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「ミニヴァー夫人」 [映画]

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〔1942年/アメリカ〕


1930年代後半、イギリスに住むミニヴァー夫人(グリア・ガースン)は、
洋品店で見つけた素敵な帽子を買おうか買うまいか迷うような、
幸せな奥様。
夫(ウォルター・ピジョン)は建築技師で、こちらは新車を買ってしまい、
そのおかげで帽子の事を言い出し易くなって、
ホッとするミニヴァー夫人。


街の駅長は、自身が丹精込めて育てた美しい薔薇に、
「Mrs.Miniver」と名付けたいと申し出るほど、
無邪気で可愛いミニヴァー夫人は、人気者でもあった。


彼女は普段は、夫と幼い子ども二人の四人で暮らしているが、
ある日、オックスフォード大学に通う長男、ヴィン(リチャード・ネイ)が帰ってくる。
長男を交えての団欒の最中に、
近所に住む金持ち娘、キャロル(テレサ・ライト)がやってきて、
ヴィンとキャロルは些細な事から揉め始めるが、
キャロルの可憐さと聡明さに惹かれたヴィンは、
デートを重ね、婚約にまで至る。


何もかもが上手くいき、幸せいっぱいのミニヴァー夫人であるが、
しかし、そんな彼女にも戦争の影が忍び寄ってきていた・・・。





それにしても、このミニヴァー夫人とは一体いくつなのかと、
そんなくだらない事が気になって仕方がなかった。
冒頭、可愛い帽子を買って有頂天になり、
家に帰ると、幼児が二人、彼女を待っている。


なので、とても若い母親なのかと思っていたら、
いきなり大学生の息子が帰ってくる。
家族の年齢構成からいったら、サザエさんの磯野家と同じような感じだ。
つまり、ミニヴァー夫人はお舟さんなのか?!


ストーリーにもあまりメリハリがなく、
緊張感がないのだよ。
事件といえば、家の庭に負傷したドイツ兵が倒れていて、
ピストルで脅されたミニヴァー夫人が食べ物を差し出すくらい。
ここで子どもでも起きてきたら、多少盛り上がるのであろうが、
そんな事もなく、事は案外すんなり納まる。


好きなのは、薔薇コンテストの場面。
人の思いやりと良識がよく表されていた。


評価 ★★★☆☆

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「ランナウェイズ」 [映画]

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〔2010年/アメリカ〕


去年、アメリカで公開されたこの映画の存在を知った日から、
日本での上映をどれほど熱望してきた事か。
日本で観られると知った時は、本当に嬉しくて、
その日が来るのが待ち遠しかった。


伝説のガールズロックグループ、「ランナウェイズ」。
ボーカルのシェリー・カーリーを演じるのはダコタ・ファニング。
そして、ギタリストのジョーン・ジェットを演じるのはクリステン・スチュワート。


ランナウェイズの映像をリアルタイムで見た事はないが、
ロック好きの一人として、
以前から、ネットにアップされている動画をよく見ていたし、
映画の事を知った日から、
ファニングが歌う予告の映像も、何度も何度も繰り返し見た。
メイクや髪型や衣装のせいもあるだろうが、
ファニングもスチュワートも、本人に面差しが似ているように思えた。
そのせいもあってか、二人共、上手く役にハマっていたと思う。





70年代のアメリカ。
15歳のシェリー・カーリーは、派手なメイクをし、
他の女の子とは違う自分を求めて足掻いていた。
一方、ジョーン・ジェットは、男のものであったロックを自ら演奏すべく、
こちらももがいていた。


ある日、ジェットは辣腕プロデューサー、キム・フォーリーと出会う。
ジェットがものになると確信したフォーリーは、
ボーカルを探しにクラブへ出掛け、そこでカーリーを見出す。





ティーンエイジャーが、
下着姿で、
男を挑発する歌詞を歌う。
本来なら、見ていて痛々しく、不潔なものに感じられそうであるが、
本物のシェリー・カーリーからも、
今回演じたダコタ・ファニングからも、
そんな事はまるで感じない。
とにかくカッコいい。


