SSブログ

「デヴィッド・リンチ アートライフ」 [映画]

DAVIDLYNCH.jpg
〔2016年/アメリカ〕


試写会で観た。


ここのところ、
ちょっと忙しくて、
眠いなぁ、と思っていた所に、
この試写会。
途中で寝ちゃうかなぁと心配だった。


なにせ、デヴィッド・リンチ監督。
監督の映画は、
数えてみると、
今まで6本観ているけれど、
私が理解できた作品は、
1本もない(笑)。


いつも、観始める時は、
今回こそ頑張ろう、
最後まできっちり理解できるようにしようと
意気込むのだけれど、
途中で、
「駄目、分かんない」って。


この映画は、
私には難しいリンチ監督に密着した、
ドキュメンタリー。


もう絶対、
私のような俗人とは、
脳味噌の構造が違うであろう監督が
少しでも理解できれば、
と思ったわけだけど。


私は知らなかったけど、
監督は映画だけでなく、
日常から、
色々、芸術作品を作っているのが
アトリエ(?)の様子から分かる。


監督がアトリエで、
作品を作り出す映像に、
監督自らが語る、
これまでの人生の道のりの
ナレーションがかぶさる。


あのような映画を作る監督だから、
余程特異な幼少期を送ってきたのかと
思っていたけれど、
意外に、特別な事はなく、
幸せそうな子供時代のようだった。


「母親が、塗り絵を買い与えてくれなかったのが良かった」
というのが印象深い。
監督の聡明な母は、
監督の才能に早くから気付き、
既存の絵に色を付けるだけの塗り絵は、
この子に与えてはいけない、と考えたようだ。


両親の仲が良く、
喧嘩している場面など見た事がないという言葉からも、
立派な親に育てられたんだなぁと感じる。


現在71歳の監督が、
芸術作品を生み出している横で、
1~2歳の可愛い女の子が、
うろちょろしている。


お孫さんかと思いきや、
なんと娘さんだそうだ。


さすが監督は、
やる事すべてが規格外なのね。


評価 ★★★☆☆

nice!(61)  コメント(8) 
共通テーマ:映画

「ゴーギャン タヒチ、楽園への旅」 [映画]

Gauguin.jpg
〔2017年/フランス〕


パリ在住の画家、
ポール・ゴーギャン(ヴァンサン・カッセル)は、
新天地をタヒチに求め、
移住したいと考えるようになる。


妻と子どもたちも一緒に、と考えていたが、
家族は拒否。
仕方なく、
一人でかの地に赴く。


タヒチでの生活にも慣れた頃、
島の娘・テフラと結婚。
彼は人生を謳歌しているように見えた。


けれど、金は底を尽いた上、
テフラは、
現地の若い男と恋に落ち・・・。





試写会で観た。


フランスの画家・ゴーギャンの
タヒチでの生活を描いた映画。


ゴーギャンという人の事は、
名前くらいしか知らないし、
絵も、見たことがあるという程度。


でも、ゴーギャンの、というより、
単身、南の島に渡った男の、
浮かれた出だしから、
挫折までの物語、と思うと面白い。


何といっても、
メインは、ゴーギャンとテフラの結婚であろう。


家族にタヒチ移住を拒否され、
失意のゴーギャンにとって、
テフラとの出会いはまるで奇跡。


何せ、彼女は、
めっちゃ若い上に、
とっても可愛い。
くたびれた嫁なんか、
連れてこなくて良かった、てなもんである(笑)。


2人は最初は、熱々だ。
ゴーギャンは若いテフラに夢中だし、
テフラは、白人で年上のゴーギャンに
頼り切っているように見える。


でも、やっぱり上手くはいかないんだな。
解説には、
「ゴーギャンに金が無いせいで」と書かれてあるけど、
私はそれより、
やっぱり二人は合わないんだと思った。


テフラは、同じタヒチ人の、
若いイケメンに惹かれ、
密かに逢引するようになる。
同じ生まれ育ちの、同世代の相手の方が、
絶対気が合う、って感じで。


それに嫉妬したゴーギャンが凄い。
テフラを連れて、
離れた場所に引っ越したうえに、
自分が出掛ける時は、
外から鍵をかけ、外出できないようにする。
それって、監禁じゃん。
なにか、ゾッとするような場面。


