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「よりよき人生」 [映画]

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〔2011年/フランス〕


学食でシェフとして働くヤン(ギョーム・カネ)は、
もっとちゃんとしたレストランで働きたいと、
面接試験を受けるが、なかなか合格できない。
その日も、あるレストランで採用を断られるが、
そこで知り合った、
ウエイトレスのナディア(レイラ・ベクティ)とデートの約束をし、
一夜を共にする。


ナディアはレバノンからの移民で、
9歳の息子・スリマン(スリマン・ケタビ)がいると言う。
ある日、湖畔にピクニックに出掛けた3人は、
森の奥に廃屋があるのを発見する。
ヤンはそこを改装し、
レストランを開業したらどうかと閃く。


ただ、如何せん資金が足りない。
ヤンは銀行の融資だけでは足りない分を、
複数の消費者金融で補填しようとし、
多重債務者となってしまう。
さらに、レストランの設備に金を掛けなった為、
消防署からの認可が下りずに、開店ができない。


そんな八方塞の状態で、
大喧嘩をしたヤンとナディア。
ナディアはスリマンを連れて出てゆくが、
ある日、連絡が入る。
カナダで働く事にしたから、
少しの間、スリマンを預かってくれないか、と・・・。





何が言いたいのかよく分からない。


ジャケットやキャッチコピーでは、
男と女と、女の息子が、
深く愛し合っているように見えるのだけれど、
私には、どうにもそれが感じられなくて。


だって、ヤンとナディアは、
大喧嘩の末、同居を解消してる。
それは、軽い痴話喧嘩といった感じではない。
なのに、ナディアはカナダで働きたいからと、
スリマンを預けにくる。


別れた男に自分の息子を預けるなんて、
どの面下げてできるのかと、
そちらの方の思いが強くて、
どうしても感情移入できない。
背に腹は代えられないって事?(笑)


ヤンだって迷惑そうだ。
あの喧嘩がなかったら、
もう少し納得できただろうに、
本当に残念。


そもそも、ヤンの計画が見切り発車で、
危険すぎる。
金も無いのに、廃屋を買い取り、
レストランを開業って、
どんだけ無謀なの。


多重債務者となって、
レストランを手放すようにと、
何度も厳しく勧告されているのに、
どうしても出来ないというのも依怙地で、
ますます借金のドツボにハマっている。


結局ヤンは、
何一つ実現できずに終わる。
そんなになるくらいなら、
レストランの開業はもう少し金を貯めてからとか、
何らかの方法があったと思うのだけれど。


ただ、世の中には、
似たような状況の中、
なんとか上手くやって、
成功する実業家もいなくはないのも知っている。
ある意味、成功と失敗は紙一重で、
あとは運と世渡りが重要なのかもしれない。


一つだけ良かったのは、
彼が一度もスリマンを捨てようとしなかった事。
預かったからにはという責任感からか、
ヤンはスリマンに、躾らしい事までするし、
その辺りは安心して観ていられる。
見どころがあるとしたら、そこかな。


まぁ、これで子供まで捨てて逃げたりしたら、
それこそ、何が言いたいのか
本当に分からない映画になってしまうけど。


移民の問題が含まれているのかもしれないけれど、
私にはそれはさほど重要ではないと感じられた。


評価 ★★★☆☆

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「アクトレス 女たちの舞台」 [映画]

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〔2014年/フランス〕


女優として大御所の域に達しているマリア・エンダース(ジュリエット・ビノシュ)は、
彼女を有名にした舞台、「マローヤのヘビ」の作者である
ヴィルヘルム・メルヒオールの死を、
列車の中で聞かされ、衝撃を受ける。


新進気鋭の演出家・クラウスから、
「マローヤのヘビ」のリメイク版に出演してほしいとの
オファーを受けたマリアだったが、
その役は、若かりし頃に演じたシグリット役ではなく、
シグリットに追いつめられ、自死する中年女・ヘレナの役だった。


