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「質屋」 [映画]

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〔1964年/アメリカ〕


ソル・ナザーマン(ロッド・スタイガー)は、
美しい妻、可愛い2人の子供と
幸せに暮らしていたが、
ユダヤ人であるが故、
ある日、ナチスに強制連行され、
妻と子供は殺される。


1人生き残った彼は、
今は、ニューヨークの貧民街で、
質屋を営んでいる。
もう何も失うもののない彼は、
誰にも心を開かず、
客に対する応対も冷たい。


そんな彼の店で、プエルトリコ系の若者・ジーザス(ジェイム・サンチェス)が
働く事になった。
ジーザスは、元は不良だったが、
将来を考え、真面目に生きようと決意したばかりだ。
ソルから仕事を教わり、いずれは質屋を経営したいと考えている。


しかし、ジーザスの不良仲間が、
そんな彼を放っておくはずもなく、
仲間にそそのかされたジーザスは、
店の金庫を狙って、
数人で強盗に入ってしまう・・・。





どんなに辛い事があっても、
もう生きていても仕方がないと思えるくらいの
出来事があっても、
それでも人は生きていくしかないんだと、
思わされる。


だって、生きる以外に何ができるだろう。
愛する家族全員を失い、
生き残ったのは自分だけ。


ソルの腕には、
忌まわしい記憶を蘇らせる、
収容所で彫られたナンバーが刻まれている。
戦争を知らない若者は、
「おじさん、この刺青は何?」と尋ねてくる。


物語の中では、
フラッシュバックが多用され、
ソルが昔の事を語らなくても、
過去に、何があったかが分かる作りになっている。
ソルは、何を見ても、何を聞いても、
フラッシュバックが起こり、
全てが辛い過去に結びついてしまうようだ。


彼の店で働きだした若者・ジーザスは、
改心した気持ちを母親に誓うなど、
決して悪い若者ではない。
観ているこちらにしても、
「仕事が見つかって良かった。頑張れ」と思うのだけれど、
「何かが起こりそう」という不安が
どこかにある。


案の定、事件は起こる。
悪の誘惑というのは、
それほど強いものなのか。


ラスト、ソルの心は、
ほんの少し救われるけれど、
決してハッピーエンドではないのが悲しい。


評価 ★★★☆☆

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