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「サバービコン 仮面を被った街」 [映画]

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〔2017年/アメリカ〕


1959年。
絵に描いたような、
平和な街、「サバービコン」。
家々は整然と立ち並び、
人々は誰もが幸せそうに暮らしている。


ロッジ家も、そんなサバービコンの中の一軒。
主のガードナー(マット・デイモン)、
妻で車椅子生活のローズ(ジュリアン・ムーア)、
息子のニッキー、
そして、ローズの双子の姉・マーガレット(ジュリアン・ムーア二役)の
4人家族。


ところがある日、
ロッジ家に強盗が入り、
ローズが殺されてしまう。


以来、マーガレットが、
まるでこの家の主婦のように、
振舞い始める。


そんな中、街に大騒動が起こる。
白人だけだった住人の中に、
黒人一家が引っ越してきたのだ・・・。





試写会で観た。


といっても、
もうすでに、劇場公開が始まってますね。
諸事情により、
ブログへのアップが遅れてすみません。


いやー、
想像していたより、
サスペンスだった。


私はもっと、
おかしな街の、
おかしな住人が繰り広げる、
おかしな物語だと思っていたから。


どう感想を書いたらいいのか、
何を書いても
ネタバレになりそうで、
詳しくは書けないのだけれど、


ロッジ家は、最初から、
何か変で。
特に、強盗が入った時、
「ん?」と、すごく違和感があって、
それが、ストーリーが進んでいくうちに、
「そういう事ね」って。


物語自体は、
そう珍しい出来事ではないけれど、
描き方が面白いのと、
子供目線で、出来事を追っているので、
他の映画とは、
どこか違う印象を与える。


それから、
普段、綺麗ごとだけで生きている人々の、
裏の顔というか、
偽善的な面が、
激しく表れるのも、
この映画の特徴。


サバービコンの人々は、
黒人一家が街に引っ越してきた事に、
激しい拒否反応を見せ、
それは想像を絶するような騒ぎに発展する。


それは集団心理の恐ろしさと、
本音と建て前を表す、
実に分かりやすい場面で、


それがロッジ家の強盗のエピソードと
同時進行で進んでゆく。


「サバービコン」は、
普通の街だけど、
奇妙な街で、
でも、
日本だって、この街の事を笑えないんじゃないかって、
そんな風にも思える。


評価 ★★★☆☆

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「青い夜霧の港町」 [映画]

aoiyogirinominatomachi.jpg
〔1956年/日本〕


ボクシングのチャンピオン・大倉健(大木実)は、
試合中、対戦相手の内藤剛を殺してしまった事から、
リングを降り、
今は船乗りをしている。


内藤の墓参りに行った大倉は、
内藤の未亡人・和江と出会い、
互いに心惹かれる。


しかし、内藤の弟・次夫は、
大倉に激しい憎しみを気持ちを募らせており、
いつか、ボクシングで
大倉を倒そうと、
懸命に練習している。


大倉は、リングに戻る気はなかったが、
ある事情から、金が必要となり、
大陽興行社長・関口に
借金の申し込みに行く。


関口が金を貸す条件は一つ。
大倉が次夫と試合をする事・・・。





ボクサーが、
試合中、対戦相手を死なせてしまい、
本人も、家族も、
その事で苦しみ続ける、って、
映画やドラマで、
よくある話のように思うのだけれど、


実際のところ、どうなんだろう。


現実にそのような事があったとして、
死なせてしまったボクサーが、
悩むのは分からないもないけれど、


家族は、
その相手を、そこまで憎むものなのだろうか。
喧嘩して殴った、とかではないわけだし。
もちろん、同じ立場にならない限り、
答える事はできない問題なんだろうけど。


それから、
死なせてしまったボクサーと、
未亡人、もしくは姉(妹)が
恋仲になるというのも、
お約束な気がするんだけど、
これは、ある種の、
ロミオとジュリエット効果みたいなものがあるんだろうか。
好きになってはいけない相手に、
恋してしまった、みたいな。