シグリット役は、
現在ハリウッドで大人気の若手女優ジョアンナ(クロエ・グレース・モレッツ)が
決定していると聞かされ、
面白くない気持ちのマリア。


しかし、自分がシグリットを演じるのは、
年齢的も、どう考えても無理。
ヘレナ役を受け入れた彼女は、
マネージャーのヴァレンティン(クリステン・スチュワート)を相手に、
芝居の稽古に没頭するが・・・。





ベテラン女優・ジュリエット・ビノシュと、
若手女優・クリステン・スチュワート+クロエ・グレース・モレッツ。


単純に計算すれば3人なんだけど、
この顔ぶれに、
5人分にも6人分にも感じられる凄さ。


特に私はヴァレンティン役のクリステン・スチュワートの演技が好き。
彼女を観ていると、「滅私奉公」という言葉が浮かんでくる(笑)。
大女優・マリアのマネージャーとして、
己を捨て、マリアに尽くし、
疲れ果ててしまうヴァレンティン。


マリアは、難しい女だけれど、
でも、よくデフォルメされて描かれるような女優というほどではないと
私には感じられた。
「ま、こんなもんでしょ」って。
それでも、彼女に仕える事の大変さ。
若さを失い、うろたえる大女優の葛藤など、
若いヴァレンティンに理解できるはずもなく、
けれど、それを受け止め、宥めなくてはならない辛さ。
芸能の世界って、本当に一般とは違うと痛感する。


そのマリア。
自分がかつて演じた舞台のリメイクに出演するけれど、
その役は、過去の自分が演じた役ではない。
観ているこちらにしたら、
「それは当然でしょ」と思うけれど、
それは一般人の感覚か。
こう書いてはなんだけど、
日本で言えば、中年の女優が
セーラー服を着て、女学生を演じるようなものよ。
そういう事をすると、かえって老いが目立つと思うんだけど。


そのマリアが、
クロエ・グレース・モレッツ演じるジョアンナを
ネットで画像や動画を検索するのが可笑しい。
昔だったら、せいぜいビデオで演技をチェックするか、
さらに昔だったら、タレント名鑑(笑)を見るくらいだっただろうに、
本当に便利な世の中になったものだ。
ネットの弊害も色々言われているけれど、
ネット無しの生活になんか、戻れるわけないわね。


で、ジョアンナ。
彼女は若手でありながら、
やっている事は、もういっぱしの大女優のようだ。
男と浮名を流し、パパラッチと揉め事を起こし、
その動画がアップされる。


パパラッチに追いかけられるジョアンナと同席していた時の
マリアの表情が興味深かった。
殆ど言葉を発せず、
かといって、咎めるのとも違う、
なんとも不思議な表情のマリア。
あの時彼女は、ジョアンナの事をどう思っていたのだろう。


それにしても、すごいなぁ、パパラッチ。
ジョアンナの不倫を嗅ぎつければ、
どこからともなく湧いて出てくる。
まぁ、行き過ぎた報道や、
家族を撮るのは絶対ダメだと思うけど、
ある意味、必要悪。
彼らのおかげで、私はスターのゴシップ記事を楽しめるわけだし、
スターの方だって、追いかけられるのが分かっていても尚、
有名になりたかったわけだから、
どっちもどっちという所。


ラストに、マリアがジョアンナに放つ一言。
女優って怖いけど、
あれはある意味、
一般人でも、年下の者が年上の者を小馬鹿にする時に、
口にしてしまう言葉なのだとも思う。
それはもう、仕方がないんじゃなかろうかと、
冷静に観てしまった。


評価 ★★★☆☆

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「たそがれ酒場」 [映画]

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〔1955年/日本〕


夕暮れ時。
もうすぐ「たそがれ酒場」が開店する時間。


常連客で、みんなから先生と呼ばれている梅田(小杉勇)は、
元は有名な画家だったが、
今はパチプロとして、小金を稼いでいる。


ピアノ弾きの老人・江藤(小野比呂志)の伴奏に合わせて、
歌手志望の青年・健一(宮原卓也)が歌っている。
ウエイトレスのユキ(野添ひとみ)も、
ピアノに合せて一曲歌う。


