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「赤目四十八瀧心中未遂」 [映画]

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〔2003年/日本〕


釜ヶ崎から尼崎に流れてきた、
世捨て人・生島(大西滝次郎)は、
鶏の臓物を串に刺す仕事をあてがわれ、
窓も開かない薄汚いアパートの一室で、
その作業に没頭する。


彼に仕事を斡旋してくれたパンパン上がりの勢子(大楠道代)は、
彼の身の回りを何かと気にしてくれるが、
一流大学出の生島は、
こんな所に長くは居られないと踏んでいる。


アパートには、
彫り物師(内田裕也)・彼の弟子(大森南朋)、
やくざ、売春婦などが入り乱れ、
彫り物を入れる際の呻き声や、
売春婦の喘ぎ声ばかりが響いている。


ある日、生島はアパートに出入りする1人の女に魅入られる。
彼女は、彫り物師の愛人・アヤ(寺島しのぶ)。
勢子はアヤを「朝鮮人」だと生島に告げる。
アヤの兄は極道者で、
出所間近だという。


ある日、アヤが突然生島の部屋に入ってきて、
ふたりは関係するが・・・。





以前、このブログにも書いた、
車谷長吉さんの同名小説の映画化。
私の好きなタイプの話なので、
映画も楽しみにしていた。


けれど、ちょっとイメージと違うかなぁ。
大西滝次郎の演技が、いちいち面倒臭い。
彼は世捨て人という割りに、
出会う人全ての言動に過剰反応するので、
観ていてイライラする。
世捨て人っていうのは、
もう他人が何をしようが、どうでもいいんじゃないのか。


どんなに常識からとっぱずれた人がいたって、
世捨て人なら気にはなるまい。
160分の長い映画だが、
彼の大げさな反応部分をカットすれば、30分は短縮できそうだ(笑)。


けれど、彼はこの映画で沢山の賞を取っているようだ。
私に、その間(ま)を楽しむ余裕がないだけなのであろう。


それから、これは観る前から分かっていた事だけれど、
原作のアヤは、
大変に美しい女と描かれている。
寺島さんだと、ちょっとイメージじゃない気が・・・(ごめんなさい)。


内田裕也さんは良いです。
怪しげな彫り物師の役がピッタリだった。
髪型もあのまんま(笑)。
彼は元々兵庫県の出身なので、
なんだか空気まで合っている気がして。


評価 ★★★☆☆

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「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」 [映画]

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〔2011年/アメリカ〕


クリステン・ウィグ。
30代後半の独身女性。
ケーキ店の経営に失敗し、恋人にも捨てられ、
今は母親のコネで宝石店の売り子をする日々。
ベッドを共にする男友達からは、
「体だけの関係」とハッキリ宣言されている。


ある日、彼女は親友・マーヤ・ルドルフから、
婚約を聞かされ、
ブライズメイズ(花嫁介添人)のリーダー役を頼まれる。


親友の為にと、快く引き受けたウィグだったが、
しかし、ウィグ以外のブライズメイズたちは、
何やらセレブっぽく、
みんな幸せそうだ。
中でも、美人のローズ・バーンとはソリが合わず、
波乱の予感。


予感は的中し、
ウィグの提案する結婚式プランは、
ことごとく却下されてしまう。
さらに、裕福なブライズメイズたちと、
貧富の差を見せつけられ、
それが原因で様々な騒動が起こる。


さらにウィグは、客あしらいの下手さから、
宝石店をクビになり、
いいムードのなりかけた警察官との関係も悪化、
これ以上はないくらい、どん底の状態になってしまう。
そのストレスが、
ブライダルシャワー(花嫁へ贈り物をするイベント)の日に爆発、
イベントをぶち壊してしまう・・・。





映画館に行って、
この作品が一番時間的に近かったので選んだのだけれど、
本当に観て良かった(しみじみ)。
笑っていたのに、
気が付いたら涙がにじんでいた。


クリステン・ウィグの、なんとも八方塞な不安定感。
同じ境遇になった事はないにしても、
女なら誰でも理解できる気持ちじゃないのかな。


自分だけ特定のパートナーがいない不安に加えて、
彼女にとって大きいのは経済的不安。
ブライズメイズの為のお揃いのドレスを選ぶシーンで、
彼女以外の女たちは、
値段など全く気にしていない様子。
一人値札で選んだウィグは、
なんとかそれに決めたいと必死。


