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◆さらば、夏の光よ◆ [本]


さらば、夏の光よ (講談社文庫)

さらば、夏の光よ (講談社文庫)

  • 作者: 遠藤周作
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/12/13
  • メディア: Kindle版


昨日、感想を書いた、
映画、「さらば夏の光よ」。


映画と、原作のストーリーが
まるで違う、と書いたけれど、
気になって、
読み返してみた。


やっぱり違う。


昨日書いた事とかぶってしまうけど、
小説は、
遠藤周作さんが講師をする短大の生徒、
南条、
野呂、
京子の
悲しい物語だ。


南条はそれなりにイケメンのようで、
片思いしていた京子と、
遠藤先生や、野呂の協力もあって、
晴れて、恋人同士となる。


それに対して、野呂は、
女生徒から、陰で、
「ノロマの野呂さん」と言われるような、
冴えない学生。


でも、野呂も、
実は京子が好きなのだ。
そして、そんな気持ちは
おくびにも出さず、
南条の恋を応援する。


京子が、結婚前に、南条の子を妊娠する。
この時代、結婚前に妊娠するなど、
良家の子女には有り得ないことで、
京子の父親は激昂するが、
それでも、なんとか、
南条と京子は婚約する。


物語の本筋はここからだ。


幸せの絶頂にいる南条と京子だったが、
南条が交通事故で死んでしまうのだ。


すると、何という事か。
野呂が、京子の家にやって来て、
京子とお腹の子を、
丸ごと引き受ける、と京子の両親に突然言う。


京子の両親は、
「地獄に仏」と言わんばかりに、
野呂からの申し出に飛びつき、
京子の意思とは無関係に話を進め、
京子は野呂の妻になる。


結婚生活がスタートするけれど、
けれど、どうしても無理だった。
「ノロマな野呂さん」と、
夫婦となっても、
京子は、生理的に彼を受け付ける事ができず、
苦しみ抜く。
野呂の優しさは
京子を救うどころか、
追い込んでゆくだけ。


難しい問題だ。
野呂の愛は、
自己犠牲なのか。
それとも、
自己満足なのか。


結果論だけで言うと、
自己満足という事になる。
だって、京子は最悪の結果を迎える。
野呂さえいなければ、
京子は、シングルマザーとして、
強く生きていったのではないか。


野呂が、
京子と一切関わる事なく、
放っておいてくれたら、と、
思わずにはいられない。



-------------


映画のおかげで、
久し振りに、
この本を読んだ。


やはり、
映画と原作は全くの別物だったけど、
どちらも楽しめたし、
なにより、
本を再読する機会になって良かった。

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「さらば夏の光よ」 [映画]

sarabanatsunohikariyo.jpg
〔1976年/日本〕


南条宏(郷ひろみ)と、野呂文平(川口厚)は、
同じ予備校に通う友達同士。
イケメンの南条と、
地味な野呂は、
一見、合わなそうに見えたが、
仲が良く、
同じ部屋で暮らしている。