元軍人の男、
大学の講師と生徒たち、
愚連隊・・・さまざまな人間で酒場は満員。


客の中に、大きな歌劇団の団長・中小路がいて、
健一の歌声に惚れ込み、
スカウトしてきた。
大きなチャンス。
しかしなぜか江藤は、
その話を頑なに反対する・・・。





神保町シアターで観た。
野添ひとみさんが出ているからというのが理由。


開店から閉店までの酒場の中で起こる
様々な出来事を、
酒場から一歩の外に出る事なく
描いた映画。
これが、いわゆる「グランドホテル形式」というのだろう。


とにかく次から次へと、
スター俳優が現れる。
よーく顔を見て、
「あ!」と気付いたのが、
丹波哲郎と宇津井健。
若すぎて、すぐには分からんかった(笑)。


スターも現れるけど、
事件も起こる。
一晩でこんなに事件が起こる酒場なら、
行ってみたいと思うくらい(笑)。


一つ一つのエピソードは、
それほど掘り下げられるわけではなく、
なんとなく時間が過ぎてゆく。
まぁ、全体を俯瞰して眺めるような映画だから、
当然といえば当然かも。
全員が、酒場の客と従業員でしかないのだから。


この中で、出色なのは、
梅田役の小杉勇さん。


こういう初老の男性ってたまにいる。
人生の何もかもを知り尽くして、
優しくて、達観していて、
枯れているわけじゃないけど、ギラギラしているわけでもなくて、
とにかく素敵な人。


この梅田が、
江藤に、「健一を歌劇団に入れてやってくれ」と説得する場面は、
静かだけれど、圧巻。
何の反論もできないその内容に聞き入った。


評価 ★★★★☆

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「私は負けない」 [映画]

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〔1966年/日本〕


ラピュタ阿佐ヶ谷で観た。


先週くらいから、来年の1月くらいまで、
面白そうな新作映画が沢山上映される上に、
名画座でも、私の好きそうな作品が目白押しで、
嬉しくてウキウキする♪


劇場で観る映画は、
月にいくらまでと、
なんとなくだけど、上限を決めているのに、
(決めておかないと、際限がなくなってしまう(笑))
この先3ヶ月は、完全にオーバーしそう。


まぁ、いいや。
楽しい事はお金には代えられない。
それより、貴重な古い映画を観ない方が、
私にとっての大損失よ。
映画は一期一会。
見逃せば、またいつお目にかかれるか分からない。
絶対後悔する。
1日3本でも4本でも、観まくってやるぞ(笑)。


(神保町シアターやラピュタ阿佐ヶ谷や角川シネマ新宿は、
1日4本が基本です。
ラピュタでは、それに加えてモーニングショーとレイトショーがあり、
1日6本観る強者がいると、館員さんが仰っていました。
私も4本はよくありますが、
さすがに6本を体験した事はないです(笑)。
すごいです。尊敬します)。


-------


体が弱く、田舎の祖母に育てられた小野有子(安田道代)は、
高校の卒業式を迎え、
明日から、大阪の両親の家に行く事が決まっていたが、
祖母から意外な事実を聞く。
有子は、父と愛人との間に出来た子で、
大阪の母は、父の本妻なのだ、と。


大阪の家に着くと、
父の妻は、有子の個室を物置と決め、
家政婦と一緒に働けと言う。
義理の姉と兄は、有子を完全無視。
ただ、末っ子の弟とお手伝いさんは
彼女の味方になってくれそうだ。


有子は父に、なぜ母と恋愛関係になったのかを
尋ねた。
父は、「妻とは政略結婚で、そこに愛は無かった。
お前の母だけが、私が愛した唯一の人だ」と言う。


ある日、家で開かれたパーティで、
有子は、広岡という青年と知り合う。
広岡は、この家の娘なのに家政婦のように働く有子に好感を持ち、
結婚を考えるようになるが、
広岡に思いを寄せていた姉は激怒、
有子は家を出る事になる。


