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「ドライブ・マイ・カー」 [映画]

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〔2021年/日本〕


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このレビューは1月10日頃に書きました。
本文で、アカデミー賞について触れていますが、
書いた時は、まだ未知でした。
先日の発表で、
作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞の4賞に、
ノミネートされましたね。
とても嬉しく、そして、楽しみです。
1つでも多くの賞が取れる事を願っています。

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舞台俳優で演出家の家福(西島秀俊)は、
脚本家の妻・音(霧島れいか)と、
平穏で幸せな日々を送っていたが、
家福は、妻の、
ある秘密を知っていた。


ある日、家福が帰宅すると、
妻がくも膜下出血で死んでいた。


2年後。
家福は、
広島での演劇祭のため、
自家用車「サーブ」で、
かの地に行く。


主催者側は、
関係者に事故を起こされると困ると言い、
若い女・渡利みさき(三浦透子)を、
専属ドライバーとして紹介する。


余計なことは一切言わず、
出しゃばらないみさきに、
最初は、運転だけをさせていた家福だったが、
彼女と時間を共有するうちに、
今まで目を背けてきたことに気付かされ・・・。





とても評価の高い、
この映画。


8月に公開され、
見逃した、と思っていたけれど、
いまだに多数の劇場にかかっていて、
冬休みに、
観に行く事ができた。
お客さんも、かなり入っている。


海外でも、沢山の賞を取っていて、
1月9日には、
「全米映画批評家協会賞」で、
4部門を獲得したそうだ。
アカデミー賞にも、
絡んでくるといいのだけれど。


主人公の家福、
屈折している。
まぁ、あの年で、
屈折していない人なんて、
いないだろうが、
彼には、家庭内で、
過去と現在の、ある出来事が、
彼の人生に複雑な影と落としている。


そして、妻が亡くなり、
2年後に飛ぶんだけど、


運転禁止を言い渡されて、
紹介された女性ドライバーのみさき、
彼女がもう、
私が雇いたいくらい、
仕事のできる女で。


なんというか、
彼女になら、
どんな秘密でも話してもいいみたいな、
気持ちにさせられる。


家福とみさきは、
おそらく、普通に暮らしていたら、
接点を持つことはないであろうと考えられ、
でも、そんな2人だから、
互いに、過去の出来事を、
考えるようになり。


岡田将生くん演じる、
若手俳優も、
あぁ、あの手の子、いるよね、って感じの、
いかにもな若造。
彼の、自分自身を律せない、
しょうもない感じが、
感情を押し殺したように生きている家福と、
上手く対比できている。


ちょっとここでは書ききれないけれど、
とてもいい映画だった。


評価 ★★★★☆

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「世界で一番美しい少年」 [映画]

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〔2021年/スウェーデン〕


『今まで観た映画の中で、何が一番好き?』


と尋ねられる事が、たまにある。
ベストワンを決めるのは、
難しいけれど、
常にベストテンに入っている作品が、
「ベニスに死す」。
 ↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2012-12-07


ゲイを公言している、巨匠・ルキノ・ヴィスコンティ監督に
見出された、
ビョルン・アンドルセンは、
監督の映画「ベニスに死す」で、
主人公の作曲家から、
狂おしいまでの熱情で見つめられるタジオ役を演じた少年。


そんなビョルンの人生を描いた、
ドキュメンタリー映画。


映画は、
ビョルンが初めて、
ヴィスコンティ監督の前に現れた、
オーディションの場面からあり、


ビョルンが名前を呼ばれて、
部屋に入る瞬間を、
私は、恐ろしいような気持ちで観ていた。
「その扉を開けると、モンスターがいる」と。


いや、もちろん、「モンスター」という言葉は、
ビョルンには相応しくない。
でも、圧倒的な美に対して、
あえて、この言葉を使います。
人智を超えた、想像を絶するものを表すのに、
他に言葉が見つからない。


