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「悲しみは女だけに」 [映画]

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〔1958年/日本〕


広島県・尾道。
飲食店を営む政夫(小沢栄太郎)とくに子夫婦の所へ、
アメリカへ嫁いだ、
政夫の姉・秀代(田中絹代)が30年ぶりに帰国してくる。


政夫の先妻の子、
道子(京マチ子)、
浩(船越英二)、芳子(市川和子)、
そして、政夫の妹の春江もやって来る。


秀代は、傾きかけた家のために、
写真しか見た事のない、
アメリカ移民の男に嫁ぎ、
苦労した話をするが、
道子も浩も芳子も、
何とか秀代から金を借りられないものか、
いつその話を切り出そうか、
それしか頭にない。


特に道子は、
深く愛した最初の夫が戦死したあと、
荒んだ生活をしており、
疲れ切った表情で・・・。





新藤兼人監督が、
凄い人だとは知っていたけれど、
これを観て、
その凄さを再確認。


新藤さんは、この映画で、
監督だけでなく、
原作も、脚本も手掛けられているそうだ。


30年ぶりにアメリカから、
一人の女性が帰ってきたのをきっかけに、
一族が、集まるわけだけれど、


そういう状況の時、
一般的に考えられる、
和気藹々な雰囲気とは、
程遠い登場人物たち。


まず、集まった家の様子からして、おかしい。
主の政夫と、その妻は、
「飲食店」だと言い張っているけれど、
そこはどう見ても、売春宿だ。
アメリカ帰りの姉・秀代に、そんな事は話せないらしい。


なにせ、秀代は、
家族のために犠牲になった人だ。
彼女は、結納金のためだけに、
アメリカに嫁いだ。
さらに、思い出深い家屋敷を売ってほしくなくて、
長年、送金してきたというのに、
帰ってきたら、家はなくなっていた。
一体、あの金は何に使われていたのか。


家族は、同じ場所にいても、
完全に壊れている。
お互いを思いやる気持ちは、
微塵もない。


それから、途中で出てきた
政夫の元嫁を演じる、
杉村春子さんも強烈。
この人を含めた、
全員はもう、
金の事しか頭にないようだ。


タイトルは、
「悲しみ」は「女だけ」となっているけれど、
女だけじゃないよね。
男だって悲しい。


男も女も、
みんな滑稽だ。
滑稽で、恥を晒しながら、
それでも生きている。


評価 ★★★★☆

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