有子は、今は行方が分からない
母に会いたいと強く願う。
そんな彼女の気持ちに、
高校時代の担任教師も協力するが・・・。





この映画、
若尾文子さんのあの名作、「青空娘」のリメイクなのだそうだ。
それを知った時はビックリ。
あの映画がリメイクされているなんて、
全然知らなかったから。


お話は、「青空娘」とほぼ同じ。
田舎から出てきた女の子が、
義理母や義理姉にいじめられながらも、
明るさを失わず、
健気に幸せを掴んでゆく、という流れ。


どう考えても、
「シンデレラ」をベースにしたとしか思えないけれど、
原作は源氏鶏太さんだという事だ。


「青空娘」を初めて観た時に思った事だけれど、
有子は、
担任の先生と、金持ちの御曹司である広岡との、
どちらを選ぶのだろうと、とても興味深かった。


結末で、
「なるほど、そっちをね」と思ったけれど、
ここには書かない。
(ファンのかた以外には、
本当にどーでもいい事なのでしょうが、一応(笑))


評価 ★★★☆☆

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「パリ空港の人々」 [映画]

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〔1993年/仏〕


中年男・ジャン・ロシュフォールは、
カナダからパリ行きの飛行機に乗る直前、
パスポートや財布の入った手荷物から靴まで、全て盗まれてしまい、
しかし、故郷のパリに帰ればなんとかなるだろうと、
警察にも届けず、飛行機に乗ってしまう。


しかし、パリ空港の入国管理局は、
パスポートのない人間の入国は認めず、
トランジットゾーンで過ごす事になってしまう。


彼の身元が証明されればいいのだが、
なにせロシュフォールは、
パリのカナダの二重国籍の上、
イタリア在住、
妻はスペイン人という複雑さ。
さらに、時は大みそか。
事務手続きは手間取り、
当分、外に出られそうにもない。


そんな彼に、黒人の少年・イスマイラ・メイテが
声を掛けてきた。
メイテに連れていかれたのは、
なにやら、数人の人が住んでいる部屋。
そこには、国籍のない男2人女1人が暮らしており、
もう何ヶ月も、放置されたままなのだと言う。


仕方なく、彼らと行動を共にする事にしたロシュフォールは、
空港内でさまざまな体験をし、
また、こっそり外に抜け出して、
みんなでパリ見物をしゃれ込む・・・。





トム・ハンクス主演の「ターミナル」も、
この映画と似たような設定だったけれど、
どちらが先に作られたのだろうと思い、
観終わってから調べてみた。


「ターミナル」が2004年だから、
こちらの方が、11年も前の映画だ。
話に無理があった「ターミナル」に比べて、
(ハンクス以外の、彼の同国人は一体どうなったのかいう疑問)
空港に留まざるを得なくなった主人公の理由が自然で、
話に入ってゆきやすい。


まず、
もし自分がジャン・ロシュフォールの立場だったら、
それだけ不安になるだろうと考えてしまう。
ロシュフォールは旅慣れていそうだからいいけど、
飛行場というだけで気後れしてしまう私だったら、
あまりの不安に泣いてしまうかも(笑)


あんな風に、空港に住みついている人たちって、
本当にいるんだろうか。
どこの国の人間でもない自分って、
どんな感じなんだろう。
一生外に出られないかもしれない自分を不幸に思うのか、
でも、空港での暮らしも意外と悪くはなさそうで、
生きてさえいけるのならいい!と、
腹くくるのか。


彼らが案外簡単に外に出られるのも笑える。
確かに空港は刑務所ではないのだから、
何とかすれば出られるというのは分かる。
メンバーの中の女性は、
パリで数か月暮らした事があると言う。
でも、不法滞在がバレて、
空港に連れ戻されたんだとか。


そんな暮らしも悪くないかも(笑)。
出たり入ったりを繰り返しているうちに、
年なんかすぐ取っちゃうものよ。
それに、どこへ行っても戻れる場所があるって思えるのは、
案外心強い(笑)。


ロシュフォールが、
飄々としているところがいい。
最初は早く空港から出る事を考えていた彼が、
数日、空港友達(笑)と過ごすうちに、
情が湧いてきて、離れがたくなってゆくのが切ない。


彼の写真がFAXで届いて、
本人確認できたら出られると、最初に言われるのだけれど、
送られてきたのは、
なんと、すんごく若い頃の写真。
それがめちゃくちゃハンサムで、
今の彼とは似ても似つかなくて、
これでは本人確認できないと言われてて笑った。


評価 ★★★★☆

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