ヴィスコンティ監督は、
ビョルンの美に衝撃を受け、
その場で、
「服を脱いで」と。
この瞬間から、
ビョルンの運命は、大きく変わってゆく。





フィルムを見ると、
素のビョルンは、
健康的で、普通の少年に見えるけれど、
世界的なスターになった彼は、
ヴィスコンティ監督からは性的搾取を、
祖母からは、金銭搾取をされ、
その明るさを失った事は、
知られた話だ。


映画では、
彼の母親の人生にも触れている。
大人になってからの、
家族の事も。
貴重なフィルムだと思う。





このブログを書くにあたって、
片手落ち(この言葉は差別用語だと聞く。
 でも、これ以上にしっくりくる言葉はないので、使う)
なのは、
私が、
ビョルンが2019年に出演した映画、
「ミッドサマー」を観ていない事。


この映画では、
「ミッドサマー」の撮影風景などもあり、
近いうちに観なければ、と思う。
楽しみだ。


評価 ★★★☆☆

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23区内全駅制覇・六本木一丁目駅 [23区内全駅制覇]

【23区内全駅制覇・各駅編】


第52回目の掲載は、
 ・東京メトロ南北線
「六本木一丁目駅」です。


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「六本木一丁目駅」は「六本木駅」に、
とても近いのですが、
いわゆる、六本木の喧騒は感じられず、
静かな印象です。


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駅に直結している泉ガーデン。


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雪がまだ残っている時に行きました。
木々も寒そうです。


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この日、ここで、
どなたか有名人らしい男性が、
写真撮影をされていました。
タレントさんっぽい感じではなく、
アナウンサーか、
文化人という雰囲気でしたが、
すみません、存じ上げない方でした。


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六本木の駅に向かって歩きます。


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「御組坂」。
「幕府」なんて文字が見えるだけで、
大変な歴史を感じます。


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「寄席坂」。
六本木の歴史を調べたら、
思っている以上に、
深いものがありそうです。


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「山形ホテル跡」。
うーん、
どの説明板も、
「〇〇跡」とか、
「昔、〇〇があった」とかですね。
”跡”ではなく、
本物が見たいよー(笑)。


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近代的なビルやマンションが多いですが、
その狭間には、古家も。


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こちらは2軒並んで、
空き家のようですね。


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石段を上った先に、
きっと昔は家があったのではないかと
想像しますが、
ガッチリ封鎖されていますね。


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「ロイヤル・インディアン・ダイニング」さんで、
お食事。


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本日のカレーとシーフードカレー、
そして、マンゴーラッシーを
いただきました。




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※今まで行った駅のリンク集です。
 ↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2010-09-22-13

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※以下に、このカテゴリーの1回目に書いた文章を
 貼り付けておきます。


2018年の4月から12月まで、
「23区内全駅制覇」というカテゴリーで、
 ↓
https://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/2010-09-22-12
路線ごとに、駅名表示板を並べて、
掲載していたのですが、
次は「2周目」という事で、
今度は各駅の周辺を、もう少しゆっくり歩いてみたいと思います。


条件は特にないのですが、
駅周辺の雰囲気や建物を見たり、
それから、お食事かお茶ができればいいな、
と思っています。

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「ローラとふたりの兄」 [映画]

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〔2018年/フランス〕


フランスの地方都市。
弁護士のローラには、
長兄で、眼鏡士のブノワと、
次兄で、解体業者のピエールがいる。


ある日、ブノワの結婚式で、
ピエールが、花嫁の妻の名前を間違えたうえに、
失礼なスピーチをしてしまい、
喧嘩が勃発。


なんとか仲直りするも、
今度は、ピエールが、
仕事での責任を取らされ、
解雇されてしまう。


ブノワはブノワで、
妻の妊娠の事で、
大失言。
妻は怒って家を飛び出してしまう。


ローラは、
新しくできた恋人と同棲を始めるが、
病院で、
残酷な事実を突き付けられ・・・。





タイトルの通り、
2人の兄と、
彼らの妹が織り成す物語。


小ネタが多く、
クスクス笑わされる。
特に、眼鏡士の長兄の、
客に合う眼鏡の色探しの場面は最高。
グリンピース色、
ほうれん草色、
きゅうり色・・・
そして、オチのさらなる先には大笑い。
・・・って、何のことか分かりませんよね、
あー、多くの方に観てほしい(笑)。