それにしても、
なんなんだ、この主人公は。


未亡人の和江が、
恋心を告白し、
「私を離さないで」とまで言っているというのに、


「僕も、あなたが好きです。
 でも、でも、僕は、ボクシングを捨てて海に出た男です」と、
彼女を振り切って、
船に乗ってしまう。


据え膳食えよー、
こんな綺麗な女が食っていいって言ってんだから、
食ってくれよー、
何、やせ我慢しちゃんてんの?と、
観ているこちらが、
地団太踏みたくなるようなラスト(笑)。


評価 ★★★☆☆

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23区内全駅制覇・上野懸垂線 [23区内全駅制覇]

東園駅     
     uenokensuisenhigashi.JPG

西園駅
     uenokensuisennishi.JPG


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全駅制覇、7回目の掲載は、
上野懸垂線です。


私がこの遊びを始めた時、
参考にしたのは、
Wikipediaの、
23区内の全ての駅や路線が載っているページです。


そのページをプリントアウトして、
常に持ち歩いては、
次はどこの駅に行こうかと、
ワクワクするような気持ちで、
眺めていました。


Wikipedia以外に、
駅のサイトを運営されているかたのページも、
少し見させていただいた所、
Wikipediaには載っていなかった、
「上野懸垂線」という路線を載せておられる方がいました。


「上野懸垂線」とは、
上野動物園の東園と西園を繋ぐ乗り物で、
特にそれに乗らずに歩いても、
5分もかからないような、短い距離です。


なるほど、「全制覇」というからには、
これにも乗らなくては完璧ではないのか、と思い、
リストに加えました(笑)。


といっても、
それだけのために、
わざわざ上野動物園に行ったというわけでなく、
それ以前から、時々、
園内をブラブラする事があるので、
私にとっては、日常です。
(さすがに、電車には乗った事はありませんでしたが(笑))


平日、
一人動物園をされている女性、いっぱいいますよ(笑)。
皆さん、動物を見て、
ゆっくりした気持ちになりたいのかもしれません。



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※以下に、このカテゴリーの1回目に書いた文章を
 一応貼り付けておきます。
 初めて来られたかたは、
 駅名表示板が並べられているのを見ただけでは、
 わけが分からないと思いますので(笑)。


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いつの頃だったか、
都内の初めての駅に降り立った時、
せっかく来たのだからと、ホームの駅名表示板を
写真に撮った事がありました。


そんな事が何回か続いた時、
23区内に駅っていくつあるんだろう、
全て制覇したら面白いだろうな、と考えるようになり、
数年間かけて、
先日、やっと全駅制覇を完了いたしました。


条件は、
駅は、必ず改札を入るか出るかする、
もしくは、
違う路線に乗り換える事。
駅に降りて、写真だけ撮って、また乗るというような
「ズル」はしていません。


駅は、数え方にもよるのでしょうが、
延べにして720ほどあります。
当初はブログにアップしようとは全く考えていませんでしたが、
友人にこの事を話しましたら、
ぜひ見てみたいと言われましたので、
順次、載せていこうと思います。


駅を降りたあと、
周辺を、少し歩いてみたりもしましたが、
とりあえず、「一周目」は全制覇が目標でしたので駆け足で、
「二周目」に、街歩きのような事をしてみたいと
考えています。

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「春の夢」 [映画]

harunoyume.jpg
〔1960年/日本〕


石焼き芋売りの渥美の爺さん(笠智衆)は、
大金持ちの奥平家に芋を売りに行くが、
お手伝いの梅子(十朱幸代)に
家具の移動を手伝わされた挙句、
広い客間の真ん中で、
脳溢血で倒れてしまう。


主の奥平庄兵衛(小沢栄太郎)は、
怒り狂い、
すぐにでも渥美の爺さんを追い出せと言うが、
脳溢血の患者を動かすわけにはいかない。
爺さんは一週間、
ここで世話になることとなった。


庄兵衛の経営する製薬会社は、
現在ストの真っ最中。
さらに、
長女は、男をとっかえひっかえする博愛主義、
次女は、うだつの上がらない画家と結婚すると言い出し、
長男は、神経衰弱気味・・・
と、最近いい事は一つもない。


