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◆死からの生還◆ [本]


死からの生還

死からの生還

  • 作者: 中村 うさぎ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/02/26
  • メディア: 単行本


昨年9月に、入院先の病院で、
心肺停止の状態になるも、
なんとか持ち直し、
現在に至っている中村うさぎさん。


とても失礼な言い方かもしれないけれど、
そのニュースを聞いた時、
うさぎさんが今後書かれるであろうエッセイが、
大変に楽しみになった。


一度死にかけた彼女が、
その時や、その前後に何を思ったのか、
いつものうさぎ節で語ってくれたら面白いだとうな、
と考えたから。


この本は、週刊文春の連載をまとめた物なので、
その時の状況や感情を俯瞰して見るといった内容ではなく、
病院のベッドで書かれた、
リアルタイムで状況を伝える内容になっている。


私も、毎週、文春をチェックしたわけではないので、
分からないのだけれど、
うさぎさんは連載を欠かさなかったのだろうか。
それとも、危機的状況がピークだった時は、
休載されていたのであろうか。


病気のお話は、本の一部で、
あとはやっぱりいつものうさぎさん(笑)。


ネットゲームで知り合った中年男性と、
関係しようとして上手くいかなかったり、
コスプレイベントに参加したりと、
やりたい事は絶対我慢しない。
そういう彼女が私は大好き(笑)。


もちろんそれだけじゃなくて、
亡くなられたお身内の事や、
映画「ヘルタースケルター」の感想、
そして、死刑判決を受けた木嶋佳苗について思う事などが、
いつもの文章で書かれており、
大変に興味深く読む。


ニュースによると、うさぎさんは再入院されたそうだが、
「命より仕事」という事で、
遺書のつもりでエッセイを書くと言っておられるそうだ。


仕事なんていいから、休んでほしいという気持ちと、
達観した今の心境を知りたいという、
私の中の矛盾した気持ち。


もちろん一番いいのは、
病気が完治して、
果敢に生きるうさぎさんが完全復活する事。
私が絶対できない(しない)事をしてくれるうさぎさんは、
私の憧れでもあるのだから。

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「奇跡」 [映画]

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〔2011年/日本〕


両親の離婚により、
母(大塚寧々)に付いていった兄・航一(前田航基)と
父(オダギリジョー)に付いていった弟・龍之介(前田旺志郎)。


2人はそれぞれ、鹿児島と福岡で暮らし始め、
新しい友達もできたけれど、
やっぱり淋しい。


特に航一は、家族が4人揃って暮らす事を望んでおり、
しょっちゅう龍之介に電話をする。
龍之介は弟らしく、
兄ほどには深く考えていないようだ。


ある日、航一は、
九州新幹線が開通した日に、
博多から出発する「つばめ」と、
鹿児島から出発する「さくら」の
一番列車が擦れ違う瞬間を見ると
願いが叶うという噂を聞く。


何とか一緒に、
その瞬間に居合わせたいと、
2人は、友達や家族や先生を巻き込んで、
無謀な計画の実行に動き出す・・・。





両親の離婚に胸を痛める兄弟。
特に兄は、
来年中学生というだけあって、
そろそろ色々分かりかけてくる。
なんとか4人一緒に暮らせないかと画策する。


子供たちの演技が自然で、
素晴らしい。
主役の2人も、
さすが実の兄弟なだけに、
掛け合いもピッタリだし、
それから、彼らと一緒に冒険に出掛ける5人の子供もいい。


彼らは新幹線の擦れ違う町まで来たはいいけれど、
泊まる所の事まで考えていなくて、
でも、ある誤解から、
全く知らない老夫婦(高橋長英・リリィ)の家に、一晩やっかいになる事になる。
その場面がとても好き。


あんな風に、私のうちにも、
全く知らない子供たちが泊まったら面白いだろうなぁと、
想像できる描き方で、
老夫婦がちょっと羨ましかった(笑)。


そして、翌朝の、
子供たちが電車の擦れ違いに立ち会う場面。
この場面で私は、
本気で手を合わせて、
子供たちと一緒に、
今一番望む事を願掛けしちゃった。


この映画をDVDで観た方って、
皆さん、同じ事をしないのかな?しない?(笑)
もし劇場で観ていたらどうしただろう。
他の観客の迷惑にならない程度に
手を合わせて、
やっぱり願掛けしちゃう気がするけど。


それから、
子供の目線とは違う所で、
大人の事情も、とっても気になる。
大塚寧々が大人になれないオダギリジョーに
怒る気持ちも分からなくはなくて、
あれじゃ愛想尽かしたくなるよなぁと思ったり。


この映画の先に未来があるなら、
あの子供たちは一体どんな風に育ってゆくのだろう。
2人が、そして全ての子供たちが幸せになってほしい。


評価 ★★★★☆

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「女は夜化粧する」 [映画]