2人は、ハンバーガーショップで働く、
戸田京子(秋吉久美子)に、
同時に恋するが、
京子は、南条に心惹かれる。


しかし、野呂の気持ちを知った南条は、
京子を野呂に譲り、
2人は同棲するようになる。


ほどなくして、京子は妊娠。
ハンバーガーショップを辞める事を、
店に告げに行くと、
店長から凌辱されそうになってしまう。


怒った野呂は、
店長に大怪我をさせてしまう。
すると南条が、
身代わりとなって自首し・・・





この映画、
何も考えずに、単体で観たら、
悪くないと思う。


2人の青年と、1人の女の子が紡ぐ、
愛と友情の物語。
アイドル映画にしては良く出来ている。
ネット上の評価も、
悪くない。


うーん、でも、
私には、かなりの違和感。


この映画の原作は、
遠藤周作さんの同名小説だ。


私はその本が好きで好きで、
何度読み返したか分からないくらい好きで。


登場人物は同じ。
南条、野呂、京子。
3人の微妙な三角関数も同じ。


でも、展開がまっっったく違う。
小説で、愛し合うのは、
南条と京子で、
京子は南条の子を身ごもる。


けれど、彼は事故で亡くなり、
野呂は、京子とお腹の子を丸ごと
そのまま引き取るという形で
結婚する。


この物語の肝は、
野呂の自己犠牲と、
京子への純粋な愛。
実に遠藤周作さんらしい、
哀しみに満ちた物語なのだ。


こんな風に、
まるで違うストーリーにされて、
遠藤周作さんが何も言わなかったのかと思うけど、
懐深い遠藤さんの事、
「そんなものさ」と笑っておられたのかもしれない。


何度も言うけど、
映画としては悪くない。
ただ、
遠藤さんの原作をご存じの方は、
きっと驚かれると思う。


評価 ★★★☆☆

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「お名前はアドルフ?」 [映画]

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〔2018年/ドイツ〕


大学教授のステファンと、その妻・エリザベトは、
エリザベトの弟・トーマスと、その妻・カロリーネ、
そして、エリザべトの幼馴染・レネを、
自宅でのディナーに招待する。


トーマスとレネが到着する。
カロリーネは、少し遅れると言う。
カロリーネは現在妊娠中で、
話題は自然に、生まれてくる子供の事になる。


トーマスは、
「お腹の子のは男の子で、名前は既に決めてある」と言う。
頭文字が「A」だというヒントをもとに、
名前当てゲームが始まり、
ステファン、エリザベト、レネは、
考え付く、ありとあらゆる
「A」で始まる名前を挙げるも、
全く当たらない。


結局、トーマスが答えを言った。
「子供の名前は、”アドルフ”だ」と。
一同が凍り付く。
ヒトラーと同じ名前を付けるなんて、
気は確かなのか・・・。





生まれてくる子供に、
ヒトラーと同じ名前を付ける、という弟に、
姉夫妻や、幼馴染が仰天するという、
コメディ。


元々、舞台劇だったそうで、
たしかに、
場面の殆どは、
家の中での会話のみ。
そして、
小ネタが可笑しくて、
途中で、クスクス笑ってしまう。


ドイツにおいて、
ヒトラーがいかにタブー視されているかを
知るのも面白い。


「A」で始まる赤ちゃんの名前当てゲームで、
大人たちは、
「アドルフ」という名前は、
想像すらしないようで、
全く出てこないし、
似た名前もないし、
「まさか、アドルフじゃないよね?」という念の為の確認もない。


そして、答えが「アドルフ」だと知った時の、
驚愕の表情ったら。
そりゃあもう大変な剣幕で、
全員が全力で猛反対する。


トーマスが、「アドルフ」に決めた理由を説明するのだけれど、
それが、どうも弱い。
皆を納得させるまでにはいかないし、
私も観ていて、
今一つよく分からない。


そんなこんなを観ながら、私は、
日本で「アドルフ」に当たる名前って、
なんだろう、と考える。


ヒロヒト、ともちょっと違う気がするし、
誰もが知るような、過去の犯罪者たちの名前も頭を過るけど、
なんか違う。
日本にはヒトラーに当る人物はいないのかもしれない。


特定の誰か、というより、
「悪魔ちゃん」と名付けようとした親が、
役所に拒否され、話題になった事を思い出したりする。


で、映画は、
「アドルフ問題」だけに収まらず、
とんでもない秘密が露呈されてゆき、
登場人物たちはさらに大騒ぎ・・・という展開。
面白かった。


評価 ★★★★☆

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「豹(ジャガー)は走った」 [映画]

jaguarhahashitta.jpg
〔1970年/日本〕


警視庁の警部・戸田登(加山雄三)は、
ある日、上司から呼び出され、
「今日を以て、警察を辞めてくれ」言われる。


東南アジア・南ネシア共和国のジャカール大統領が、
日本を経由して、アメリカに亡命する。
大統領は、暗殺者に命を狙われているので、
戸田に阻止してほしい、という命令なのだ。


