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「フルートベール駅で」 [映画]

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〔2013年/アメリカ〕


2008年の大晦日。
22歳の黒人青年・オスカー・グラント(マイケル・B・ジョーダン)は、
恋人・ソフィーナ(メロニー・ディアス)と、
彼女との間に生まれた娘・タチアナを、
職場と保育園へ送っていった。


そういえば、今日は母・ワンダ(オクタヴィア・スペンサー)の
誕生日だ。
「おめでとう」の電話を入れる。


クビになったばかりのスーパーに行き、
なんとかもう一度雇ってもらえるよう、
マネージャーに懇願するが、
断られてしまった。
どうしよう。
ソフィーナとタチアナのためにも、
もう絶対、麻薬の売人には戻りたくない。


刑務所に入っていた時、
面会に来たワンダは厳しく、
オスカーを甘やかせてはくれなかった。
でも、あの母のおかげで今がある。


ニューイヤーの花火を見る為、
タチアナを預けて、ソフィーナや仲間たちと出掛けたオスカーは、
楽しい時を過ごし、
帰りの電車に乗った。


すると、電車内で喧嘩を売られ、
鉄道警察が即座に飛んできた。
「自分は何もしていない」
どんなに説明しても、騒ぎは大きくなるばかりで、
床にうつ伏せに寝かせられたオスカーと仲間たちは・・・。





2009年の元旦に実際にあった、
警察官による黒人青年射殺事件を
映画化した作品。


観終わって、溜息しか出てこない。
世の中は怒りで渦巻いている。
先日書いた、「あなたを抱きしめる日まで」もそうだけれど、
これらが実話だというのだから、
人がどれほど理不尽な世の中で生きているかを
映画を通して痛感する。


この映画のクライマックスは、
オスカーが白人警官から電車から引き摺り下ろされ、
うつ伏せにさせられ、
銃で撃たれてしまう、
ほんの短い時間で、
残りの場面は、
いわば「蛇足」と言っていい。


社会派映画にしようと思えば、
事件を映画の最初に持ってきて、
その後の裁判や、
抗議デモなどに焦点を当てる事もできたであろうが、
それは最後にテロップと写真で流れただけ。


どこにでもいるであろう、
アメリカの黒人青年・オスカーの、
射殺されるまでの1日を描いた事で、
映画を観る者の心が、
オスカーに寄り添うような効果をあげていると感じる。


もし、オスカーが白人だったら、
どうだったんだろう。
想像でしかないけれど、
軽く諌められて、
終わっていた気がする。


それから、もし、駆け付けた警官の中に、
黒人が一人でもいたらどうなっていたんだろう。


もちろん、警官の方にも言い分はあろう。
もしかしたら、日頃から、
無軌道な黒人の集団に脅威を抱いていたのかもしれないし、
相手が銃を持っている可能性も大いにある。
問答無用で押さえつけるしか、
手段がなかったのかもしれない。
だからと言って、射殺していいわけでは絶対にないけれど。


この事件は、
満員の電車の乗客全員が目撃者であり、
その中の数人が、動画で撮影していた事が、
オスカーが全く無抵抗のまま殺されたという証拠になったという。
手軽に動画撮影できるようになったのも、
悪い事ばかりではない。


私は本当の意味での人種差別を理解できてはいないと思うけれど、
とにかく悲しかった、それだけ。


評価 ★★★★☆

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