独身最後にと、みんなで行ったラスベガス旅行はもっと最悪。
6人の中で、ウィグ一人だけがエコノミークラスで、
さらに飛行機に弱いウィグは、
5人のいるファーストクラスに出たり入ったりするのだけれど、
乗務員から出入り禁止を言い渡されてしまう。
不安を消す為に飲んだ酒が効きすぎて、
ついには機内で、とんでもない醜態を晒すハメに。


これって、どうなのよ(笑)。
女同士の旅で、1人だけエコノミークラスって、
何事にもつるまなくてはいられない日本女性だったら、
考えられないんじゃないかしら。


こんな風に書くと、とってもシリアスな感じがするけれど、
そんなウィグの辛さを、
ドタバタした感じで描いてあって、
全編、笑いでいっぱい。


それに、ウィグは、自分のダメさを、
自分が一番よく知っているから、
「ヤング≒アダルト」のような寒い勘違い女とも違って、
イライラさせられる事はない。


女たちが全員、特別美人じゃないって所(ごめんなさい(笑))が、
この映画のリアルな感じを、より強くしている気がする。
とりあえず綺麗という設定のローズ・バーンも、
まぁ、そこそこかなって程度。
だからこそ、感情移入もしやすい。


どん底のウィグをメリッサ・マッカーシーが、
叱咤する場面が心にしみる。
ウィキペディアを見ると、
マッカーシーはこの映画で、沢山の賞にノミネートされている。
分かるわ。
(試着室でも場面も含めて(笑))。


評価 ★★★★★

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「陸軍中野学校 開戦前夜」 [映画]

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〔1968年/日本〕


昭和16年。
日本とアメリカの交渉が決裂。
世界は戦争へ向かって動き出していた。


香港にいた陸軍中野学校出身のスパイ・椎名次郎(市川雷蔵)は、
磯村大尉(細川俊之)と協力し合い、
敵方の情報を盗み出す事に成功する。


一度は捕まり、
拷問を受けた椎名だったが、
磯村らに救出され、日本に戻る。


椎名の入手した情報に日本軍は驚愕する。
先日の御前会議で話し合われた内容が、
そのまま漏れていたのだ。
会議の出席者の中にスパイがいるとの疑いを持った椎名たちは、
調査に乗り出す。


日独伊と米英は一触即発、
第二次世界大戦勃発は時間の問題。
日本が真珠湾攻撃を決めた事を、
拷問を受けた磯村が喋ってしまう。


驚いた米英は、それを無線で連絡しようとするが、
椎名たちは何とか妨害する。
日米のスパイ合戦は、どう決着するのか・・・。





シリーズ5作目にして最終章。


真珠湾攻撃目前の物語で、
歴史的にも大変な出来事であるはずなのだが、
緊張感が感じられないのが残念。


そもそも、1作目の頃と、
方向性が変わってやしないか。


陸軍中野学校に入った人間は、
家族も捨て、戸籍も捨て、
全く別の人間としてスパイ活動だけに専念すると
教育されていたはずなのに、
椎名は、知り合った美しい女・一之瀬秋子(小山明子)に、
自分の立場を打ち明けちゃってる。


あんなに過酷な訓練を受けた椎名が、
女ごときにうつつを抜かすなんて、
1作目なら考えられない。


市川雷蔵と細川俊之が、
同じ画面にいるのがなんだか不思議だった。
市川雷蔵はずっと昔の人で、
細川俊之は今の人ってイメージだったから。
でも、調べてみると、2人は9歳しか違わない。
細川さんが亡くなったのが去年だと考えると、
雷蔵が早世したのは、本当に惜しい事だったと痛感する。


評価 ★★★☆☆

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「ファム・ファタール」 [映画]

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〔2002年/フランス〕


カンヌ映画祭のレッドカーペット。
一番の注目は、
人気女優・リー・ラスムッセンが身に付けたビスチェ。
このビスチェには、1000万円のダイヤが散りばめられており、
人々の目を引いている。