定期的に、
両親のお墓の前に集まる3きょうだいだけど、
そこで必ず喧嘩になる。
で、必ず、
同じ老人がその場に居合わせるんだけど、
この人の言葉が、また、笑える。
このお爺さん、誰なんだろう?
墓地のスタッフさん?と思ったけど、
最後に、ああ、そういう事かと。


もちろん、
笑える場面だけでなく、
劇中で起こる、
彼らの悩みには、
観ているこちらも、考えさせられる。


妻の妊娠を巡る、
長兄の発言には、
「そ、それはないでしょ」と思ったり。
妊娠・出産に関する発言のトラブルは、
ずっと、後を引くと聞く。
気を付けないと。


次兄の失業も大問題。
次兄一人なら、何とでもするだろうけど、
彼には、元妻との間に出来た、
優秀な息子がいて、
ケンブリッジ大学に留学している。
学費の事を考えると、
こちらまで、居ても立っても居られないような
気持ちになる。


ローラの悩みも辛い。


でも、ラストは、
本当に上手くまとまる。
みんなが幸せになれる。
いい映画だった。


評価 ★★★★☆

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「再会の奈良」 [映画]

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〔2020年/日本・中国〕


2005年。
奈良県在住の、
日本と中国のハーフ・清水初美(イン・ズー)は、
中国に住む父親から、
「親しくしている老婆・陳慧明(ウー・イエンシュー)が日本に行くから、
 よろしく頼む」との連絡を受け、
空港に迎えに行く・・・。


1945年。
日本は戦争に負け、
中国に住んでいた、大勢の日本人たちは、
命からがら、中国から引き揚げた。
その時、引き揚げの邪魔(語弊はあるが)になる乳児は、
中国に置いていかれ、
中国人に育てられた。


慧明も、日本人の女の子を預けられた一人。
彼女は、その子に麗華と名付け、
慈しんで育てた。
大人になった麗華は、
「中国残留孤児帰国政策」として、
1994年に、日本に帰った。


慧明と麗華は、手紙をやり取りをしていたが、
ある時から、連絡が途絶え、
心配になった慧明が、
麗華が住むという奈良にやって来たのだ。


かくして、
慧明、初美、
そして元刑事の吉澤一雄(國村隼)の3人で、
麗華探しが始まるが・・・。





日本と中国の合作映画。
中国残留孤児の問題が描かれる。


「中国残留孤児なんて、いつの話?」
「まして、戦争なんて」と、
10代、20代のかたは思うのかもしれないけれど、
戦争の恐ろしさは、
終戦を迎えたから、それで終わり、という事ではない所だと思う。


戦争の傷跡は、
80年近く経った今でも残っているし、
中国残留孤児に限っただけでも、
今では、二世三世の問題が出てきていると聞く。
戦争の犠牲になるのは、
必ず、弱い者たちだ。
戦争は、今後も永遠に、
起こしてはいけないと強く思う。


この映画は、
奈良県御所市が後援という事で、
奈良県でのオールロケ。
美しい景色や街並みが、
堪能できる。


ご当地映画と言っていいんだろうけど、
人探しというテーマは、
ご当地映画と相性がいいのだな、
と、あらためて思う。
登場人物たちが、
人を探して、各地を歩き回れば、
自然に、その土地の景色が写り込む。


テーマは、とても重く感じるけど、
それだけでなく、
笑えるシーンも、沢山ある。
特に、ウー・イエンシューさんの、
可愛いお婆ちゃんっぷりには、
クスクス笑ってしまう。


上映後、
國村隼さん、永瀬正敏さん、秋山真太郎さんによる、
舞台挨拶があった。

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お三人は、
日中合作映画に出られた事を、
とても嬉しく思ったと話され、
「映画は、言葉や文化を超える」と。
あぁ、本当にそう思う。
政治的な意図なしで、
映画やスポーツで、
あらゆる国同士が交流できたらいいのになぁ。


評価 ★★★★☆

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