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「長崎の歌は忘れじ」 [映画]

nagasakinoutahawasureji.jpg
〔1952年/日本〕


第二次世界大戦の真っ只中、
アメリカ軍の兵士・ヘンリー・グレイは、
日本人捕虜・オクムラタカシから、未完の楽譜を託され、
完成を約束した直後、オクムラは死ぬ。


戦争が終わり、
オクムラの故郷・長崎を訪ねたヘンリーは、
ホテルに勤務する牧原桃子(久我美子)と親しくなる。


桃子には、
原爆のせいで盲目になった姉・綾子(京マチ子)がいた。
綾子は、自分の目を不自由にした、
アメリカと、アメリカ人を決して許そうとはしなかった。


綾子は、夫・道信の復員を
心待ちにしていた。
夫が戦死したら、自分も死ぬ、
と公言するくらい、
彼女は夫を愛していた。


ところが、オクムラがヘンリーに託した曲が、
道信の作曲ということが分かる。
道信は捕虜になった際、偽名を名乗っていたのだ。
義理兄の死を、綾子にどう伝えればいいのか。
桃子は、悩み苦しむ・・・。





これは大変に貴重な映画だ。
観られて、めちゃくちゃ嬉しい。


というのも、
若尾文子さんが、
ほんのチョイ役で出演されているのに、
オフィシャルサイトにも、
このタイトルが載っていない作品なのだ。


しかも、この映画、
公開されたのが、1952年3月27日。
若尾さんのデビュー作とされている、
「死の街を脱れて」は、
 ↓
https://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/2015-07-08
1952年5月22日なので、
こちらこそ、本物のデビュー作ではないか。


この映画に若尾さんが出演しているのではないか、
という噂は、
私も何かで読んではいたのだけれど、
確証がなく、
確証がないのに、DVDを買うのはためらいがあり、
何年も迷っていたところに、
友人Aさんが、DVDを持っていると知り、
お借りして、観る事ができたのです。
Aさん、本当にどうもありがとうございます。


若尾さんのファンとして、
とても貴重な映画だけれど、
それを差し引いても、
本当にいい映画だと思う。


原爆で、盲目となりながら、
出征した夫の帰りを、
今日か、明日かと、
待ちわびる京マチ子さんは、
まるで童女のように可愛くて、
本気で夫を愛しているのだなぁと、
その気持ちの深さに心打たれる。


そして、
姉の夫が既に死んでいる事を知ってしまい、
それをどう知らせようか、
悩む久我美子さん。


黙っていたら駄目なんだろうか、と、
ちょっと思ったりもする。
京さんは、夫の死を知ったら、
後追いするのは間違いなさそうなので、
5年10年して、京さんが諦めた頃、
伝えるとか・・・って。


いや、
それは、戦後70年以上も経った今だから言える事で、
当時は、
そうはいかなかったのだろう。


戦後は、そういった事例が沢山あったのだろうと
推察する。


終盤からラストにかけて、素晴らしい。
ああ、良かった、と思える終わり。


評価 ★★★★☆




この作品で、
若尾文子さんの出演映画、161本中122本を観た事となりました。
(今まで、出演作は160本としてきましたが、
 本作から161本にします)


(★は観た作品)