これを狙う、窃盗団一味がいた。
あと一歩で成功という所で、
犯人の1人・レベッカ・ローミンは仲間を裏切り、
ビスチェを持って逃走する。


途中で気を失ったローミンは、
見知らぬ家のベッドで目覚める。
ローミンにソックリな主婦・リリーと間違えられ、
連れてこられたのだ。


リリーが自殺した事から、
ローミンは彼女に成りすます事を思い立つ。
リリーの持っていた、アメリカ行き航空券で搭乗。
隣席には大使が座っていた。


7年後、大使の妻となっていたローミンは、
夫のフランス駐在に同行し、フランスに戻る。
しかし、過去を絶対知られてはならない彼女は、
人前に出ない。
パパラッチ・アントニオ・バンデラスは、
そんな彼女の写真をスクープする。
それが2人の運命を大きく変えるとは、
知る由もなく・・。





出だしから凄いわ。
リー・ラスムッセンの身につけたビスチェが。
これって、ビスチェと呼んでいいのだろうか。
布は一切使われておらず、
ダイヤを散りばめた蛇の形のゴールドを
素肌に巻き付けているだけの、
殆ど裸状態。
そりゃあ、注目もされるだろうよ、
別の意味で(笑)。


それから、レベッカ・ローミンの、
スタイルの良さに惚れ惚れしてしまう。
下着姿で男を挑発するシーンなんか、
完璧すぎて、
私が男だったら、逆に欲情しないような気さえしたな(笑)。


あんな体形だったら、
私にも別の人生があっただろうなどと、
馬鹿馬鹿しい事を考えながら観ていたよ(笑)。


タイトルの「ファム・ファタール」とは、
男を破滅させる魔性の女の事だそうだ。
そこまで大げさな内容とも思わなかったけど、
あのバンデラスがタジタジになっていたから、
雰囲気は出ていたと思う。


ラストは、「そうくるか」という展開。
確認の為に、もう一度ざっと見直しちゃった。


評価 ★★★☆☆

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「ロボット」 [映画]

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〔2010年/インド〕


工学博士バシー(ラジニカーント)は、
実に10年の歳月をかけて、
限りなく人間に近いロボットを作り出す事に成功する。


ロボットはチッティ(ラジニカーント)と名付けられ、
街に繰り出す。
様々なトラブルはあったが、
次第に人間の生活に馴染んでゆくチッティ。


バシーの恋人・サナ(アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン)は、
チッティを気に入り、連れて歩く。
チッティは彼女が危機の時も、
大変な力を発揮して助けてくれる、最高のボディガードだった。


しかし、人間の心を手に入れたチッティは、
サナに恋してしまう。
チッティの行動に怒ったバシーは、
チッティを破壊し、ゴミに出してしまう。


それを拾い、人間を攻撃するチップを埋め込んだのが、
バシーの成功に嫉妬する、バシーの恩師。
かくてチッティは、
最悪のロボットとなり、
人間に攻撃を始める・・・。





想像以上の面白さ。
経済発展著しいインドは、
映画もこんな凄い物が出来ていたのかと、
驚くばかり。
侮れないわ、インド(笑)。


インド映画という先入観からかもしれぬが、
「んな馬鹿な」という場面も許せてしまうという、
利点もある。
ハリウッドだったら、「ふざけるな」と怒られそうなシーンも、
あはははは~と笑ってしまう。


チッティのルックスが、
いわゆる“イケメン風”でないのも可笑しい。
おっさんみたいで(笑)。
ラジニカーントの二役だからそうなるんだろうけど、
インドでは、彼のような人がイケメンなのかしら。


突然踊りだすのもインドらしくていいわ。
ノリが良くて、楽しい。


それから、後半、
チッティが悪になった後からの展開が凄い。
チッティは、アシモフが提唱した「ロボット三原則」を
インプットされておらず、
(バシーが、軍隊で使えるようにと、あえてインプットしなかった)
そのせいで、人間を攻撃しまくる。
CGで表されたその場面は長く、激しく、
「ターミネーター」が何百人もいるような、怒涛の展開。
怖いやら可笑しいやらで、
時間を忘れる。


真面目な見方をすれば、
ロボットが人間に近くなりすぎると、
こういった事を起こり得るのだと、
注意を喚起されているようで、
空恐ろしい気持ちにもなる。


インドはこれからも、
この手の映画を量産してくるのだろうか。
うかうかしていられないわ、ハリウッド(笑)。


評価 ★★★★☆

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