◆寒灯◆ [本]
ここまでくると病気だ。
西村賢太病(笑)。
また図書館で借りてしまった本作、
貸し出し期間である2週間の間、
毎日毎日、繰り返し読んだ。
他にも本は借りているのに、
何故かこれを手に取ってしまうって、なんでなんだろう。
さらに、昨年発行された「週刊文春」の「家の履歴書」で、
西村氏がゲストの号があると知り、
それも図書館で借用し、コピーまでした。
そこには、「自分が同棲相手に暴力を振るう描写は、
あくまでもデフォルメであり、
実際は軽症です」と書かれてあった。
軽症て(笑)。
4つの中編が収められている本作。
登場人物は相も変わらず、
北町貫多と同棲相手の秋恵であるが、
貫多の言動が理不尽すぎて、
逆に笑ってしまうくらい。
一番酷いのは、
秋恵が貫多の誕生日プレゼントにと買った品に、
あれこれ難癖をつけ、
さらに、用意してくれたステーキを、
「ビーフカツに作り直せ」と命令し、
「パン粉がない」と秋恵が言えば、
「だったら買いに行け」とまで脅す、その描写。
貫多は決して冷淡な男ではない。
逆に、ある意味、情が深すぎるとも言える。
それゆえ、秋恵に対する執着も強く、
期待が大きすぎる。
なので、秋恵が自分の期待通りに動かないと、
ガッカリする気持ちも人一倍強く、
暴言という形になって表われてしまう。
そんな貫多に、
秋恵の愛情は次第に冷めてゆく。
一年続いた同棲で、
最初の頃は貫多に反撃していた秋恵だが、
この時は、
黙ってパン粉を買いに行く。
人は、
相手を怒らせているうちはまだマシだ。
呆れさせたら、それはもう、終わりの時だと、
この本は、暗にそう物語っている。