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「あなたを抱きしめる日まで」 [映画]

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〔2014年/イギリス〕


イギリスの田舎町で暮らす主婦・ジュディ・デンチには、
50年間、家族に話していない秘密があった。


1952年。
未婚のまま妊娠した10代のデンチは、
彼女を恥じた父に修道院に入れられ、
そこで息子・アンソニーを出産したのだ。


修道院での労働に耐えながら、
一日一時間のアンソニーとの対面を楽しみにする日々。
しかし、ある日、養子を欲する夫婦が訪れ、
息子はもらわれてしまう。
泣き叫んでも、修道女たちはデンチの声など聞きはしない。


デンチは、息子が50歳の誕生日を迎えるに当たり、
過去の秘密を初めて娘に打ち明けた。
娘は、ジャーナリスト・スティーヴ・クーガンに、
何とかアンソニーの消息が分からないかと相談する。


デンチとクーガンは、修道院を訪ね、
アンソニーの行方を尋ねるが、
記録は全て火事で焼けてしまったと言われる。
しかし、その後の情報で、
修道院は、アメリカ人に子供を売っていたとの情報を得、
2人はアメリカに飛び立つ。
デンチはアンソニーに会う事ができるのか・・・。





50歳になった息子を探す母の物語。
息子を思う母の気持ちに、
涙が出た。


それにしても、ジュディ・デンチのいた50年前の
修道院の酷さったら。
「なんでそんなに意地が悪いの?」と言いたくなるような、
シスターたちの仕打ち。


今は50年前よりずっと良くなったとは言うけれど、
たった一人、当時を知る年老いたシスターの
意地の悪さは変わっていない。
彼女は、ここに収容された少女たちを
憎んでいるようだけれど、
その理由というのが、何とも・・・。


観ている最中、私が心で叫んだ、
このシスターへの言葉を、
ここに書き殴りたい気持ちだけれど、
セクハラになるのでやめておきます。


でも、この映画は、
悲惨なだけではない。
ジュディ・デンチのユーモアや、
年を重ねた女特有の、空気の読めなさ感が
とてもよく表されている上に可愛くて、
時折笑ってしまう。


デンチがアンソニーの軌跡を辿るうちに、
自分が育てていたら、
絶対、このような立派な職業に就かせてはやれなかったと
考えているであろうシーンは、
観ているこちらも否定できず、
「無理矢理だったけれど、養子に出したのも悪い事ばかりではなかった」と
少し慰められるような気持ちになる。


そして、ラスト。
私はデンチのようには、きっとなれない。
それは宗教の違いなのか、
年齢なのか。
私はまだまだ修行が足りないようです。


映画とは全然関係ないけれど、
生きたまま、無理矢理別れさせられた親子のお話に、
横田めぐみさんを始めとする、
拉致被害者のご家族を思い出した。


何とかならないのか、あの問題も。
この映画のように、
連れて行かれた国がアメリカだったら、
探しに行く事もできるのに。


評価 ★★★★☆

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「東京画」 [映画]

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〔1985年/ドイツ〕


小津安二郎こそ、自分が最も敬愛する映画監督だと言う、
ドイツ人映画監督・ヴィム・ヴェンダース。


そんなヴェンダース監督が、
小津監督の描いた東京を求めて来日、
各所でカメラを回す。


しかし小津映画の中の東京の面影は、
1985年の東京には、もはや無いと言っていい。
パチンコ屋、ゴルフ練習場、東京タワー、
原宿で踊る竹の子族。
ディズニーランドにも行きかけるが、
途中で引き返す。


小津監督の墓がある、北鎌倉へも行く。


それから、小津映画になくてはならない俳優・笠智衆との
対面を果たし、インタビュー。


撮影監督の厚田雄春にも会い、
小津のこだわりを聞く・・・。





外国の方が、日本を好きだと言ってくれると、
とても嬉しい気持ちになるものだけれど、
このヴィム・ヴェンダース監督の、
小津安二郎監督への強い思いは、
最初のナレーションの時から、
こちらが恐縮してしまうくらい、伝わってくる。


映画の最初と最後に、
「東京物語」の場面が使われているくらい、
小津監督への思いは真剣だ。


ただ、せっかく日本に来てくれたのに、
ヴェンダース監督が期待するような絵が、
きっと撮れなかったのではないかと思うと、
別に私のせいではないのに、
なんだか申し訳ないような気持ち。