ファニングは、歌も吹き替えなしだったと聞いたが、
本物と比べても、全く遜色のない出来栄えだ。
彼女からは、かつての名子役のイメージは感じられない。
良い役を選んだと思う。


これは、「ランナウェイズ」というバンドの成功と挫折を描いているが、
それ以前に、
誰もが体験する、若い情熱のぶつかり合いが描かれていると感じられた。
バンドの顔として、シェリー・カーリーばかりがクローズアップされる事への、
メンバーの不満など、
バンドに限らず、女同士普遍にありそうな話じゃないか。
複雑な家庭環境もあり、
徐々に疲れてゆくカーリーの気持ちもよく理解できる。


ランナウェイズは、本国より日本で人気があったというが、
そのせいか、日本公演の場面に長い時間が割いてあって興味深かった。
多分、撮影はアメリカでされたのであろうが、
熱狂的な日本のファンの様子に、
メンバーが驚き、悦に入る様子が可笑しい。


エンドロールにテイタム・オニールの名前があって驚いた。
全然気付かなかったわ。
ダコタ・ファニングの母親役がそうだと、後から調べて知ったが、
知っていたら、もっとちゃんと顔を観るんだった。
ファニングと同じく名子役だったオニールが今は母親役。
感慨無量。


評価 ★★★★☆

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東北地方太平洋沖地震 [時事]

東北地方太平洋沖地震が起こってから一週間が経過しました。
この未曾有の大惨事を
どのような言葉で表現してよいのか分からないまま、
ただ時間だけが過ぎていった一週間でもありました。
被災された方々には、
心からのお見舞いとお悔やみを申し上げます。


私は常々、当たり前のように「自然を守る」という言葉を使ってきました。
しかし自然は、私に守ってもらわなければならないほどヤワではなかった。
今まで、なんとおこがましく、傲慢に生活してきたのだろうと、
思わずにはいられませんでした。
自然の力の前に、私たちは本当に無力で、
人が一生をかけて築き上げたものを、
ほんの一瞬にして無にしてしまう、
その恐ろしさを目の当たりにし、
実は、私たちの方が自然に守られながら生きていたのだと、
痛切に感じました。


自然だけではありません。
私は今まで、
スイッチを入れれば部屋が明るくなり、
ボタンを押せば部屋が暖まり、
蛇口をひねればお湯が出る生活を、
今まで疑問にも思わずに過ごしてきました。
スーパーに行けば食品が溢れ、
時間が来れば電車が来るのは当然で、
車を運転するのに、燃料がどれほど重要な意味を持つのかなんて、
考えもしないで生活してきたのです。


今、私にできる事は、
月並みですが、
節電と、そして募金。
それから、自分的には、
平常心を失わず、無理をしない、現在あるもので生活する、という事を
心がけてゆきたいと考えています。
品薄とはいえ、スーパーに行けば食品は沢山あります。
当然の事ですが、買いだめ、買い占めはしません。
今まで通り、自分が食べられる分だけを買い、
それをありがたくいただきながら暮らします。
車通勤ではありますが、
今、車に入っているガソリンが無くなって、
それでもスタンドに今のような車の列が出来ているままなら、
電車とバスを乗り継いで行きます。


上手く書けなくてごめんなさい。
今まで日本人は、数々の苦難を乗り越えてやってきました。
日本人には無限の底力があります。
勤勉で、利口で、真面目な日本人である事は、
世界に誇れる事でもあります。
今こそ、一丸となって頑張っていきましょう。

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「孤独の賭け」 [映画]

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〔1965年/日本〕

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神保町シアターで観た。


佐久間良子は、自分が通っている洋裁店の経営が上手くいっていない事を知り、
学校を自分のものにしようと企てる。


偶然知り合った青年実業家、天知茂から、
自分の体を担保に金を借り、それを元手にのし上がってゆく。
また、自分の親を騙して実家の家屋を騙し取った叔父夫婦にも、
復讐する。





