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「美女と野獣」 [映画]

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〔1946年/フランス〕


3人姉妹の末っ子ベル(ジョゼット・デイ)は、
姉たちから召使いのようにこき使われ、
いじめられる日常であったが、
健気に生きていた。


商人である父が仕事で旅立つ時、
ベルは土産に薔薇の花を所望する。
しかし父は旅の途中、道に迷い、
荒れた城に入り込んでしまう。


ベルとの約束の為、庭に咲いていた薔薇を手折った所、
目の前に恐ろしい野獣が現れ、
「薔薇は自分にとって大切な物。
それを手折ったお前の命はない。
しかし、お前の娘を差し出せば助けてやろう」と言われてまう。


家に帰った父から事情を聞いたベルは、
一人、野獣の城に赴く。
恐ろしい容貌をした野獣だったが、
その性格は思いの外優しく、
ベルは次第に野獣に惹かれていく。


しかし、魔法の鏡で、
父が病気で臥せっている事を知ったベルは、
一週間だけ帰らせてほしいと、
野獣に願い出る・・・。





映画と舞台のどちらが好きかと尋ねられたとしたら、
もう絶対、映画と答えてしまう私だけれど、
舞台を観て泣いた唯一の作品が、
劇団四季の「美女と野獣」で、
なので、この物語にはなんとなく思い入れがある。


監督はジャン・コクトー。
古い映画なので、突っ込み所も多いけれど、
雰囲気はとても良い。
特に野獣の城。


野獣の城にある調度品の殆どが、
人間の体でできている。
銅像の目は動くし、
燭台は手が蝋燭を握っている。
それが不気味といえば不気味なんだけど、
なんかいいのよね。


野獣の城でのベルが、
ドレスやアクセサリーをとっかえひっかえなのが、
わたし的には受けた(笑)。
最初は理由が分からなくて、
「どこにそんなお洋服が!?」と思って観ていた。
不思議な魔力のある野獣には、
ベルのドレスを用意する事くらい簡単なんだろうけど。


ベルを演じるジョゼット・デイという女優さんの顔立ちが、
意外にキツくて、
姉たちにいじめられたり、
父の為に自分を犠牲にするようには、
ちょっと見えない所も可笑しい。
あなたはそんなナヨナヨしたキャラじゃないのでは?って(笑)。


野獣の造形も、
思っていたより怖くない(笑)。
愛嬌さえ感じてしまう。
野獣という言葉のせいか、
ディズニーアニメのイメージのせいか、
なにかこう、とても大きな人を想像していたけれど、
この映画の彼は、そこまでガタイは良くない。
それに意外と気が弱い。


ラストは誰でも想像が付くオチだけれど、
一つだけ、
「なぜそんな必要が?」と思う事があった。
そんな設定にする意味が分からなくて(笑)。


評価 ★★★★☆

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「リリー」 [映画]

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〔1953年/アメリカ〕


父を亡くした16歳のリリー(レスリー・キャロン)は、
父の友人を頼って、
フランスのある町にやって来る。


しかし、その友人も既に亡くなっていた。
途方に暮れる彼女だが、
カーニバルの一座に拾われ、
ウェイトレスの仕事に就く。


マジシャンのマーク(ジャン・ピエール・オーモン)に
恋をしてしまった彼女は、
仕事が手につかず、
危うくクビになりかけるが、
人形芝居小屋の人形に慰められる。


以来リリーは、人形との掛け合いで芝居をする事になり、
人気を得てゆく。
裏で人形を動かしているポール(メル・ファーラー)は、
次第にリリーを愛するようになるが、
戦争が原因で片足が不自由な彼は、
自分の気持ちを打ち明けられず、
リリーは彼を、“怖い人”としか見られずにいた。


ある日、マークは、
大きなホテルのショーに引き抜かれ、
カーニバル一座を去っていった。
しかも彼は既婚者だった事が判明。
ショックを受けたリリーは、
カーニバルを飛び出すが・・・。





レスリー・キャロンって、
面白い女優だなぁと思う。
彼女の作品は数本観ただけだから、
分かったような事は言えないけど、
なんというか、
大抵の西洋人から感じられるような
色気というものが全然無い。