言い訳させてもらえるなら、無理もない事だとも思う。
小津監督の最後の映画、「秋刀魚の味」だって、
公開されたのは1962年。
62年と85年って、
変化の目まぐるしい東京の街には、
長すぎる差だと思う。


ただ映像は、歓楽街や遊技場やメインストリートが多いという
気もした。
東京だって、小さな駅を降りて少し入れば、
普通に住宅街があって、
小津映画とまではいかないけれど、
普通に人々の生活があるのに。


笠智衆さんのインタビューは、
とても貴重。


もしかしたら私は、
笠さんの素の喋りを見たのは初めてかも、と思う。
映画では何度もお目にかかってはいるけれど、
自分の言葉でお話しされているの姿は、
なんだかとても珍しくて、嬉しい。


撮影監督をされた、厚田雄春さんのお話しは、
小津監督のお人柄が偲ばれる、
これも貴重な映像だ。


小津監督は、カメラを固定したら、
それを絶対に触らせないような、
とても拘りが強い面があったようだ。


厳しい方だったのでしょうね。
笠さんも、何度もNGを出されたと言っておられる。


ドキュメンタリーとして、
そう凄いものとは、私には思えなかったけれど、
笠さんと厚田さんのお話しが聞けただけでも、
私には貴重な記録だった。


評価 ★★★☆☆

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「螢の光」 [映画]

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〔1955年/日本〕


両親を亡くした若尾文子は、
妹・市川和子だけはなんとか高校を卒業させたいと、
自分は高校を中退し、
縫箔師として自立する。


幼い頃から、縫箔師の父を手伝ってきた若尾は、
刺繍の腕前も、デザインの美しさも格別。
デパートの百選会に出品した着物は大好評を得、
注文が殺到する。


さらに、百選会を取り仕切っていた菅原謙二と知り合い、
互いに惹かれ合うようになる。


若尾の同級生が日光へ嫁ぐ事になり、
友人たちや妹と日光旅行へ出かけた若尾は、
東照宮の境内で、
見知らぬ中年女性・三宅邦子が落とした手袋を拾ってやる。


三宅は若尾の顔を見て、
驚いた様子を見せる。
実は三宅こそ、若尾の実の母親であり、
若尾と市川は異母姉妹なのだ。


ホテルに訪ねてきた三宅にショックを受け、
逃げ出した若尾は、
タクシーにぶつかってしまう。
そして、その時の怪我が原因で、
針が持てなくなってしまったうえに、
菅原の母からは、彼との結婚を反対され・・・。





若尾文子さんが主演だから観たけれど、
お話は平凡で、普通に先が読める。
ただ、ちょっとした小ネタに、
劇場内からは笑いも聞こえる。


高校を中退したという設定の若尾さんが、
まだとっても若くて可愛い。
ほっぺたなんかプクプクしている。
まだ、女を全面に出す前の映画で、
青春ものと言ってもいいくらい。


とにかく偶然ばかりで笑える。
日光で落し物を拾ってやったのが実母で、
その後、ぶつかったタクシーには、
菅原謙二が客として乗っている、といった具合に。
そんな確率って一体どれくらいなんだ?(笑)


若尾さんがしている、
着物への刺繍がとっても綺麗。
私は不器用だけれど、
刺繍は嫌いじゃなくて、
ずっと以前に、何点か作った事があるので、
(といっても、ミッフィーちゃんとかそんなのだけど(笑))
またやってみたいという気持ちになる。


着物を着られている場面も多い。
着物も、たまに着るのはいいなぁ。
ちょっと何かのイベントの時、
着物を着て行ったらいいかもと考える事もある。
今度、実行してみようかな。


とにかく、若尾さんの映画が見られただけで満足。


評価 ★★★☆☆

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「リベンジ・マッチ」 [映画]

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〔2014年/アメリカ〕


1980年代。
互角の実力を誇る2人のボクサー、
レイザー(シルベスター・スタローン)と、
キッド(ロバート・デ・ニーロ)は、
1勝1敗の成績で、
3戦目を目前に控えながら、
レイザーが引退を表明し、決着がつかないまま30年が経過した。


黒人プロモーター・ダンテ・スレートJr.(ケヴィン・ハート)は、
2人を題材にしたテレビゲームの開発を企画し、
レイザーとキッドは30年ぶりに再会するが、
スタジオで大乱闘となり、
その様子がyoutubeで流れ、馬鹿受けする。


