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「涙」 [映画]

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〔1956年/日本〕

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神保町シアターで観た。


浜松の楽器工場で働く若尾文子。
彼女には、
前科者で、今はドサ回りの旅芸人の父、
自殺した母、
渡世人の兄、佐田啓二がおり、
自身は叔父の家で居候という、肩身の狭い生活をしている。


若尾には、同じ工場で働く恋人、石浜朗がいるが、
大きな農家の次男である石浜の家族は、
若尾を毛嫌いし、二人の交際は絶対に認めなかった。


叔父夫婦は、若尾に早く家を出ていってほしいという思いから、
彼女に見合いを勧め、
若尾もそれを承諾する。


見合いの相手、田村高廣はめちゃくちゃ良い人で、
若尾には申し分のない相手であったが、
若尾は最後に石浜に会いにゆく。


そして佐田啓二は、妹を思う気持ちから、
田村に会いにゆき、その人柄に惚れ込むのである。





不幸な境遇から、
幸せになる事を最初から諦めているような若尾文子が哀れで、
こちらまで息苦しくなってしまう。


石浜朗は家を捨てて若尾と一緒になると言うが、
それで万事が解決ではない事を、若尾はちゃんと知っている。
家に帰れば、叔父夫婦(特に叔母)から見合いをせっつかれ、
どうせ一緒になれない石浜と付き合っていても仕方がないと説教されるなど、
明らかに邪魔者扱いで、八方塞がりとはこの事かと、そんな思いがした。


救いは田村高廣の存在だ。
彼は一目で若尾を気に入り、
彼女の境遇など気にもせずに、若尾を愛する。
そしてまた、石浜の事でグズグズと気の晴れない若尾も、
少しずつ、田村を愛し始めるのである。


それから、佐田啓二!
何ていい男なんだ。
荒っぽいが、妹の身の上を心配する兄という役が、
大変にハマっていて良かった。
彼が今の人なら、大好きになっていたと思うなぁ。
惜しい人を亡くしたと思う。
もっともっと生きて、
良い映画を作ってほしかった。


評価 ★★★★☆

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