帰ってから調べて知った事だけれど、
この作品は3度もテレビ化されているようで、
しかも、そのうち2度は天知茂が同じ役を演じているようだ。
よほどのハマり役なのだろう。


原作は五味川純平。
未読だが、ずいぶん長いようで全3巻とある。
しかし、映画は1時間37分と短く、
そのせいか、細かい部分が描き切れていないように感じた。


佐久間良子がそれほどの悪女に見えず、
演じる事に必死な感じがしたし、
元不良少女だっというが、
品が良すぎて全然そんな感じがしない。


天知との出会いも不自然だ。
佐久間が学校の経営の事を知った直後に、
天知の乗った車に轢かれそうになり、
そのまま同乗。
金を借りる話を持ち出すのである。
そんな上手い偶然あるか?って。


それより、本格的な映画出演はこれが始めてだという大原麗子が、
遊んでいる女の子の役を演じているのだが、
きっと私生活もこんな感じだったのではと、
妙なリアリティがあった。


それから、天地茂の妻を演じていた女優さんがどこかで見た顔で、
ずっと考えていたのだが、
「金八先生」で杉田かおるの、あの可哀想な母親役をしていた
野中マリ子ではないかと気が付いた。
ネットで確認すると「野中マリ」となっているが
多分そうだと思う。
意外な所で意外な人に会ったような、嬉しい気持ち。


評価 ★★★☆☆

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「女の勲章」 [映画]

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〔1961年/日本〕


現在の神保町シアターのテーマは、
「女優とモード 美の競演」。
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自宅で小ぢんまりと女の子たちに洋裁を教えていた京マチ子は、
その時の弟子だった、若尾文子、叶順子、中村玉緒の三人を連れ、
甲子園に大きな洋裁学校を開いた。


元々が大阪は船場のお嬢さんだった京は世事に疎く、
学校の運営は、いつの間にか入り込んでいた、経営手腕に長けた男、
田宮二郎が牛耳っていた。


田宮の頭の中は金と野心しかなく、
大阪、京都、東京と、次々と京の名前で洋裁学校を作る。
そればかりか、その時に応じて、
京、若尾、叶、中村の4人と関係し、
それぞれを各学校の責任者に就かせるつもりなのである。


途中までは、彼の思惑は成功し、
京はデザイナーとしても超有名になり、
学校も大きくなってゆくが、
しかし、そんな不自然な関係が、
破綻しないはずもなく・・・。





原作は山崎豊子さん。
読んだのは随分前で、細かい事は忘れてしまったが、
大変に面白かった記憶があり、
ぜひ映像化した物を観たいと願っていたので嬉しい。
大筋は小説の通りだと思う。


田宮二郎といえば、「白い巨塔」のイメージが強いが、
この映画では、リアルな関西弁で屁理屈こねて、
ヘラヘラ調子ばかり良い、抜け目の無い男を演じ切っていた。
女たちも、それぞれの性格の違いを、
上手く表現していて面白い。


田宮のせいで、一度は恋人と別れ仕事に燃えるが、
悪女に徹し切れない若尾文子。
銀行員の父を持つ、計算高い叶順子。
末っ子的存在でありながら、
実は一番ドライで利口な中村玉緒。
(いつも思うけど、若い頃の彼女はめっちゃ可愛い!)


そして、この中で一番純真なのは、
意外にも、年長者である京マチ子だろう。
田宮によると、彼女は田宮と関係するまで男を知らず、
田宮と他の3人との事を知って一番ショックを受けるのも、
彼女なのである。


それから、田宮の大学時代の友人の新聞記者を船越英二が演じているのだが、
田宮と船越の関係は、
「白い巨塔」でいえば、財前と里見、
「沈まぬ太陽」でいえば、行天と恩地のようだといえば、
分かる方には分かっていただけると思う。
山崎豊子さん得意の手法だ。


洋裁学校が舞台とあって、
彼女たちの着ているお洋服も、モダンで素敵。
それから、当時の女性たちの帽子が、
今はあまり見ないような形で、それが逆にとても斬新。


評価 ★★★★☆

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