この映画にしても、
16歳(実年齢は22歳)の女の子にしては、
幼い印象。
(もっと年を重ねてからの映画は、
大人な彼女が描かれているのだろうか)


でも、そこが良いのでしょうね。
彼女はこの映画で、
アカデミー賞にノミネートされ、
イギリスでは主演女優賞を獲ったそうだ。


恋していた男が、
実は不誠実で、
ぶっきらぼうだった男が、
実はいい人だったというのは、
よくあるお話だけれど、
そこに人形を絡めて、
可愛く作られている。


さらには、ラスト、
人形が人間になって、
リリーと踊り出すという、
ミュージカルっぽい作り。


観終われば、
心清らかになる(なった気がする?(笑))映画。


評価 ★★★☆☆

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「探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点」 [映画]

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〔2013年/日本〕


アジア最北端の大歓楽街・札幌はススキノ。
探偵(大泉洋)行きつけのゲイバーでは、
皆から愛されるオカマのマサコちゃん(ゴリ)が、
今日も手品を披露。


手品を始めた頃の彼女は、
手元も覚束なかったが、
腕前はめきめき上達し、
探偵たちから、テレビのマジックショーに出ろと勧められ、
本当に全国大会にまで勝ち進んでゆく。


しかし、喜んだのも束の間。
マサコちゃんは祝賀会の2日後、殺され、
ゴミのように捨てられているのが発見される。


犯人探しに乗り出した探偵とその助手(松田龍平)だったが、
なぜか、周囲の人たちが協力しなくなる。
マサコちゃんは、
現在、大人気の若き政治家・橡脇(渡部篤郎)と、
恋愛関係にあったらしい事が判明。
そちらからの圧力が掛かったらしい。


そんな中、人気ヴァイオリニスト弓子(尾野真千子)が、
マサコちゃん殺しの犯人をどうしても探してほしいと依頼してくる・・・。





シリーズ2作目。
私は前作より好きかも。


相変わらずの、大泉洋の、
すっとぼけっぷりと、
熱血漢っぷりが同居しているような、
人間像が笑える。


それに対して、松田龍平。
彼は絶対に、急がない、慌てない(笑)。
達観してるんだか、鈍いんだかよく分からないキャラで、
それでも大泉とはいいコンビ。


ゴリが演じる、心優しいオカマ・マサコちゃんが、
とっても可愛いと同時に、
なんとも言えない、哀しみをたたえているような気がして、
切なくなる。
始まって、割とすぐに殺されてしまうのだけれど、
もっと彼女の姿を見ていたかった。


渡部篤郎扮する、若き政治家の有り方は、
今の日本を表していると言っていい。
何せ、彼が猛烈に推進しているのが、「脱原発」。
ものすごく嫌な言い方だと承知で書けば、
「流行り」とも言えるこのスローガンを大きく掲げ、
彼は市民から絶大な人気を得ている。
(政治家にしてはスマートでハンサムというのも、
人気の理由な気がするが(笑))


そんな彼が両刀使いってのは、
やっぱりマズいのかと思ったけれど、
マズいんだろうね、やっぱり。
女絡みの醜聞ならともかく、
男絡みってのは、シャレにならないんだろう。


と、思ったいたら・・・・・・、
まぁ、色々ある(笑)。
え!?そんなオチ?って展開。
それをも含めて、楽しめばいいんだけど。


評価 ★★★☆☆

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「アルゼンチンババア」 [映画]

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〔2007年/日本〕


小学生のみつこの住む街の、
一番はずれの場所に建つ、
異国風の建物。
そこには、みんなから、
アルゼンチンババア(鈴木京香)と呼ばれる女の人が住んでいて、
街で彼女の姿を見かけた時、
みつこや友達は、
理由はないけど、いつも走って逃げていた。


それから数年後。
高校生になったみつこ(堀北真希)は、
大好きな母を病気で亡くした。
家族の誰よりも元気で、明るかった母が急にいなくなった。


けれど、みつこは悲しむ暇もなかった。
なぜなら、
みつこより、父(役所広司)の方のショックが大きく、
行方知れずになってしまったのだ。
おかげで、葬儀の手配まで、
全てみつこが取り仕切るハメになる。


