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「地獄花」 [映画]

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〔1957年/日本〕


平安時代。
琵琶湖に近い高原地帯で、
貴族の一行が、
二組の盗賊、
「麿の党」と「御坊派」に襲われる。


姫君が捕らえられ、
「御坊派」の頭・馬介(山村聡)が連れて行こうとするが、
それを見ていた「麿の党」のステ(京マチ子)は、
姫を可哀想に思い、
馬介に、
「後日、何でも望むものをあげるから、姫を譲ってほしい」と言い、
もらい受ける。


姫を都に逃がした数日後、
馬介がステを訪ねてきた。
「望むものをいただきにきた」と言う馬介は、
ステに襲い掛かった。


数か月後、ステは懐妊している事に気が付いた。
ステの夫で、「麿の党」の頭・袴野は
狂喜乱舞するが、
腹の子が、馬介の子だと知り、
怒り狂って、ステを追い出した。


山中で死のうとしているステを
袴野の手下・勝(鶴田浩二)が助けた。
勝の家で暮らすようになったステは、
可愛い男の子を生んだ。
しかし、ある日、袴野がやって来て・・・。





これはいい。
私好み。
特にラストが好き。
やっぱり大映の映画はいいなぁ。


これは許しの映画だ。
いや、許しといっては語弊があるか。
だって、許されるもなにも、
ステは何も悪い事はしていない。
むしろ、被害者だ。


今の時代なら、
性暴力の被害者として、
訴えてもおかしくない状況だけど、
でも、遠い昔の物語、
たとえ暴力といえども、
「貞女、二夫にまみえず」との諺通り、
それは、あってはならない事だったのだろう。


物語の展開が素晴らしい。
全てのエピソードが自然で、
話がスムーズ。
普段、私も生きている中で、
「あの出来事があったから、
 ああなって、こうなって、そして今がある」
と思う事がよくあるけど、
そんな感じ。


鶴田浩二さんのセリフがいい。
死のうとしているステに、彼は、
「袴野と生活していても、懐妊しなかったあなたが、
 馬介との一度の交わりで子を宿した。
 お腹の子は、必要だから生まれてくるのです」と。


鶴田さんは、
ステに惚れているんだろうけれど、
彼女の出産前も、出産後も、
指一本触れる事のないストイックさ。


そのおかげで、
物語は、
ギリギリ恋愛物にはならず、
ステの行動の基本は、
母性から来るものになっている。


私は、
恋愛物も大好きだけれど、
この映画に限っては、
そうではなくて良かった。


もちろん、
この物語に続きがあるなら、
鶴田さんと京さんは、
その後、結ばれるんだろうけど。


評価 ★★★★☆

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