一方、この家の実権を握る、
祖母(東山千栄子)は、
渥美の爺さんの年齢と名前を知り、
「まさか・・・」という思いを抱きはじめる・・・。





木下恵介監督のコメディ。


舞台劇のように、
物語は、
ほぼ、一軒の豪邸の中で進行する。


脳溢血で倒れた、
石焼き芋屋の爺さんが、
ゴージャスな洋風の客間の真ん中に
布団を敷いて、
寝かされているという絵が、
シュールで可笑しい。


この豪邸の主を演じる小沢栄太郎さんの、
全く期待を裏切らない、
嫌味っぷり(笑)。
小沢さんって、素でお話しされる時は、
本当に素敵なおじさまなのに、
演技になると、
何でこんなに人の神経を逆撫でするような
人になれるのだろう。
天才だと思う。


そんな小沢さんの秘書役を演じる、
久我美子さんが、また絶妙。
彼女は、いつも小沢さんから、
「このオールドミスが!」などと怒鳴りつけられているけれど、
決してひるまない。


久我美子さんって、
品格にかけては、
他のどの女優さんにも負けないんじゃないだろうか、
というくらい、品格のオーラが凄い。
憧れの女優さんの一人。
この物語では、
その後、素敵な恋の予感まであって、
観ているこちらまで、
嬉しくなってしまう。


それから、
とっても、私好みのエピソードなのが、
東山千栄子さんと、笠智衆さんの過去。


「東京物語」で、
ご夫婦役を演じておられたお二人が、
この映画では、
大金持ちの老婦人と、貧しい石焼き芋売り。


こう書けば、
2人の過去に何があったか、
何となく想像がつこうというものだけれど、
ただ、ラストがなんとも・・・。


あぁ、
このオチを見ると、
やっぱり人間、
今したい事をしなければ駄目なんじゃないかと、
本気で思えてくるよ。


評価 ★★★★☆

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「ふんどし医者」 [映画]

fundoshiisha.jpg
〔1960年/日本〕


大井川の近くで、
医者をしている小山慶斎(森繁久彌)。
彼は、徳川家の御典医になれる
能力がありながら、
貧しい者たちのために、
この地に残って開業したのだ。


妻のいく(原節子)は、
慶斎によく仕えていたが、
半丁の勝負事が大好き。
そんないくを、
慶斎は心から愛している。


ある日、近所のチンピラ・半五郎(夏木陽介)が、
腹を刺され、
慶斎は、腎臓の片方を摘出するという
大手術を行う。


半五郎はそれをきっかけに心を入れ替え、
医者になる決意をし、
長崎に渡った。


8年後、立派な医者になり、
帰ってきた半五郎に慶斎は驚き・・・。





凄いな。
凄いものが色々詰まってる。
いい映画だ。


森繁久彌演じる慶斎という医者は、
大変な能力の持ち主でありながら、
大井川の近くで、
貧しい者たちのために、
安い治療費で診療をしてやっている。


そう聞くと、
まるで神様のような人だと思われそうだが、
それだけではない。


慶斎は、
長崎で最新の医学を学んで
帰ってきた半五郎の知識に、
激しい嫉妬心を燃やし、
自分の診断に異を唱えた半五郎の意見を
受け付けない。


能力もパーフェクト、
人間性もパーフェクトな人など、
いはしない。
どんな人間にでも、
嫉妬心はあるし、
それがコントロールできず、
表に出てしまう事もあるだろう。


そこをきちんと描いている、
この物語は面白い。
この映画に
深みを感じる一因だ。


それから、
森繁さんも凄いけど、
もっと凄いのが、
妻のいく役を演じた原節子さん。


はぁ。。。
もう溜息しか出てこない。
なんてなんてなんて素敵なの。
いくは貞淑な妻で、
夫に献身的に尽くしているのだけれど、
でも、博打が大好き(笑)。


賭場に夫を伴って行き、
賭けをし、
持ち金がなくなると、
夫の着物を脱がしたりしている(笑)。


私は賭け事をした事はないけれど、
自分を失わず、
ストレス解消として、
遊ぶのなら、
それはいい利用法かも、と思ったりもして。


半五郎の夏木陽介さんも、
彼の恋人の江利チエミさんも、
そして、
慶斎の親友役の山村聰さんも、
とにかくみんな、
凄くいい顔している。
いい映画だった。


評価 ★★★★☆

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