「妻よ薔薇のやうに」 [映画]
〔1935年/日本〕
山本君子(千葉早智子)は、
母親と2人暮らし。
父親は、
元芸者の愛人と家を出て、
現在は信州で暮らしている。
母親は歌人で、
父を思う歌ばかり作っている。
一緒に暮らしていたころは、
それほど父を愛しているようには見えなかったのに、と、
君子は面白く思っている。
ある日、君子は、
父を迎えに信州に行く。
ところが、そこで見た、
父と愛人との生活は、
君子が想像していたものとは、
全く違っていた・・・。
昨日書いた、「妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3」は、
日本映画の名匠・成瀬巳喜男監督の
本作からタイトルをいただいたであろうことは
間違いなく、
古い映画に造詣の深い、
山田洋二監督らしいと思った。
私は、この名作といわれる「妻よ薔薇のやうに」は未見だったので、
この機会に観てみた。
いい映画だった。
なんか、もう、
本妻=善
愛人=悪
という概念が、完全に覆される。
「家族を捨てて、女と家を出た父」
「その女は元芸者」
と聞けば、
誰だって、愛人は、
派手で、蓮っ葉な女だと想像するだろう。
私もそうだった。
ところが、娘・君子が訪ねた父の家は、
そうではなかった。
愛人と呼ばれる女性は、
地味で堅実、
事業が上手くいかなくなった父に代わって、
髪結いをして生活を支え、
さらに、父から送られてきているとばかり思っていた金は、
実は愛人が送っていたものだと分かる。
父と愛人との間には、
子供が二人いて、
その家庭は、
君子の家より、よほど家庭らしいように見える。
愛人は、自分の娘に進学を諦めさせ、
君子の家に送る金を捻出していたのだ。
比べてはいけないが、
それに引き換え君子の母は、
歌人といえ、
持ち出しの多い生活で、
娘の収入で生活しているというのに、
あれやこれやと買い物をしたり、
新しい着物を作ったり、
なんだかなぁ、と思われる部分が多い。
父は
君子と一緒に、
数日間の予定で、東京に帰って来るのだけれど、
君子の母は、
別に嬉しそうでもなく、
「いい歌が浮かんだから、一人にさせて」みたいな事まで言う。
その冷淡さ、
夫に逃げられても仕方あるまい。
私は、父を、
早く愛人の元に帰してあげたくて仕方なかったよ。
たとえそれが常識とは外れているとしても、
この映画に関してだけは。
やっぱり、いい映画は、
色々考えさせられることが多い。
評価 ★★★★☆