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◆寒灯◆ [本]


寒灯

寒灯

  • 作者: 西村 賢太
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/06
  • メディア: 単行本


ここまでくると病気だ。
西村賢太病(笑)。


また図書館で借りてしまった本作、
貸し出し期間である2週間の間、
毎日毎日、繰り返し読んだ。
他にも本は借りているのに、
何故かこれを手に取ってしまうって、なんでなんだろう。


さらに、昨年発行された「週刊文春」の「家の履歴書」で、
西村氏がゲストの号があると知り、
それも図書館で借用し、コピーまでした。
そこには、「自分が同棲相手に暴力を振るう描写は、
あくまでもデフォルメであり、
実際は軽症です」と書かれてあった。


軽症て(笑)。


4つの中編が収められている本作。
登場人物は相も変わらず、
北町貫多と同棲相手の秋恵であるが、
貫多の言動が理不尽すぎて、
逆に笑ってしまうくらい。


一番酷いのは、
秋恵が貫多の誕生日プレゼントにと買った品に、
あれこれ難癖をつけ、
さらに、用意してくれたステーキを、
「ビーフカツに作り直せ」と命令し、
「パン粉がない」と秋恵が言えば、
「だったら買いに行け」とまで脅す、その描写。


貫多は決して冷淡な男ではない。
逆に、ある意味、情が深すぎるとも言える。
それゆえ、秋恵に対する執着も強く、
期待が大きすぎる。
なので、秋恵が自分の期待通りに動かないと、
ガッカリする気持ちも人一倍強く、
暴言という形になって表われてしまう。


そんな貫多に、
秋恵の愛情は次第に冷めてゆく。
一年続いた同棲で、
最初の頃は貫多に反撃していた秋恵だが、
この時は、
黙ってパン粉を買いに行く。


人は、
相手を怒らせているうちはまだマシだ。
呆れさせたら、それはもう、終わりの時だと、
この本は、暗にそう物語っている。

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