ラストのテロップによると、
その後、フランスに帰ったゴーギャンは、
再度、タヒチに渡ったけれど、
テフラと会う事はなかったという。


なんか、分かるな。
2人の間には、
「もう一度会いたい」と思うほどの、
強い絆は感じられなかったから。


※ここまで書いて、
 ウィキペディアで調べてみたら、
 なんとテフラは13歳だったそうだ。
 タヒチの文化が分からないので、
 余計な事は言えないけど、
 なんかちょっとビックリ。


評価 ★★★☆☆

nice!(70)  コメント(12) 
共通テーマ:映画

「千姫御殿」 [映画]

senhimegoten.jpg
〔1960年/日本〕


大阪落城の際、救い出された千姫(山本富士子)は、
吉田御殿に籠り、
遊興の限りを尽くしていた。


彼女が御殿に引き入れて、
関係した男は全て、
近所の沼に遺体として浮かんだ。


そんな吉田御殿に、
若侍・田原喜八郎(本郷功次郎)が
送り込まれた。
喜八郎が千姫の行状を探るうちに、
どうやら、千姫には、
何の非もないことが分かってくる。


では、千姫に関わる男を殺しているのは
一体誰なんだ・・・。





うん、なかなか面白い。
お話のテイストが、
どんどん変わってゆく。


最初は、女だてらに、
淫蕩の限りを尽くし、
「男狂い」と噂される
千姫の物語だと、
観ている誰もが思うのよ。


貞淑な役の多い、
山本富士子さんが、
凄い映画に出たもんだな、って。


でも、観ているうちに、あれ?と思うようになって、
そこからは、
サスペンスな流れに。


どうやら千姫は男狂いでも何でもない、
ちょっと高飛車なだけの姫だと分かり、
そうなると、
誰が何の理由で、千姫を陥れるために、
人を殺しているのか、って。
まぁ、その人物は、
映画を観ていれば、誰だかすぐ分かるようになっているのだけれど。


で、その犯人が片付いて、
次は恋愛物な方向へ。


本当は純情な千姫と、
本郷功次郎演じる若侍・喜八郎は、
本気で愛し合うようになるのだけれど、
喜八郎は、
自分が隠密な事を言い出せず、
苦しむ。


初めて愛を知った千姫と喜八郎が
可愛くて、幸せそうで、
二人で舞を舞う様子なども、
息もピッタリで素晴らしい。
ハッピーエンドになってほしいと
本気で思っちゃった。


中村玉緒さんが重要な役で出てくる。
若い頃の玉緒さんって、
本当に可愛い。
健気な女を演じていて、良かった。


それから、玉緒さんの実のお父さんの
中村鴈治郎も出演されている。
ちょっと残念だったのは、
徳川家康の役だったので、
飄々とした鴈治郎さんの
いつもの関西弁が聞けなかった事。
鴈治郎さんの関西弁が
私はとっても好きで。


評価 ★★★★☆

nice!(60)  コメント(4) 
共通テーマ:映画

「彼女が目覚めるその日まで」 [映画]

kanojogamezamerusonohimade.jpg
〔2017年/アメリカ〕


憧れだったニューヨーク・ポスト誌に就職し、
仕事も恋愛も順調な21歳の
スザンナ・キャハラン(クロエ・グレース・モレッツ)。


ところが、ある日、
体の不調を感じたスザンナ。
風邪だと思っていた
その症状は、悪くなるばかりで、
ついに、仕事で大失態を犯してしまう。


心配した両親は、
スザンナを入院させ、
あらゆる検査を受けさせるも、
原因が分からない。


医者は、
精神に異常があるのでは、と、
精神病院への転院を勧めるが、
何か別に原因があるはずだと、
両親はそれを拒み・・・。





実話だそうだ。


クロエ・グレース・モレッツが、
原因不明の病に倒れてから、
回復するまでを演じている。


先日、試写会で観た、
「8年越しの花嫁」に似てるな、と思っていたら、

http://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/2017-11-14


本作も、「8年越し~」も、
主人公が罹ったのは、
同じ“抗NMDA受容体脳炎”という病気で、
しかも、この2作の映画の公開日が、
共に昨年の12月16日だという。


偶然なのか、合わせたのかは分からないけれど、
そんな事もあるんだなぁと、
ちょっと面白く思った。
まぁ、どちらもモデルとなった女性が、
現在、お元気だから、
そんな風に言えるんだろうけど。