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〔1961年/日本〕


元は劇団員で、
現在は、赤坂で「ギターを弾く芸者」として人気の山本富士子は、
大手建設会社社長・森雅之に、
その度胸のよさを買われ、
今度完成する、大きなナイトクラブの共同経営者になってほしいと
請われる。
2人の関係はあくまでもビジネスであり、
男と女では決してない事を強調され、
山本はその話を受ける。


しかし山本はクラブの開店にあたり、
自分から森を誘う。
自分の体を森に投げ出す事で、
対等の関係になるのだと言い、
今も、今後も、彼に惚れる事は無いと断言する。


その夜、森と過ごしながら、
山本はある男の事を思い出していた。
彼女が劇団を辞める日に、
たった一度、一緒に酒を飲んだ初対面の音楽家・川口浩の事が
どうしても忘れられないのだ。
彼はその翌日、勉強の為パリへ発っていた。


開店したクラブは大盛況。
世間は山本の手腕に感心する。


そんなある日、川口がパリで賞を獲り、
凱旋帰国した事が新聞に載る。
彼も、山本を忘れられずにおり、2人は再会。


しかし、山本にのめり込むあまり、
大事な仕事をすっぽかした川口は、
音楽生命の危機に瀕してしまう・・・。





お話しの流れはそれなりに面白いとは思ったけれど、
最初、あんなに強かった山本富士子さんが、
川口浩様と再会したあたりから、
ふにゃふにゃになってしまうのが、
どうにも納得できなくて。


「これだから女は」って絶対言われると思うなぁ、
これが現実だったら。
いや、「私は山本さんのようにはならない」と言っているのではなく、
むしろ逆。
私には絶対できない能力を発揮する山本さんを、
出だし、ちょーカッコいいと思っていたから、
結局普通の女だった彼女に、ガッカリする気持ちも強いのかも。


山本さんは、音楽家としての道を閉ざされた浩様に、
自分のクラブでピアノを弾かせたりする。
さらに店の中で、浩様を愛するオーラ丸わかり(笑)。
すんごい公私混同。
美人ママ目当てに来ている客が殆どなのに、
それじゃ商売にならんだろう。


そして、何かあると、
裏の自室に引き込んで店に出ない。
高級クラブともなれば、
そこのママも一流なはず。
どんな時でも、自分の気持ちを押し殺して
接客するのがプロだと思うんだけど。
あれじゃ、使っているホステスさんにも
示しがつかない気がする。


そもそも、浩様と山本さんの関係って、
両立できないもの?
世界的な音楽家と名物ママのカップルなんて、
面白いと思うけどな。
一般の妻のように、
甲斐甲斐しく夫の世話はできないかもしれないけど、
浩様がそれでいいって言うなら、
何も問題無いはずだし。


まぁ、なんでもいいや。
浩様からあんなに愛されたら、
私だったら、仕事も何も、
全部放り出しちゃう。
典型的な、「これだから女は」って女(笑)。


彼は夜の幼稚園で、
ピアノの練習をさせてもらっている。
ここなら騒音を気にせずできるって。
可愛い♪と1人でニコニコしていた私(笑)。


彼がパリで賞を獲るほどの、
凄いピアニストに見えないのはご愛嬌。
浩様の親友で、
ライバルでもあるチョイ役を、
田宮二郎が演じている。
役を入れ替わったら、ずいぶん雰囲気が変わるだろうなとも思う。


まぁ、強い野心家のイメージがある田宮だと、
そこまで女に入れ込まない気がするから、
そのキャスティングは、最初から無いとは思うけど。


評価 ★★★☆☆

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「ワン チャンス」 [映画]

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〔2013年/イギリス〕


子供の頃から太っていて、
いじめられっ子だったポール・ポッツ(ジェームズ・コーデン)は、
大人になって、そうパッとしない人生ではあるけれども、
でも、歌う事が大好きで、
オペラ歌手になりたいという夢を持っている。


ケータイショップで働く彼には、
ネットで知り合った、
とても気の合う女性・ジュルズ(アレクサンドラ・ローチ)がいるが、
メールだけのやり取りで、
互いに顔も知らない。


ショップの店長の、
勝手なお節介により、
ポールとジュルズは直接対面を果たし、
その後、彼女はポールの人生に、
無くてはならない女性となる。


ジュルズの励ましもあり、
ポールはイタリアへオペラ留学し
憧れのパヴァロッティの前で、
自分の歌を披露する機会を得るが、
緊張のあまり失敗、
パヴァロッティから、厳しい言葉を投げかけられてしまう。


イギリスに戻ったポールは、
その後も様々な困難にぶつかる。
挫折しかかった彼は、
テレビのオーディション番組に
最後のチャンスを賭ける事を決める・・・。





実在する歌手・ポール・ポッツの名前を知ったのは、
スーザン・ボイルが、
「ブリテンズ・ゴット・タレント」で話題になった時で、
それまでは、その存在も、
もちろん歌も聞いた事はなかった。