父が姿を消して半年。
鰻屋のおやじ(岸部一徳)が、
驚くべき情報を持ってきた。
なんと父は、
アルゼンチンババアの家で暮らしているようだ、と。


仰天したみつこはアルゼンチンババアの
家を訪ねるが・・・。





よしもとばななの原作は読んでいる。


街の外れに住む、
得体の知れない女の人、
“アルゼンチンババア”。


よりにもよって、
父がそんな人と出来上がってしまうなんて、
(しかも母の死の直後に!)
みつこじゃなくたって、
そりゃあ、ショックだろう。


まぁ、それは、
父の為にショックというより、
多分に、外聞が悪いというのがあるんだろうけど。
だって、父のババアの同棲を知った途端、
周囲の人たちは、
その噂でもちきりだもの。


けれど、実際会ったアルゼンチンババアは、
とってもいい人で、
観ていて、心が和む。
妻を失った父の、
心の支えになってくれてるのが分かる。


彼女はとても寛容で、
あらゆる事を受け入れているように見えるのだけれど、
それにはちゃんと理由がある。
彼女には、日本人には体験できないような、
悲しい過去がある。


話自体は緩いし、
深みもないけど、
堀北真希の真っ直ぐな様子と、
鈴木京香の雰囲気のある役作りで、
最後までのんびり観てしまう。


一つ疑問。
アルゼンチンババアのおうちは、
誰が訪ねても、
「臭い」と言うのだけれど、
その異臭の元は何なのだろう。
明確な説明がなくて。


それから、
おうちの周囲は、
自転車では走れないくらい、
雑草が茂っているのだけれど、
どこまでがババア名義の土地なんだろうって、
もう、夢も何もない事を考えてしまった私。
あー、やだやだ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「脱出」 [映画]

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〔1972年/アメリカ〕


ジョン・ボイト、バート・レイノルズ、
ネッド・ビーティ、ロニー・コックスの4人の男たちが、
山奥の村までやって来る。


村はもうすぐダムの底に沈む運命。
特にレイノルズは、
自然を破壊する、そのような事態に怒り心頭の様子。
彼らの今回の目的は、激しい急流の美しい川が無くなってしまう前に、
カヌーで川下りをする事。


2人ずつに分かれて、
カヌーを漕ぎ出した彼らは、
1日目は順調に終える。
しかし、悪夢は翌日起こる。


休憩しようと、岸に上がったボイトとビーティが、
ライフルを持った地元のならず者2人組みに捕まったのだ。
ボイトは木に縛り付けられ、
ビーティは酷い目に遭わされる。


異変を感じたレイノルズが、
背後から男の1人を撃ち殺し、
何とか助かったが、
遺体の処理で意見が割れる。
コックスは、
「警察に届け出よう」と言うが、
レイノルズは、
「田舎の人間は全員が親戚。陪審員は全員、死んだ男の身内になる」と主張。
結局、多数決で遺体を埋める事にする・・・。





ネッド・ビーティが、
地元のならず者から受ける仕打ちに、
かなり驚いて、ショックを受ける。
これを観た方の殆どは、
他の細かい場面は忘れてしまったとしても、
その場面だけは、いつまでも強烈に覚えているんじゃないだろうか。


バート・レイノルズが、
その男を殺すわけなんだけど、
ロニー・コックスに言われるまで、
私の頭の中に、
「自首」なんて言葉が一つも浮かばなかった事に
自分で気付いて驚いた。


いつもなら、
「正当防衛なんだから、ちゃんと警察に説明して」と思う所なんだけど、
なんだか、殺された男があまりにも酷くて。
もうすぐ、そこら一帯がダムの底に沈むっていうのも、
頭の片隅にあるからだろうけど、
遺体をなんとか処分しなくちゃと、そればかり考えていた。


その後の展開に派手さはないけど、
夢中になって観てしまう。
追い詰められるような気持ちになる。
大げさなアクションや、銃撃戦がなくても、
映画は見せ方一つなんだなぁ、と思う。


地味な映画だけど、
きっと私は、このラストを忘れないと思う。
今後、「正当防衛」とか「完全犯罪」なんて事を見聞きする度に、
この映画を思い出すような気がする。


評価 ★★★★☆

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