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◆やまいだれの歌◆ [本]


(やまいだれ)の歌

(やまいだれ)の歌

  • 作者: 西村 賢太
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/07/31
  • メディア: 単行本


西村賢太氏の新刊。
発売日に買ってしまった。
少し待てば、安く買える気もしたけど、
我慢できんかった(笑)。


西村氏にとって、初めての長編小説。
例によって、主人公は北町貫多。
貫多が主人公の小説は、
30代に同棲していた、
秋恵さんとの話が多かったけれど、
これは彼が19歳の時の物語。
「苦役列車」の少しあとのようだ。


ほぼ私小説しか書かない西村氏なので、
彼の本が大好きな私は、
彼の人生について、
ある程度知った気になっていたので、
この本のような、
今まで聞いた事のなかった物語がある事に驚いた。


19歳の貫多は、
心機一転、今まで住んでいた東京を離れ、
横浜の地にやって来る。
そして造園会社での仕事に就く。


最初は、腰掛けのつもりで入った会社だったけれど、
想像以上の、
アットホームで温かな会社の雰囲気に、
屈折した貫多の心も柔らかくなり、
一日も休まずに通うようになる。
また、貫多のあとから入った、
事務の女の子・佐由加に、熱烈な片思いをするようにもなり、
会社に行くのが楽しみにさえなってゆく。


けれど、貫多だもんなぁ、
そのままで済むわけないよなぁ、と考えながら
読み進めてゆくと、
案の定・・・。



あーあ。
「困ったなぁ、困った人だなぁ」という言葉が、
自然に頭に浮かんでくる。
なんでこの人は、こうなっちゃうかなぁ。


そして、そんな彼に、
職場の人たちがした、ある出来事。
それはもう、相当に貫多の心にも、今後の人生にも、
相当なダメージを与えたのは必至で、
読んでいるこちらも辛い。


ただ、この物語が、
貫多の目線で描かれているため、
なぜ彼がそんな目に遭わされたのか、
ハッキリとした理由は分からない。
きっと職場の人たちにも、言い分は山のようにあるのだろう。


一つだけ。


男同士の付き合いについては、
私にはよく分からないけれど、
女の子へのアピールの仕方は、
決定的に間違ってるよ、貫多くん(笑)。


あれじゃあ、女は、
男に惚れるどころか、ドン引きだ。
力を示す場所を完全に間違えてる。
特に、居酒屋で、
店員さんに居丈高な態度で、
お料理を注文する男など、
最低の最低。
それを、「強くてカッコいい俺」とでも思っているような様子が、
痛くてたまらない。


こんなんばかりの西村氏の小説だけれど、
私はきっと、
生涯、彼の本を追いかけてゆくだろうと思う。
もう次の本が楽しみになっている。
なんだろうな、これは。
前にも書いたけど、
「西村賢太病」に罹っているとしか言いようがないのよ(笑)。

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