみたいな。


他にも、
桑野が斎藤に、叱られてるフリをする場面や、
斎藤がゴルフに行かなかった事がバレる場面など、
現代では、使い古されたような手法でも、
こんな昔に描いた人がいたんだと思うと、
嬉しくなってしまう。


結婚や出産など、
現代なら、
親子でも踏み込むのは躊躇する事を、
平気で、きつい言葉で言ったりする場面だけ、
ちょっと閉口。
まして、他人相手に。
今、あんな事言ったら、
周囲からどれだけ顰蹙買うんだろう。


ラストも、味わいがあって良い。
若い桑野にはまだ分からないようだけれど、
斎藤の言いたい事がよく分かる。
それが年を重ねるという事なのね。


評価 ★★★★☆

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