★春の雪 (2005)
★竹取物語 (1987)
★ある映画監督の生涯 溝口健二の記録 (1975)
 幻の殺意 (1971)
★男はつらいよ 純情篇 (1971)
★スパルタ教育 くたばれ親父 (1970)
 座頭市と用心棒 (1970)
★天狗党 (1969)
★千羽鶴 (1969)
★濡れた二人 (1968)
★積木の箱 (1968)
★不信のとき (1968)
★鉄砲伝来記 (1968)
★華岡青洲の妻 (1967)
★砂糖菓子が壊れるとき (1967)
★妻二人 (1967)
★夜の罠 (1967)
★雪の喪章 (1967)
 処女受胎 (1966)
★赤い天使 (1966)
★雁 (1966)
★氷点 (1966)
★処女が見た (1966)
★刺青 (1966)
★妻の日の愛のかたみに (1965)
★不倫 (1965)
★清作の妻 (1965)
★帯をとく夏子 (1965)
★女めくら物語 (1965)
★波影 (1965)
★花実のない森 (1965)
★幸せなら手をたたこう (1964)
 悶え (1964)
★卍(まんじ) (1964)
★獣の戯れ (1964)
★傷だらけの山河 (1964)
★「女の小箱」より 夫が見た (1964)
★温泉女医 (1964)
★新・忍びの者 (1963)
★越前竹人形 (1963)
 女が愛して憎むとき (1963)
★わたしを深く埋めて (1963)
★女系家族 (1963)
 八月生れの女 (1963)
★雪之丞変化 (1963)
★しとやかな獣 (1962)
★秦・始皇帝 (1962)
★瘋癲老人日記 (1962)
★その夜は忘れない (1962)
★やっちゃ場の女 (1962)
★仲よし音頭 日本一だよ (1962)
★閉店時間 (1962)
★爛(ただれ) (1962)
★雁の寺 (1962)
★家庭の事情 (1962)
★妻は告白する (1961)
★新源氏物語 (1961)
★銀座のぼんぼん (1961)
★女は二度生まれる (1961)
★女の勲章 (1961)
★東京おにぎり娘 (1961)
★好色一代男 (1961)
★お嬢さん (1961)
★婚期 (1961)
★花くらべ狸道中 (1961)
★銀座っ子物語 (1961)
 素敵な野郎(1961)
 鎮花祭 (1960)
★偽大学生 (1960)
★安珍と清姫 (1960)
★勝利と敗北 (1960)
★ぼんち (1960)
★からっ風野郎 (1960)
★女は抵抗する (1960)
★女経(じょきょう) (1960)
★初春狸御殿 (1959)
★浮草 (1959)
 実は熟したり (1959)
★美貌に罪あり (1959)
 花の大障碍 (1959)
★次郎長富士 (1959)
★氾濫 (1959)
★山田長政 王者の剣 (1959)
★薔薇の木にバラの花咲く (1959)
★最高殊勲夫人 (1959)
★あなたと私の合言葉 さようなら、今日は (1959)
 新婚七つの楽しみ(1959)
★母(1958)
★娘の冒険 (1958)
★夜の素顔 (1958)
 嵐の講道館(1958)
★一粒の麦 (1958)
★息子の結婚 (1958)
★口笛を吹く渡り鳥 (1958)
★愛河 (1958)
★忠臣蔵 (1958)
★螢火 (1958)
★東京の瞳 (1958)
 妻こそわが命(1958)
★青空娘 (1957)
★夕凪 (1957)
★誘惑からの脱出 (1957)
★永すぎた春 (1957)
★朱雀門 (1957)
★慕情の河 (1957)
 続銀河の都 (1957)
★スタジオはてんやわんや (1957)
 銀河の都 (1957)
 君を愛す (1956)
★四十八歳の抵抗 (1956)
★日本橋 (1956)
★涙 (1956)
 スタジオは大騒ぎ (1956)
 あさ潮ゆう潮 (1956)
★滝の白糸 (1956)
★処刑の部屋 (1956)
★新婚日記 恥ずかしい夢(1956)
★新婚日記 嬉しい朝(1956)
★赤線地帯 (1956)
★虹いくたび (1956)
★新妻の寝ごと (1956)
★花嫁のため息 (1956)
 薔薇の絋道館 (1956)
★弾痕街 (1955)
 七人の兄いもうと (1955)
★珠はくだけず (1955)
★長崎の夜 (1955)
★幻の馬 (1955)
 娘の縁談 (1955)
★薔薇いくたびか (1955)
★月に飛ぶ雁 (1955)
 幸福を配達する娘 (1955)
★螢の光 (1955)
 勝敗(1954)
荒城の月 (1954)
★月よりの使者 (1954)
 緑の仲間 (1954)
★浅草の夜 (1954)
 慕情 (1954)
★舞妓物語 (1954)
★酔いどれ二刀流 (1954)
★或る女 (1954)
★心の日月 (1954)
 十代の誘惑 (1953)
 無法者 (1953)
 続続十代の性典 (1953)
 春雪の門 (1953)
★祇園囃子 (1953)
 続十代の性典 (1953)
 チャタレー夫人は日本にもいた (1953)
 怒れ三平 (1953)
★十代の性典 (1953)
 彼女の特ダネ (1952)
 街の小天狗 (1952)
 秘密 (1952)
 明日は日曜日 (1952)
 花嫁花婿チャンバラ節(1952)
★母子鶴 (1952)
 猛獣使いの少女 (1952)
★死の街を脱れて (1952)
★長崎の歌は忘れじ (1952)