クロエが演じるスザンナの症状は、
まるで悪魔が取りついたようで、
ホラー映画だと言われたら、
納得してしまいそうな恐ろしさ。


実際、まだ医学が進歩していなかった昔だったら、
このような状態になった人は皆、
「悪魔が取りついた」と、
病院より、教会に連れていかれたんだろうなぁと
想像する。


いや、こんな現代だって、
国や地域によっては、
悪魔云々と診断されてしまう場合もあるようだし。

http://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/2017-11-04


スザンナのためにも、
そして、彼女のあとに
同じ病気に罹った人のためにも、
原因が分かって本当に良かった。


それもこれも、
スザンナは精神病ではないと
信じて戦った両親と、
本気で原因を探ろうとしてくれた
一人の医者のおかげだ。


彼らがいなかったら、
スザンナは精神病患者として、
本来の病気と全く関係のない薬を飲まされ、
とんでもなく別の方向に行ってしまっていただろう。


医学は、こんな風にして、
少しずつ進歩してゆくのだろう。
ありがたい事です。


評価 ★★★☆☆

nice!(57)  コメント(6) 
共通テーマ:映画

「希望のかなた」 [映画]

kibounokanata.jpg
〔2017年/フィンランド〕


フィンランドの首都・ヘルシンキの港に着いた船の、
石炭の中から、
煤で真っ黒になった青年が出てくる。


彼は、シリアからの難民・カーリド。
激化する内戦で妹以外の家族全員を失い、
ハンガリーの国境では、
妹ともはぐれてしまった。


一方、フィンランドで暮らす
中年男・ヴィクストロムは、
酒浸りの妻と別れ、
仕事も辞め、
心機一転、レストランを開店する。


難民申請を却下されたカーリドは、
強制送還される寸前、逃げ出し、
ヴィクストロムの店で働きながら、
妹からの連絡を待つ事にする。


そんなカーリドに、
近所のネオナチの3人組が目を付け、
彼を見かける度に暴力を振るい・・・。





もう、これ、
1億2千万人の日本人、
全員が観た方がいいんじゃないのか(笑)。


・・・と思うくらい、
ある場面が可笑しくて、
劇場の皆さん全員が、
スクリーンに反応しているのが分かる。


というのも、
ヴィクストロムの経営するレストランの業績が
イマイチ振るわず、
ヴィクトロスと従業員たちは、
今、巷で流行っているらしい、
「スシ」というものを店で出そうと決める。


しかし、どうやら彼らは、
「スシ」の名前は聞いた事があっても、
見た事も、食べた事もないらしく、
日本文化の本を沢山買い込んで、
それらしいものを作る。


その、出来上がったものが、
日本人なら全員が、呆気にとられるような代物で(笑)。


看板につられて、
店は、日本人の客で満員になるけれど、
次のシーンで、
全員が無言で出て行くという、
シュールさ(笑)。


あぁ、本当に、その場面だけでも、
皆様に観てほしい。


可笑しいといえば、
このポスターにしても、
ヴィクストロムとカーリドが殴り合った直後の写真で、
二人の鼻に、
鼻血止めのティッシュが詰まってるし(笑)。


アキ・カウリスマキ監督の映画を観たのは
数本だけなので、
分かったような事は言えないのだけれど、
この言いようのない笑いの感覚は、
監督の他の映画同様、
まったくブレていない。
さすが、フィンランド映画の巨匠と言われている
だけの事はある。


本当は、
難民問題、雇用問題、
ネオナチの問題、
夫婦の問題など、
様々なテーマが盛り込まれているのだけれど、
遠いフィンランドの事、
日本人の私が口出しするには、
状況が違い過ぎる。


日々、ニュースを見てると、
「私って、純血主義者なんだなぁ」と、
(純潔主義者とは違う(笑))
思い知る事が多々あるのだけれど、
それだって、日本が島国で、
今までの歴史、
鎖国や、戦争や、近隣諸国との複雑な関係などが
あるから、
そういった思想に至ったという部分もあると思われるわけで。


国の事情は、それぞれ全て違う。
国と国とが陸続きになっているヨーロッパは、
日本とは根本的に精神構造が違っているのだろうなぁ。


評価 ★★★☆☆

nice!(63)  コメント(8) 
共通テーマ:映画