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「キトキト!」 [映画]

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〔2006年/日本〕


富山県在住の平山あやと石田卓也姉弟は、
幼い頃に父を亡くし、
以来、母・大竹しのぶに、
女手一つで育てられてきた。


年頃になった平山は、
すっかりヤンキーと化し、
包丁を持って更生させようとする大竹を振り切り、
男と駆け落ち。
どうやら東京へ行ったらしい。


石田もヤンキーになり、
高校を中退、
東京へ行けば何とかなるとの思いから、
友達の尾上寛之と一緒に、歌舞伎町でホストになる。


しかし、世の中、そんなに甘くはなく、
さまざまな壁にぶち当たる石田。
そんなある日、彼は、キャバ嬢をする姉と再会、
さらに、母がアポ無し上京し、
店にまでやって来る。


ホストクラブのあり方に嫌気が差した頃、
石田にある知らせが・・・。





「母と子の絆」、みたいな宣伝文句だったので、
どんな絆かと期待したけれど、
絆より、
ホストクラブの場面の方が印象の強い映画であった(笑)。


大竹しのぶと、石田卓也・平山あやの母子は、
それほど強い絆で結ばれているようには見えない。
特に平山は、
駆け落ちしてから2年間、
一度も大竹に連絡してきていないし、
大竹も、彼女の居場所さえ知らないようだ。


私は別に、平山が親不孝だとか、
そんな事を言いたいのではない。
世の中には、連絡するのも嫌なくらい
こじれた親子関係もある。
ただ、なんだか全ての人間の繋がりが、
軽い気がして。


石田が悪さをして、
大竹が高校に呼び出された場面も、
ちょっとうんざり。
なんだか教師が嫌味な奴のように描かれているけれど、
そもそも、呼び出される原因を作ったのは石田。
なぜ親子揃って謝る事ができないのか。


石田がホストになってからは、
なかなか面白い。


私はホストクラブに行った事はないのだけれど、
中村うさぎさんのエッセイや、その他の情報で、
そのシステムやルールは、なんとなくだけど、分かる。


一度行ってみたいなぁと思うけれど、
ケチだから、おそらくハマる事はないだろうし、
ホストさんの方も、
私が一度だけの冷やかし客だと見抜くだろうし、
こんな私が行くだけ迷惑かもと考えたりして(笑)。


だから、夜の風俗の様子を
映像で観るのは楽しい。
歌舞伎町の、あの猥雑な感じ。
ルールに縛られるのが嫌で、
学校や社会からドロップアウトしたはずのホストたちが、
一般の人以上に、
ルールでがんじがらめになっている矛盾。
そして、それに気付いていない、ある種の滑稽さ。
全てが興味深い。


大竹が、石田の店に、
ドレスまで着て訪ねたというのに、
ホストとの絡みが少なかったのが残念で。
もっと、「ホストと客」らしい場面が観たかった。


その後の展開は、
DVDの表に書かれている文言で、
想像が付いてしまう。
で、案の定、って(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「暴れん坊街道」 [映画]

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〔1957年/日本〕


丹波国由留木城下。
家老・稲葉幸太夫の娘・重野(山田五十鈴)は、
奥小姓の与作(佐野周二)と恋仲となってしまい、
不義の子を産む。


重野の罪は許され、
最近生まれた城主の姫の乳母に任命されるが、
そのためには、
生まれた子・与之助は里子に出さねばならない。
重野は、引き裂かれる思いで、
父母の名を書いた紙を入れた守り袋を、与之助の荷物に入れる



それから11年。
与之助は、里親に死なれ、
馬子をして暮らしていた。
そんな与之助の馬に、
今は風来坊となった与作が乗った。
互いに親子だとは夢にも思わずに。


そんなある日、
由留木家の行列が通った。
姫が駄々をこねている所を、
与之助が宥め、
機嫌を直した為、
姫の乳母・重野は褒美を取らせようとする。


重野は、ふと目にした与之助の守り袋を見て、仰天する。
それは昔、自分が作ったものではないか・・・。





近松門左衛門は容赦しない。
全て丸く収まって、全員が幸せに、なんて事は、
絶対にさせないらしい。


近松といえば、
「遊女」や「心中」や「放蕩息子」の物語が主で、
こんな子供を主人公にしたものは観た事がなかったので、
「引き裂かれた母子ものかぁ。ラストは名乗り合って大団円?」
などと思っていたから、
上記のように感じた次第。


途中で、与之助がとんでもない事件をおこし、
それによって、
話はどんどんマズい方へ転がってゆく。


11歳になった与之助を演じる、
植木基晴くんがいい。
彼はとにかく元気いっぱい。
そして明るいだけでなく、
自分の出生が、
性格のどこかに暗い影を宿している事に、
観る者は同情してしまう。


そんな与之助だから、
偶然出会った重野が実の母だと知った時の、
驚きが辛かった。
自分は、馬子をして、
日々の食べ物にも困るというのに、
母はどうだ、
金ぴかの着物を着て、姫に仕えているではないか、と。


あぁ、本当は母だって辛いのよ。
彼女は与之助を捨てたくて捨てたわけじゃない。
でも、捨てられた側にしたら、
そんな事情、知ったこっちゃないものね。





お友達のぼんぼちぼちぼちさんから、
近松門左衛門の映画についてご質問があり、
やっぱり人様にお教えするには、
今まで観た以外の作品も観てみなければ失礼になると思い、
本作を選んだ。


いい機会なので、
近松原作の映画で、ソフトが手に入りそうな作品を
なるべく時間を空けずに観てみようと思う。
なんだかとても楽しみ。


評価 ★★★★☆

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「桐島、部活やめるってよ」 [映画]