その後も、特に彼の歌を聞こうとか、
その人生について調べてみようなどと思った事もなく、
映画を観て初めて、
「なるほど、こういう人だったのね」と知った次第。


彼の、「オペラ歌手になりたい」という夢を叶える過程と並行して
描かれる私生活が、
なんだかとても可愛いくて。


ポールは女性と付き合った事が一度もない、
シャイな青年で、
メールのやり取りをするジュルズだけが、
たった1人の女友達。


で、2人は揃って、
自分のハンドルネームに、
ハリウッドの、誰もが知っている某人気スターの名前を付けているんだけど、
それがなんだか楽しくて、
クスクス笑ってしまう。
その気持ち、分からなくもない。
私が自分で自分に、アンジェリーナ・ジョリーと名付けちゃってるようなもので、
そうなりたいという願望そのもの(笑)。


ケータイショップの店長・ブランドン(マッケンジー・クルック)が、
めっちゃいい人で。
見た目はなんだかチンピラ風情だけれど、
ジュルズに会う勇気のないポールの為に、
ナイス!とも言える後押しをしてくれる。
彼がいなかったら、ポールの人生はきっと変わっていただろうな。


ポールもヘタレなだけじゃない。
ジュルズと一度上手くいかなくなった時、
彼女が働く薬局を訪ねて、
積極的な行動に出る。


それは取り方によっては、
ストーカーだと言われそうな行動だけれど、
描き方がコミカルで、
全然そんな感じはしない。
恋は時に、ある程度強引に出ないと成就しないという
見本みたいな内容。
一度だけ強引に、
それで駄目なら諦める、と。
二度目からは本当にストーカー呼ばわりされてしまうものね。


劇中ジェームズ・コーデンが歌う場面は、
全てポール・ポッツ本人が吹き替えているそうだ。
オペラに詳しくはないけれど、
やっぱり聞き入ってしまう。
こういう才能のある方は、
チャンスがないだけで、
世界中に沢山埋もれているんだろうなぁと思う。


評価 ★★★☆☆

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「アデル、ブルーは熱い色」 [映画]

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〔2013年/フランス〕


17歳の女子高生アデル(アデル・エグザルコプロス)は、
上級生の男子・トマ(ジェレミー・ラウールト)に声を掛けられ、
付き合うようになるが、
何か違和感を感じていた。


ある日、トマとのデートに出掛ける路上で、
女の肩を抱きながら歩く、
髪を青く染めた女とすれ違い、
強烈に心惹かれる。


生まれて初めて行ったレズビアンバーで、
アデルは、あの青い髪の女と再会。
女はエマ(レア・セドゥ)と名乗り、
美大に通う同性愛者だという。


急速に接近した2人は強く愛し合うようになり、
数年後には共に暮らす仲になっていた。


しかし、エマの気持ちに不安を覚えたアデルは、
淋しさから同僚の男と関係してしまい、
それがエマに分かってしまう。
激怒したエマは、
アデルを部屋から追い出すが・・・。





昨年のカンヌ映画祭で、
最高賞であるパルム・ドールを獲得した映画。
賞は監督だけでなく、
2人の女優、アデル・エグザルコプロスと、
レア・セドゥにも与えられたそうだ。


なぜ女優が2人揃って受賞?と思うけれど、
観ればその理由が分かる。
女同士で恋に落ちた2人の、
ベッドのシーンがめちゃくちゃ過激な上に、
時間も大変に長い。


こんなもの、
一般の劇場で上映しちゃっていいのかしら?ってレベルで、
お客さんたちは、シーンとなっちゃって、
スクリーンを見つめるしかない感じ。
そういう時、映画って面白いなって思う。
他人の性行為を、
多数の人間が一斉に見つめてるって、
考えてみれば、変な絵だ(笑)。


2人の女優さんの、
特にレア・セドゥは、
本物の同性愛者に見えるくらい、
迫真の演技だったけれど、
実際はどうなんだろう。
宝塚とはちょっと違うけれど、
なんだかカッコいい、とさえ思ってしまった。


アデル・エグザルコプロスの
年頃の女の子の不安定な感じも良く出ていた。
彼女は自分からトマに別れを告げたのに、
家に帰って、ベッドで激しく泣く。
しかし、泣いているのに、
お菓子を食べ始める。
仰向けのままで。
これが若さかなぁと、
変な所で感心した私(笑)。


一箇所だけ、
「あ、この感覚はやっぱり女だ」と感じた場面があった。
男だったら、こうはしないんじゃないかなぁって箇所が。
たとえ同性愛でも、
やっぱり女は女脳と感じさせられた場面。


同性愛にばかり着目しそうだけれど、
このカップルのどちらかが男性であっても、
十分に成立する、
普遍にある、愛の物語。


蜜月の時は、
世界はバラ色に見えるし、
別れれば、何も手に付かないくらい落ち込む。
それはどんな恋愛においても同じ。


家に帰って、
上映時間が180分と知って大変に驚いた。
観ている最中、
長いとは一度も思わなかったから。
この愛の世界に、
浸りきっていたんだろうか。


評価 ★★★★☆

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