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「夜の縄張り」 [映画]

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〔1967年/日本〕


生澤敬(田宮二郎)は、
バーやレストランを手広く経営する、
野心いっぱいな男。


彼の夢は、夜の東京を牛耳る事。
銀座に大規模なクラブを開店させるため、
手段を選ばず金を作り、
その甲斐あって、
開店までもうすぐだ。


生澤は、バー「あや」のママ・綾子(久保菜穂子)に、
新しいクラブのママになってほしいと願うが、
生澤を嫌う綾子は、
首を縦には振らない。


そんな中、
生澤は、学生時代の友人・木村(江原真二郎)と
偶然再会する。
木村は、かつて令子と恋人同士だったが
生澤が彼女を奪った経緯があるのだ・・・。





今まで、何度か書いているけれど、
私が、出演作を全制覇したいと思っている、
一番は若尾文子さん。


で、その次に、
川口浩様、浩様の奥様の野添ひとみさん、
京マチ子さん、山本富士子さんと、
大映のスターが続くわけだけど、


この映画も、野添ひとみさんが出演しているので、
見逃してはならないと、
出掛けた。


今まで観てきた野添さんは、
どちらかというと、おきゃんな娘役が多い、
可愛いイメージだったけど、
この映画では、とても悲しい女。


同棲する恋人・田宮二郎の、
過剰なまでの野心に巻き込まれ、
お金には不自由していないけれど、
薄幸そうな、
ここ数年、心から笑っていなさそうな女を演じている。


なにせ、田宮二郎は、
銀行の支店長が、
野添さんに気がある事に気付いていて、
金を出させる最後の一押しに、
支店長と一夜を共にしろと、
半ば強制的に言う。


何でそんな事、しなくちゃいけないの。
野添さんも同じ夢を持っているならともかく、
田宮二郎の野望のために、
売春の真似事をするほど、
彼女は強かではなさそうだし、
そういったタイプの女が好きなら、
最初から、他を選べばいいのに。


どんなに愛していても、
恋人にそんな事を命令されては、
近いうちに破綻が来るだろう。
一生添い遂げる2人とは思えないし、
案の定、ラストは悲しい。


久保菜穂子さん演じる、
バーのマダムが超カッコいい。


やり手な彼女は、
人を見る目もあるらしく、
田宮二郎の誘いには絶対に乗らない。


で、バーのカウンターで、
田宮にグラスの酒をぶっかけるんだけど、
その手つきが鮮やかで(笑)。


しっかし、映画などで、
グラスの酒や水を、
人にかける場面はよく見るけど、
現実に、そういうシーンにお目にかかった事はないなぁ。
一度くらい、どこかで遭遇してみたいものだ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「性犯罪法入門」 [映画]

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〔1969年/日本〕


”私”はダイヤの指輪です。
現在、秋子さん(松岡きっこ)の指で輝いています。
秋子さんは、女友達と4人で、
純情そうな浪人生・鷹夫(小倉一郎)を逆ナンし、
5Pを楽しんだあと、
お礼だと、”私”を鷹夫にあげました。


鷹夫は、”私”を宝石店に売りました。
次に”私”を買ったのは、
外国人のガシハラ氏(E・H・エリック)。
ガシハラ氏は、取引先の部長から、
素人の人妻をプレゼントすると言われ、大喜び。
人妻に満足したガシハラ氏は、
”私”を、その女性に贈りました。


次に”私”を買ったのは、
銀行員の池内氏。
購入理由は、バーのホステスの歓心を得るため。
けれど、ホテルに行った翌日、
ホステスのヒモが銀行まで押しかけて来たんです。
「お前に俺と同じ思いをさせてやる。お前の嫁を一晩貸せ」ですと。
池内氏、どうするんでしょう。


次に”私”を買ったのは、若夫婦と同居する爺さん。
この爺さん、実は息子の嫁とできていて、
日中、ずっとイチャイチャしています。
あ!息子が急に帰ってきました。
大変な修羅場です・・・。





現代(といっても、1969年だが)の市井の人々の
性事情と、
それが犯罪だった場合、どのような罪状に当たるのかを描いた、
オムニバス映画。


人々の手から手へ、
渡ってゆくダイヤの指輪が
その持ち主の状況をナレーションするという、
ちょっと変わった趣向。


純情そうな浪人生が、
女性4人に誘われるがまま、
マンションに行き、
いきなり襲われるわけだけど、
これ、もし、男女が逆だったら、
目を背けたくなる場面だろう。


男と女が入れ替わるだけで、
なぜ、コメディタッチになるのか。
「被害者が男性の場合は罪にならない。
 それだけ女性の貞操というのは大事なのである」
みたいなナレーションが入るけど、
たしか、今って、法律が変わって、
男性が襲われた時も、
加害者は罪になるのよね。
まぁ、当然だけど。