一方、N物産は、
裏で、南ネシア共和国の革命軍と通じており、
大統領を殺せば、
武器の取引をするという密約を交わしていた。


かくして、N物産は、
世界を股にかけるスナイパー・九条輝彦(田宮二郎)を雇い、
大統領暗殺を企てる。


戸田と九条。
勝つのはどちらか・・・。





大変に見応えのある映画。
加山雄三と、田宮二郎。
2人のイケメン俳優の緊迫した攻防に、
手に汗握る思い。


警部の加山さんは、
ある日、突然、解雇を言い渡される。
それは、警察組織の性質上、
犯罪を犯す前の人間は、殺す事ができないため、
警察の肩書を外して、
大統領を狙っていると思われる人物は殺していい、
という理由なのだ。


一方の田宮さんは、
腕利きの殺し屋。
いわば、ゴルゴ13のような役。


この2人の配役が、
とにかく合っている。
よく、映画を観ていて、
「この2人の役柄を入れ替えても、映画は成立するな」
と思う事がよくある。
むしろ、その方が多いと言っていいかもしれない。


でも、この映画は、
絶対、入れ替えないほうがいい。


オリンピックにも出たという射撃の名手で、
真面目な警察官の加山さんと、
野卑でクール、
仕事の合間に、一夜の女性と遊ぶ暗殺者の田宮さん。
どちらの役も、似合いすぎ。


そして、2人とも、
狙撃の腕は、五分と五分。
獲物を狙う田宮さん、
それを阻止する加山さん。
ネオンの下で、
ホテルルームに向かって銃を撃つ場面など、
ドキドキが止まらない。


そして、ラストは直接対決へ。
あぁ、2人は、
互いをリスペクトし合ってるよね。
だからこそ、
あの場面が生きる。


ところで、
上司に言われ、
警察に辞表を出した加山さんだけど、


ミッションが終わったら、
絶対、また、警察に戻れるのよね?
何だかんだと言われて、
復職できない、何てことはないのよね?


つまらない事(いや、重大な事だ)が、
最後まで気になって仕方がなかった。


評価 ★★★★☆

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「怪談せむし男」 [映画]

kaidansemushiotoko1.jpg
〔1965年/日本〕


宗方芳江(楠侑子)の夫が、
精神病院で亡くなった。


夫が残した唯一の財産、
富永男爵の別荘に向かった芳江は、
女の悲鳴や、
床の血のあとに悩まされる。


屋敷には、せむしの使用人(西村晃)がおり・・・
・・・という話・・・だと思う(笑)。





世の中には、
観たくても、
ソフト化されていなかったり、
何らかの事情で、
テレビや名画座にもかけられない映画が無数にあるけれど、
これも、中々お目にかかれない1本らしい。


そんな風に聞くと、
かえって「観てみたい」という気持ちが募るけれど、
やっと先日、観る事ができた。


と言っても、
私が観たのは、
なぜか、イタリア語の吹き替えになっていて、
さらに、字幕は英語という、
国際色豊かなもの(笑)。


なんで日本の映画が、
イタリアで、そんな風に編集されてしまったのかは
分からないけど、
とりあえず観てみる。


英語の字幕が付いているので、
少し助かる。
英語ができるわけじゃないけど、
なんとなく、ニュアンスだけでも伝わるので。
もしこれが、
イタリア語の吹き替えだけだったら、
全く意味が分からなかっただろう。


とはいえ、理解したとは言い難い。
これは、
「観た映画」のリストに加えていいのだろうか。
まぁ、いいや、加えちゃう(笑)。
だって、私の人生の時間の
1時間30分を、この映画に費やした事は
間違いないのだから。


そんなこんなしていたら、
友人が、日本語版を持っている事が判明。
近く貸してくれると言うので、
もう一度観たい。
本当の意味で、
せむし男の怖さを体感したい。


評価 なし



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先日から、コメント欄の調子が悪く、
コメントを下さっても、
表示されない事があるようです。
ご迷惑をお掛けして、申し訳ありません。


様子を見るために、
2~3日、コメント欄を閉じたいと思います。
宜しくお願いします。

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