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「変身」 [映画]

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〔2005年/日本〕


ある日、ベッドで目覚めた玉木宏は、
ここが病院で、長い間昏睡状態だった事を聞かされる。
しかし、なぜそのような事態になったのかは思い出せない。


医師・北村和夫の説明によると、
彼はある事件で脳の一部が損傷するも、
偶然、ほぼ同時刻に、
彼の体に適合した人間が死んだ為、
損傷した部分を補う移植手術が行われたという。


会いたくてたまらなかった恋人・蒼井優の面会がやっと許され、
彼女が病室にやって来た。
絵を描くのが趣味の玉木は、
早速、蒼井をスケッチするが、
事件前の穏やかな作風と比べて、
鋭いタッチになっている事に気付く。


退院した玉木は、元の職場である工場に復帰するが、
工員たちの怠惰な仕事ぶりに心底呆れる。
自分は今まで、よくこんな職場で働いていたものだ、と。


蒼井の言動のくだらなさにも苛立つ。
あれほど好きだったのに、
彼女の長所も、今は欠点にしか見えない。
日に日に、絵に対する興味も薄れてゆく。
その代わり、なぜか音楽に対して異様な反応が起こる。


以前は物静かで、他人と争った事などない玉木が、
今は攻撃的で、全てが神経に障る。
これは、移植された脳のドナーの性格が
反映されているとしか思えない・・・。





東野圭吾の同名小説の映画化。
これを観るにあたり、
慌てて原作を読んだ(笑)。


読了した日に、映画を観たものだから、
上記の粗筋も、
映画のそれなんだか、
映画で描き切れなかった本の内容なんだかが、
混乱しているくらい(笑)。


脳の移植という、
描き方によってはホラーになりそうなテーマを、
真面目に扱っている作品。


私は、最初はてっきり、
主人公の脳の全部を、誰かの体に移植するのかと思っていた。
主人公が、他人の外見で生きていくのかと。


でもそうではなく、
脳の、損傷した部分だけを補ったのだという。
これは本からの引用だけど、
「脳だからと特別に思うのが間違いなのであって、 
 普通に臓器移植だと思えばいい」とある。


うーん、確かに医者からすればそうなのかもしれないけど、
素人の私からすると、
やっぱり脳って、
他の臓器と比べれば、特別な部位だと感じてしまう。
そう簡単には割り切れない。


この物語のように、
他人の脳を移植した事で、
ドナーの性格や嗜好が色濃く出てしまう事があるのかどうか、
それは私には分からない。
ただ、頭の中で自分と他人が共存しているって、
考えてみれば怖ろしい。
一体自分って何なのだろう。


映画としての出来はどうかと言えば、
やはり原作の丁寧な説明が端折られていて、
映画だけ観た方には、
雑な作りに感じられるんじゃないかという気がする。
案の定、ネットでの評価もかなり低い。


原作では、主人公がドナーを探す過程が面白いのだけれど、
その部分が完全に削られているので、
ドナーを知る場面が唐突すぎて、
わけ分かんない(笑)。


原作で、ショックと笑い感じた場面があった。
蒼井優が玉木宏に、
読んだ本の話をするのだけれど、
事件前は楽しく聞いていた蒼井の話も今は、


「幼稚な論理 退屈で浅薄」


これってそのまんま私じゃん(笑)。
「すみません」と謝りたくなった場面。


評価 ★★★☆☆

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