「生きてるだけで、愛。」 [映画]
〔2018年/日本〕
鬱で過眠症の寧子(趣里)は、
一日中寝てばかりで、
バイトもせず、
生活は、同棲して3年の津奈木(菅田将暉)に頼っている。
ある日、津奈木の元カノ・安堂(仲里依紗)が、
突然アパートに訪ねてくる。
津奈木とよりを戻したい安堂は、
寧子に、
「早く仕事を見つけて、ここから出ていけ」と言い、
知り合いのカフェで働く事を勝手に決めてしまう。
一方、津奈木は、
勤務するゴシップ雑誌編集部のえげつないやり方に、
苦しんでおり・・・。
これは心にズシンくる。
物凄く重い。
観ているこちらが落ち込んで、
鬱っぽい感覚に囚われてしまう。
主人公の寧子は、
何もできない、
何かしたくても、動けない。
掃除もしない散らかった部屋の万年床で、
一日中、寝ている。
さらに、そんな自分にイラつき、
仕事から帰ってきた同棲相手の津奈木に当たり散らす。
彼の欠点を指摘し、
言葉で攻撃する。
津奈木はそれを黙って受け止めているけれど、
病気のせいとはいえ、
ああ、もうやめて、と言いたくなる。
津奈木に捨てられたら、
寧子の生活は、
明日から立ち行かなくなるだろうに。
この八方塞がりな、
綱渡りな感じ、
他人事のようで、他人事でないような、
不安と辛さでいっぱいになる。
こんな不安定な世の中、
絶対、なんてないし、
心の拠り所にしている人や、
趣味や、
経済的基盤を失う可能性は、
誰にだってあるだろう。
想像すると怖い。
どうも、寧子という人は、
幸せを掴みかけた時、
それを自ら壊そうとしてしまう傾向があるようだ。
もっと素直に受け止めていいんだよ、と、
見ているこちらは言いたくなるけど、
そういう人って、確かにいる。
むしろ、不幸な自分が好きで、
不幸でいたいのかもしれない。
寧子を演じた趣里が凄い。
私は今まで彼女の事は、
水谷豊と伊藤蘭の娘なだけの、
ただの二世タレントで、
お嬢さん芸しかできない人だと思ってた。
でも、この映画で、
見ているのも辛いような女の役を、
全身で演じていた。
見る目が完全に変わった。
そんな彼女を受け止める同棲相手を演じる、
菅田将暉くんも、すごいな。
彼は、感情を殆ど表に出さないけど、
何も感じていないわけではなく、
おそらくは心の奥底で、
色々抱えているものがあろうのだろう。
そんな男を、
説得力のある演技で好演。
元旦に観るには、
あまりに重かったけど、
観て良かった。
評価 ★★★★☆