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「残菊物語」 [映画]

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〔1939年/日本〕


明治時代の東京。
歌舞伎俳優、尾上菊之助(花柳章太郎)の芸は未熟で、
人は陰で、彼を大根役者と呼んでいたが、
父親が大物役者という事もあり、
周りにはイエスマンしかおらず、
自身はその事に気付けずにいた。


しかしある日、使用人のお徳(森赫子)から、
言いにくそうにその事を告げられた菊之助は、
お徳に感謝の念を抱き、
次第に彼女と親しく口をきくようになる。


しかし、そんな二人の様子が噂にならぬはずもなく、
菊之助の母親は、菊之助に内緒でお徳に暇を出してしまう。
お徳の不在に気付いた菊之助は驚き、
彼女を探し出すが、
歌舞伎の跡取りと、使用人が結婚できるわけはなく、
二人は大阪に駆け落ちする。


大阪歌舞伎の舞台に立つようになった菊之助だが、
ここでは東京の名前は通用せず、
ただの芝居の下手な一人の役者に過ぎない。
しかも、何かと菊之助を盛り立ててくれていた座長が亡くなり、
菊之助は大阪にいられなくなる。


菊之助とお徳は名古屋に行き、
旅芸人の一座に加わるが、
生活は荒む一方で、菊之助は次第にお徳に当り散らすようになる・・・。





お徳の菊之助への思いが、
これ以上はないというくらい深く、
どんなに傷ついても、彼を見捨てる事をしない、
その姿に心を打たれずにはいられない。
本当の愛というのもがあるとするなら、
こういう事を言うのだろうなぁ、と思い知る。


菊之助も、自棄になってはいても、
お徳を愛している事に変わりはなく、
それが画面からもひしひしと伝わってくる。
こんないい夫婦が何故、世間から認められないのかと、
歯痒いような思いがした。


二人の行く末が気になり、
「それでどうなるの?」という思いから、
画面から目が離せない。


72年も前から、日本でもこのような映画が
作られていた。
しかも、2時間20分の大作だ。
映像の状態は決して良くはないが、
それで面白さが半減するわけではない。
大変に楽しめた。


評価 ★★★★☆

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