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「ともしび」 [映画]

tomoshibi.jpg
〔2017年/フランス〕


ベルギーで暮らす老夫婦。
穏やかで平和な暮らしに思えたが、
ある日、夫が、
収監されてしまう。


残された妻・アンナ(シャーロット・ランプリング)の生活は、
今までと変わりなく思えた。


今まで通り、家政婦の仕事をし、
今まで通り、スイミングスクールに通い、
今まで通り、演劇クラスに通い・・・。


けれど、生活は少しずつ壊れていく。
息子を訪ねると、
もう二度と来ないでくれ、と言われ、
スイミングスクールの
登録は抹消され・・・。





ただただ、ひたすら、
シャーロット・ランプリングの日常を観る。


セリフは断片的で、
最小限。
そこから、物語を読み取るしかない。


夫が収監された理由も分からない。


ただ、分からないながらも、
ヒントは小出しにされる。


夫は、「冤罪だから」とか言ってるけど、
その声は小さい。
どう見ても、冤罪の人が必死になって助けを求めている様子ではない。


しかも、妻は、
「写真」を見つけてしまう。
何の写真なのかは分からないけど、
夫の事件の証拠である事に間違いなく、
妻はそれを、
家から少し離れたゴミ捨て場に、
必死の形相で捨てにいく。


もしも、事件が、
私の想像する通りの事であったとするなら、
それはどうにも許しがたく、
妻に罪はないとはいえ、
スイミングスクールで出入り禁止にされるのも
仕方ない気がする。


息子だって、
そんな罪を犯した親父は、
忌み嫌うだろうし、
自分の子供にも、絶対会わせないだろう。
母は関係ないとは分かっていても、
一緒にいたのに、何をしていたんだという思いも強いと思う。


夫の罪を受け入れているように見えた
妻だけど、
息子からの激しい拒絶の時だけ、
一人になってから号泣する。
唯一の激しい場面。


人生って分からない。
このまま、死ぬまで平和に暮らしていくんだろうな、と
思ったとしても、
一体どんな落とし穴が待ち受けているか。


評価 ★★★☆☆

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「BACK STREET GIRLS ゴクドルズ」 [映画]

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〔2019年/日本〕


ヤクザの犬金組のチンピラ、
健太郎、リョウ、和彦(白洲迅、柾木玲弥、花沢将人)は、
ある不始末から、
組長(岩城滉一)の逆鱗に触れてしまい、
・足を切り落とす
・内臓を取り出す
・女性アイドルになって、金を稼ぐ
の三択を迫られる。


当然、3人は「アイドル」を選び、
タイに飛んで、
性転換手術&全身整形手術を受け、
「極上のアイドル」 ⇒ 「ゴクドルズ」というグループ名で
デビューする。


すると、何という事か、
グループは人気急上昇してしまい、
自分たちのアイデンティティが
危うくなってくる・・・。





試写会で観た。


このポスターを見た瞬間、
おそらく、大多数の皆様が、
「え」と思うのは分かっているので、
最初に書きますが、
分かっています、
女が載せるような写真じゃないですよね(笑)。


でも、映画ブログという性質上、
どんなテーマでも、
対応できなければ駄目だと思うし、
(って、義務ではないが(笑))
まして、試写会で観せていただいたからには、
他の作品より、優先的に、
レビューを載せなければなりません。
すみません(笑)。


