「海よりもまだ深く」

〔2016年/日本〕


15年前に小説で賞を獲ったはいいが、
その後は鳴かず飛ばずの良多（阿部寛）。
今は取材のためと称して、
探偵事務所で働いているが、
それは言い訳で、
生きるための手段だ。


そんな良多に呆れ果て、
妻の響子（真木よう子）は
11歳の息子・真悟を連れて出て行った。
真悟に会えるのは、
月に1度、10万円の養育費を響子に渡す日だが、
そんな大金は中々作れない。


響子を諦めきれない良多は、
探偵の腕を生かして、
彼女の行動を見張る。
どうやら新しい恋人ができたらしく、
息子の野球を一緒に観戦したりしている。


ある台風の日。
良多、響子、真悟の3人は、
成り行きから、良多の母・淑子（樹木希林）の団地に
泊まる事になってしまう。


淑子は何とか息子たちの復縁を願い、
同じ部屋に布団を敷くのだが・・・。





何をやっても上手くいかず、
思い描いていた大人になれなかった、
大人たちの物語。


阿部寛演じる主人公の良多が、
本当に駄目で（笑）。
元嫁に未練タラタラな割に、
養育費も払えず、
親の金を盗もうとし、
探偵業で稼いだ不正な金を、
自分のポッポに入れるなど、
やっちまった感いっぱい。


でも、なんだろう、
阿部寛の演技が上手いのか、
容姿のおかげなのか、
悲壮感はなく、
私は結構笑えた。


まぁ、それはあくまでも、
このお話を他人事として観ているからであって、
元嫁の響子の立場だったら、
たまったものではなかろう。


良多と響子のやり取りが可笑しい。
何とかして響子を取り戻したくて、
必死になる良多と、
「ちょっと、やめてよ」と、彼の手を払いのける響子と。


良多は、自分が一番知りたい、
響子と彼女の恋人に関する、
ディープな質問をする。
観ている私は、あははははーと笑ってしまう。
こんな事で笑う自分て、とも思うけど、
それって本当は、
良多だけでなく、誰もが知りたい事なんじゃないのかなぁ。


樹木希林の、「実家の母」という演技がリアルすぎ。
きっと日本の多くの「実家の母」は
こんな感じなのかなぁ、って。
リアルすぎて、
ステレオタイプになりすぎな気もするくらい。


なりたかった大人に、
自分はなっているんだろうか。


そもそも、子供の頃、
「こんな大人になりたい」なんて思ったこと、
あっただろうか。
もうそんな事すら忘れてしまったよ（笑）。


評価　★★★★☆