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「幸福」 [映画]

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〔1981/日本〕 


書店で3人の客が射殺される。
警察による犯人探しが始まるが、
被害者の一人、中原理恵は、刑事の一人、永島敏行の恋人で、
永島は自分のせいで彼女が撃たれたのかとショックを受ける。


主演の水谷豊の家庭も哀しい。
妻に逃げられ、彼は子供と二人で懸命に暮らしている。
狭い家の中に洗濯物がぶら下がり、その下で遊ぶ子供たち。
母親が出ていったその家庭は、息が詰まりそうな閉塞感を感じる。
なんとか母親に帰ってきてもらいと願わずにはいられない。


捜査をしていくうちに、
中原がボランティアをしていた家庭を訪ねて行く事になるのだが、
その家庭も強烈だ。
市原悦子と、彼女の息子と娘がいるのだけれど、
なんと、息子と娘は兄妹で睦みあい、
妹は兄の子を妊娠しているのだ。
それでも、そんな息子を「跡取り」などと呼び、
頼ろうとする市原の態度にも絶句する。


中原の生い立ちも決して幸せではなく、
母親が子供の頃に出ていっている。
そこに、妻に出ていかれた水谷の人生が重なる。





犯人探しよりも、そこに行き着くまでに浮かび上がる人間模様が
大変に興味深い。
絵に描いたような幸せな家庭なんて、本当は数少ないのかも、
と、こういった映画を観るといつも思い知らされる。


エド・マクベインの小説を市川崑監督が映画化。
水谷豊がまだ若く、
同じ刑事役とはいえ、「相棒」とは全く違った風情がある。
非常に面白く、
最後まで夢中になって観てしまう。


評価 ★★★★☆

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