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〔2012年/日本〕


とある高校。


いつもと何も変わらない金曜日。
バレー部員の桐島を待つため、
クラスで一番派手で美人の梨紗(山本美月)は
体育館前のベンチに座っている。


梨紗の友達のかすみ(橋本愛)と実果(清水くるみ)は
バトミントン部の練習へ。
映画部の前田(神木隆之介)は、
ゾンビ映画を撮りたくて、
部員を相談中。


野球部だが、部活に出ていない菊池(東出昌大)は、
友達とバスケに興じている。
菊池の恋人は、
同じクラスの沙奈(松岡茉優)。
そして、菊池に片思いしている吹奏楽部の部長・亜矢(大後寿々花)。


そんな中、
生徒たちの間に衝撃の噂が広まる。
桐島がバレー部を辞めたと言うのだ・・・。





良い映画だった。


観ていて感じる、
自分の中の2つの矛盾。


一つは、
・イマドキの高校は自分の頃とは違うなぁ。
・学生の基本って、変わっていないんだなぁ。


もう一つは、
・高校って懐かしい。
・学校という、ある種歪んだあの空間には、二度と戻りたくない。


どれも全て正直な感想で、
矛盾しているけれど、していない、そんな感じ。


この映画は、
桐島という男子生徒が、
部活を辞めた事によって起こる騒動で、
どうやら彼は、全てにおいてパーフェクトな人物らしい。


たかが一人の生徒が部活を辞めたくらいで、
みんながそれほど騒ぐかなと思ってしまいそうだけど、
この話は実によく出来ていて、
まったく不自然さを感じない。
むしろ、学校という狭い空間が全ての高校生なら、
十分有り得るかも、と思う。


派手グループと地味グループに分かれてしまうのも、
学校生活の典型的な「あるある」だ。


派手と地味、
どちらがエライってもんじゃないんだけど、
どうしても、派手な方が幅をきかせ気味で、
地味は、「ダサい」と言われてしまう。


けれど、私は、
そんな地味グループで、
超ダサいと思われている、映画部の前田が撮るゾンビ映画は
めっちゃカッコいいと思ったよ。


ストーリーは単純でも、
説明するのが難しい。
多くの方々に観てほしい傑作。


評価 ★★★★★

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「岸辺の旅」 [映画]

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〔2015年/日本〕


夫・浅野忠信が突然失踪し、
3年が過ぎた。
妻・深津絵里の傷もようやく癒え、
ピアノの教師として、なんとか生活できるようになった頃・・・。


突然、浅野が帰宅する。
彼は、「自分は死んだ」と言う。
富山の海で自死し、体は蟹の餌になっているだろう、と。


浅野は、この3年、
人間に紛れて生活していたと言う。
そしてその間、世話になった人を訪ねたいと、
深津を誘い、旅に出る。


古い新聞販売店、
小さな食堂、
山奥の農村。


旅を続けてゆくうちに、
浅野と深津は、
自分たちの絆について考えてゆく・・・。





浅野忠信が死者を演じるという本作。


愛する人が突然いなくなった時、
ハッキリその死を知らされるのと、
生死が不明なのとでは、
どちらが辛いだろう。


どっちつかずの状態でいる方が辛いのか、
かすかな望みでも、
そちらに賭けた方がいいのか。


そんな宙ぶらりんの状態でいる妻の所へ、
突然帰ってきた、
幽霊の夫。
しかし、夫がなんだか幽霊らしくないのが面白い。


しかも彼は、
死んでから3年間、
日本の各地を放浪していたと言う。
彼に接した人々は、
彼を幽霊だとは夢にも思わずにいたらしい。
それどころか、
この世には、
浅野と同じように、
普通に生活している幽霊がいるらしい。
そんな事を知らされると、
私まで、周囲を見回したいような気持になる(笑)。


人の、生と死の境目って、
どこにあるんだろうと考えてしまう。


それから、
諦めていた人にもう一度会える、それはいいけれど、
今度本当に別れる時って、
それまで以上に辛いんじゃないかと思う。
そんなだったら、会わない方がいい気がしたりして・・・。


ある役で、
ほんの5分ほどしか出ていない、
蒼井優が、すごい。
彼女はよく、「魔性の女」などと
ゴシップ誌で揶揄されることがあるけれども、
本当に魔性に見える。


これは演技なのか、
無意識なのか。
ただただ、ビックリ。


評価 ★★★☆☆

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◎春画展◎ [美術]

昨日、話題の春画展に行ってきました。

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平日の午後なら、それほど混んでいないだろうと思い、
ちょうど仕事が休みの昨日、ブラっと行ってみたのですが、
考えが甘かったようです。

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ずいぶん沢山の方が来られている上に、
大変な熱気です。
今まで行った事のある絵画展で、
来場者がこれほど、
一つ一つの絵を時間をかけて、
真剣に見入っているのを見たのは、
初めてな気がします(笑)。


このような絵を、
大っぴらに見られる機会はあまりないし、
やっぱり多くの人は、
普段は口にはしないだけで、
色々、関心があるのだろうと思います。


まぁ、そうでなきゃ、人類は滅亡しちゃうものね(笑)。





ヨーロッパで春画展に行ったという、
岡本夏生さんが、
MXテレビの「5時に夢中」で、
ここにはとても書けないような事を、
大胆発言していましたが、
彼女の仰りたい事がよく分かりました(笑)。


日本人は、西洋人に比べて、
草食系というか、
性欲が弱く、性行為の回数も格段に少ないとのデータもあるようですが、
こういった絵を見ていると、
昔は今よりずっと大らかだったんじゃないか、と感じました。

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