ガシハラ氏のエピソード、
好きだなぁ(笑)。
彼は、女性を紹介すると言われ、
目隠しされた上で、大きな屋敷へ。
そこにいたのは、
正真正銘、素人の人妻って事で、
その、たおやかな風情に、大感激。
けれど、その後のオチが最高(笑)。


その次の話も好き。
夫が、浮気相手のヒモに脅され、
妻は自棄になり、
「私を自由にしてください!」と。
それには、ヒモの方が驚き、
タジタジの及び腰に(笑)。
劇場内は、笑いでいっぱい。


舅と嫁の関係は、
個人的に好きじゃないけど、
全体的に面白くて、楽しめた(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「アウトレイジ 最終章」 [映画]

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〔2017年/日本〕


日本の二大ヤクザ勢力、
関東山王会と、関西花菱会の抗争後、
韓国に渡った、
大友組の組長・大友(ビートたけし)。
彼は、フィクサー・張の下、
済州島の歓楽街を仕切っている。


ある日、
来韓していた花菱会の幹部・花田(ピエール瀧)が、
デリヘル嬢を殴ったせいで、
大友は彼を脅し、
大金を要求する。


花田が後始末を舎弟に任せると、
舎弟は、張の若い衆を殺してしまう。
それが引き金となり、
張のグループと花菱会は
一触即発状態に。


また、花菱会は、
内部でも揉めていた。
娘婿で、元証券会社社員・野村(大杉漣)が、
会長の座に収まり、
そんな野村に、古参の若頭・西野(西田敏行)は、
激しい敵意を燃やしているのだ・・・。





北野武監督の、
「アウトレイジ」シリーズ、
3作目にして最終章。


いきなり、舞台が韓国で始まる。
何で韓国?と思うが、
北野武演じる、主人公・大友が、
韓国の歓楽街で、
風俗店を営んでいる事が分かってくる。


そこで、客としてやって来て、
トラブルを起こすピエール瀧に笑える。


風俗嬢に暴力を振るったと、
大友を怒らせるピエール瀧だけど、
暴力を振るった理由ってのが、
「女の子たちが、思う通りのプレイをしてくれない」だと(笑)。


で、そのプレイでの、
ピエール瀧の役割ってのが、
「そ、そっち!?」って。
(意味分かりませんよね(笑))


その辺り、
さすが北野武。
大筋とは全く関係ないけど、
変なところで感心してしまう。


ピエール瀧の殺され方も、うわーって。
あんな死に方したくないよ。


大杉漣も気に入った。


彼は、元は普通のサラリーマンだったのに、
今は、ヤクザの会長に収まっている。
定年後の再就職先が、
何かと話題になる今の世の中だけど、
ヤクザに幹部になるってのは、どうなのよ(笑)。


しかも、彼、
めっちゃ威張ってる。
昨日までサラリーマンだった男が、
いきなり入り込んできて、
あんなに威張られたんじゃ、
そりゃあ、古参の組員が面白くないのも
仕方あるまい。
揉め事も起こるってもんだ。


彼は、組長の娘婿って事だけど、
いつ、婿の座に収まったんだろう。
若いころ組長の娘を嫁にもらったまま、
サラリーマンをしていたのか、
最近、結婚したのか。
その辺のところは分からない。


もっと他に、
書くことがあるだろうって感じだけど、
ヤクザ同士の大きな抗争より、
私は、そういった、
チマチマした部分を見るのが好きで(笑)。
人間が小さいんだと思う。


ラストは、
北野武らしい、落とし前のつけ方。


評価 ★★★☆☆

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「悪魔祓い、聖なる儀式」 [映画]

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〔2016年/イタリア〕


試写会で観た。


悪魔祓いで有名な、
イタリア・シチリア島のカタルド神父。
この神父の教会での様子に密着した、
ドキュメンタリー映画。


最初から茶化してはいけないけど、
「悪魔」のいる国はいいなぁと、思ってしまう(笑)。


映画の最初の方で、
小学生くらいの男の子を連れた両親が、
カタルド神父に、
なにやら訴える。


「この子は、学校の先生に暴言を吐き、
 唾を吐きかける。
 悪魔が憑りついているに違いありません」と。


もし日本で、そのような子供がいたとしたら、
親の躾を問題視するか、
脳や精神に、何か病を抱えているのかも、と
そちらの心配をするだろう。
悪魔云々なんて、親が言うとは思えないし、
本気で言っている親がいるとしたら、
まず親の方から、検査を勧められる・・・ような気がする。