で、この映画、
極道が性転換して、
3人組のアイドルとしてデビューするという、
有り得ないお話しなんだけど、


てっきり私は、
3人のチンピラ役の男の子が、
女装するのかなぁと思っていたら、
さすがにそれは無理だったらしく、
アイドルの場面は、全身整形という設定で、
本物の女の子が演じておった(笑)。


荒唐無稽の話だけど、
途中、
サイン会にやって来た5歳の少女が、
「も、もしかして、俺の子?」と思われる場面があったりして、
それなりに捻りがきいている。


それに、
やりたくもないアイドルをする3人だけど、
活動を続けるにつれて、
可愛くなりたい、とか、
3人の人気の順位が気になったりするのも、
人間の心理として、面白い。


それに、この映画、
馬鹿馬鹿しいだけじゃないぞ。
なにせ、
大杉漣さんが出演しているのだから。
出てきたのは、ほんの1分くらいだったけど(笑)。


評価 ★★★☆☆

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2月1日のシャンシャン。 [できごと]

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2月1日。
私にとって、
今年最初のシャンシャンに会いに行ってきました。

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マニアの間では、
もう当たり前のようになっている、
シャンシャンの「寝食い(笑)」。


この写真は、
まだ多少、座っている方で、
普段はもう、水平といっていいくらい、
平らになって、普通にお食事しています。


硬い笹の葉や、竹を、
寝食いなんかしたら、
喉につっかえそうですが、
もう全然平気の、この、のんきな感じ(笑)。

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人間だったら、
「お行儀悪い」と
叱られそうです(笑)。

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「天才作家の妻 40年目の真実」 [映画]

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〔2018年/スウェーデン・アメリカ〕


アメリカの現代文学の巨匠
ジョゼフ・キャッスルマン(ジョナサン・プライス)は、
ノーベル文学賞の報せを受け、
妻・ジョーン(グレン・クローズ)と
手を取り合って喜ぶ。


授賞式に出席するため、
スウェーデンのストックホルムに、
長男を伴って出掛けた夫妻だが、
記者のナサニエル(クリスチャン・スレーター)から
付きまとわれる。


ナサニエルは、ジョゼフの伝記本を書きたいと言い、
そして、ジョーンに、
何かを知っているような、
含みのある物言いをする。
「ジョゼフはあなたと結婚してから、
 急に傑作を生み出すようになった」と・・・。





ノーベル文学賞を受賞した夫の作品が、
実は妻の執筆によるものだったという物語だけれど、


この夫、
なんだか本気で自分が受賞したかのように
喜んでいるように見えて、
苦悩している様子が全く感じられないのが、
とっても奇妙。


この夫婦は、
元々、大学教授と教え子という関係で、
妻の才能を、夫が見い出すわけだけど、
当時は、
まだまだ女が差別されていて、
女流作家なんて、夢のまた夢。


で、妻の作品を夫のものとして、
発表するようになってしまったわけだけど、
雰囲気から察するに、
作品は、確かに妻が書いているけれど、
夫も、手直ししたり、
アドバイスしたりと、
全く作品に関わっていないわけではないように、
私には思えた。


だからこそ、
「この賞は、
 表向き、僕が受け取るけど、
 僕たち2人が二人三脚で得た栄誉だ。
 本当にありがとう。
 心から感謝している」
とでもいった言葉がけが妻にあれば、
また違った印象になったのに。


この夫、
落ち着いた品格のある妻に比べて、
どこか俗人で、
本物の芸術家という感じがしない。


それどころか、
授賞式に出席するための、
たった数日間の間に、
なんと、自分のために付けられた、
専属の若い通訳の女の子に
手を出そうとまでする。


そんなんじゃ、
妻も嫌になるよね(笑)。


似たようなお話しで、
「ビッグ・アイズ」という映画があったけど
 ↓
https://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/2015-02-01
まぁ、
あの映画の夫よりは、
こちらの方が、まだマシかな(笑)。


評価 ★★★☆☆

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