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「春の夢」 [映画]

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〔1960年/日本〕


石焼き芋売りの渥美の爺さん(笠智衆)は、
大金持ちの奥平家に芋を売りに行くが、
お手伝いの梅子(十朱幸代)に
家具の移動を手伝わされた挙句、
広い客間の真ん中で、
脳溢血で倒れてしまう。


主の奥平庄兵衛(小沢栄太郎)は、
怒り狂い、
すぐにでも渥美の爺さんを追い出せと言うが、
脳溢血の患者を動かすわけにはいかない。
爺さんは一週間、
ここで世話になることとなった。


庄兵衛の経営する製薬会社は、
現在ストの真っ最中。
さらに、
長女は、男をとっかえひっかえする博愛主義、
次女は、うだつの上がらない画家と結婚すると言い出し、
長男は、神経衰弱気味・・・
と、最近いい事は一つもない。


一方、この家の実権を握る、
祖母(東山千栄子)は、
渥美の爺さんの年齢と名前を知り、
「まさか・・・」という思いを抱きはじめる・・・。





木下恵介監督のコメディ。


舞台劇のように、
物語は、
ほぼ、一軒の豪邸の中で進行する。


脳溢血で倒れた、
石焼き芋屋の爺さんが、
ゴージャスな洋風の客間の真ん中に
布団を敷いて、
寝かされているという絵が、
シュールで可笑しい。


この豪邸の主を演じる小沢栄太郎さんの、
全く期待を裏切らない、
嫌味っぷり(笑)。
小沢さんって、素でお話しされる時は、
本当に素敵なおじさまなのに、
演技になると、
何でこんなに人の神経を逆撫でするような
人になれるのだろう。
天才だと思う。


そんな小沢さんの秘書役を演じる、
久我美子さんが、また絶妙。
彼女は、いつも小沢さんから、
「このオールドミスが!」などと怒鳴りつけられているけれど、
決してひるまない。


久我美子さんって、
品格にかけては、
他のどの女優さんにも負けないんじゃないだろうか、
というくらい、品格のオーラが凄い。
憧れの女優さんの一人。
この物語では、
その後、素敵な恋の予感まであって、
観ているこちらまで、
嬉しくなってしまう。


それから、
とっても、私好みのエピソードなのが、
東山千栄子さんと、笠智衆さんの過去。


「東京物語」で、
ご夫婦役を演じておられたお二人が、
この映画では、
大金持ちの老婦人と、貧しい石焼き芋売り。


こう書けば、
2人の過去に何があったか、
何となく想像がつこうというものだけれど、
ただ、ラストがなんとも・・・。


あぁ、
このオチを見ると、
やっぱり人間、
今したい事をしなければ駄目なんじゃないかと、
本気で思えてくるよ。


評価 ★★★★☆

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