他の人たちも似たり寄ったり。
恋人に暴力を振るってしまうのも、悪魔のせい。
人生が上手くいかないのも、悪魔のせい。


もちろん、神父が話を聞いてくれて、
悪魔祓いをして、
それでスッキリするなら、
悪い事とは思わない。
ある種の、カウンセリングみたいなものだろう。


ただ、観ていて、
一部、悪魔祓いより、
本気で病院に行った方がいいのではと
思う人がいる。
私も専門家ではないので、
余計なお世話なんだろうけど。


映画は、ひたすら神父を追い、
ナレーションは一度も入らない。


この、ナレーションが入らないという部分が、
日本人にはとっつきにくいかも。
西洋人のように、
悪魔祓いについて肌で理解できないので
解説が入らない映像を
ただ見せられているのは辛い。


これがNHKのドキュメンタリーだったら、
日本人好みの映像に
仕上がるんだろうなぁ(笑)。





今回の試写会は、
劇場ではなく、
ライブハウスで開催されました。
私は、そのような形での試写は初めての体験なので、
とても面白く、珍しく、楽しく感じました。


私は、劇場で飲食をするのは
あまり好きではないと、
何度か書いた事があるのですが、


今回のように、きちんとテーブルがあるなら、
軽食を食べながら映画を観るというスタイルも
悪くなかったです。


もちろん、音を立てたり、
お喋りしたり、ケータイを見る、鳴らす、
などの行為は、
今まで同様、御法度ではありますが。


私は、隅っこの、
ゆったりとしたソファー席を選んだのですが、
自宅で観ているように心地良かったです。


評価 ★★★☆☆

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「ザ・サークル」 [映画]

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〔2017年/アメリカ〕


フリーターのメイ(エマ・ワトソン)は、
正社員になるべく、
仕事を探していたところ、
憧れていた、
巨大SNS企業、「サークル」に採用され、
有頂天になる。


社長・ベイリー(トム・ハンクス)の
目に留まったメイは、
ある計画の実践者に抜擢される。


それは、「サークル」が開発した、
超小型カメラを24時間、身に付け、
自分の生活全てを晒す、というもの。


メイの顔と名前は、
全世界にネット配信され、
たちまち
アイドルのような存在になってゆく。


ところが、
彼女のした事で、
友達が傷つき、
ついには大事件が・・・。





試写会で観た。


ネットに、どハマリしようが、
PCやスマホとは無縁で生活しようが、
それは人の勝手。
自由にすればいい。


SNSを活用するにしても、
発信する内容については、
人それぞれ。


自分の私生活を日記風に書く人、
自分の作り出した作品を披露する人、
日々起こるニュースをピックアップし、自分なりの感想を書く人、
趣味だけに絞って、それについて綴る人、
などなど、様々で、
それはそれ、好きにすればいい。


ただ、自分の価値観を人に押し付けたり、
自分がしている事と同じ事を、
他人に強いるのは、
良くない。
これは、今のネット社会に警鐘をならす映画だ。


ある人にとっては、
何でもない事が、
人によっては大変な苦痛に感じる事がある。
自分の私生活を晒す事に、
それほど抵抗のない人もいれば、
絶対に嫌だという人もいる。
そこを理解しなければ、
どんなに口先で、
「みんな違って、みんないい」なんて言ったって、
それは、嘘くさい、上っ面だけの言葉になってしまう。


主人公のメイの友達は、
メイとは違う価値観の持ち主だ。
けれど、メイがした、
ある出来事がきっかけで、
辛い状況に陥ってゆく。


詳しくは書かないけど、
友達は追い込まれる。
観ているこちらが
「しつこい!しつこい!しつこい!もうやめてあげて!」と
叫びたくなるような。


トム・ハンクスが怖い。
善人役が多い彼が、
何か含みのある会社の社長役をすると、
本当に腹黒く見える。
暴力を振るうタイプの悪人でなく、
何かゾっとするような悪人。


メイが24時間付けているカメラのせいで、
両親の性行為中の場面が映されてしまうに至っては、
何をかいわんや。
最悪。
そのせいで、彼女は両親と連絡が取れなくなる。
当然だろう。


色々考えさせられる。
私も気を付けねば、と思わされる場面多数。


評価 ★★★☆☆

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