これは金になると踏んだダンテは、
2人の再試合を決める。


2人の確執は、
当時レイザーの恋人だったサリー(キム・ベイシンガー)に
原因があった。
サリーはレイザーを深く愛していたが、
ボクシング一筋のレイザーに淋しさを覚え、
キッドと一夜を共にし妊娠、
その子供を産んだのだ。


「負けるわけにはいかない」
互いに闘志を燃やす2人は、
老体に鞭打って、過酷なトレーニングを開始するが、
鈍った体は、最初は思い通りには動かない。


試合当日、勝つのはどちらなのか・・・。





シルベスター・スタローン、67歳。
ロバート・デ・ニーロ、70歳。
いやはや、普通に考えて、
ボクシングなんてする年齢ではないのだろうが、
頑張ってる、2人共(笑)。


2人とも、ちゃんと老齢を認めての内容なので、
その辺りはホッとする。
「一体、何歳の設定なの?」と言いたくなるような、
実年齢無視の映画だったら、
ガッカリしていた気がするから。


2人とも「ロッキー」と「レイジング・ブル」で、
ボクサー役は演じ済みだけれど、
特にこの映画、
ロッキーで有名な、
あの場面や、あの場面や、あの場面が再現されていて(笑)、
本当に楽しかった。
「またやってる」って(笑)。


そう考えると、
忘れられない場面が随所にある「ロッキー」って、
本当に優れた映画だったんだなぁと、
今更ながら、強く思う。


スタローンとキム・ベイシンガーも再会して、
いい雰囲気になるんだけど、
それがまた、ロッキーとエイドリアンを彷彿とさせて素敵。
スタローンは、ロッキーでもストイックだったものね。
1人の女を深く愛するタイプ。


それとは正反対な性格に描かれるデ・ニーロ。
彼は寄って来る女を拒まない(笑)。
そのお盛んな様子ったら、
10代の若者みたいだったわ(笑)。


試合の場面も、
思っていたよりはずっと
迫力がある気がしたな。
あまりにも殴り合うものだから、
心配になったくらい。


ラストに「おぉ!」と言いたくなるようなゲストあり。
本編が終わっても、すぐに席を立たない方がいいです。


評価 ★★★☆☆

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◆ハピネス◆ [本]


ハピネス

ハピネス

  • 作者: 桐野 夏生
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/02/07
  • メディア: 単行本


岩見有紗は江東区のベイエリアに建つ
タワーマンションの29階に住む専業主婦。
夫はアメリカに単身赴任中で、
三歳の娘・花奈と気ままに暮らしている・・・
ように傍目には見えているだろう。


しかし、彼女は夫から、
離婚を迫られている。
その原因は有紗にあるのだけれど、
彼女は、応じるつもりはない。
それどころか、自分たちを捨てて、
逃げるようにアメリカに転勤した夫を責める気持ちでいっぱいで、
生活費を送ってくるのは当然だと考えているし、
働きに出る気もない。


彼女の頭の中は、
常につるんでいる
4人のママ友との付き合いが半分を占めている。
タワマンのママ友たちはハイソで、
特に、グループのリーダー格のママは、
元CAだけあって美人で高学歴、
有紗はリーダーママから嫌われないように、
心を砕く日々。
夫から離婚されそうだなんて、
言えない、絶対に。


ところが、ある日、
グループの中の1人が、
グループの中の夫と不倫している事を知る・・・。






桐野夏生さんが描く、専業主婦の世界。
なんだか好きになれない主人公の設定はわざとなのか。
桐野さんの事だから、
当然、読者の感情の逆撫でするであろう事は、
想像できたけれど。


ただ、「グロテスク」や「OUT」ほどには、
深くはない。
主婦向けオシャレ雑誌に連載されていた作品というから、
何らかの配慮や規制があったのだろうか。


主人公の夫が望む離婚の理由というのが、
「そりゃ離婚でしょ」と言いたくなるようなものなんだけど、
主人公がそこまで悪いと思っていないのが不思議で。
それって、すごい事なんじゃないの?
誰か読まれている方がおられたら聞いてみたいくらい。


Amazonやbooklogの書評を読むと、
皆さんの感想は概ね同じ。
桐野さんのファンの方は、
「毒が足りない」。
ママ友地獄は、
「怖っ」。
「こんな頃有り得ない」と書かれている方がいないのが、
興味深いような、怖いような。


まぁ、どんな世界にいても、
人間関係は付いて回るし、
主婦だけがドロドロしているわけではないとは思うけど。
案外、何も考えずにグループにどっぷり浸かってしまえば、
上手くいく場合もあるって事で(笑)。

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