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「聖地には蜘蛛が巣を張る」 [映画]

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〔2022年/デンマーク〕


イランの聖地・マシュハドでは、
最近「スパイダー・キラー」と呼ばれる男の存在に、
市民が恐怖に慄いている。


「スパイダー・キラー」は、
街角に立つ娼婦たちに、
客のフリをして近づいては、
殺しを繰り返しているのだ。


女性ジャーナリストのラヒミは、
犯人を捜すべく、
地元の記者と手を組むが、
なかなか手掛かりが掴めない。


ついにラヒミは、
自らが囮となって、
街角に立ち、
犯人からの声掛けを待つが・・・。





イランで実際に起こった、
16人の娼婦殺しを基にした映画。


日本人の基準で物事を考えてしまうと、
到底理解できない、
犯人や、その家族の、
ものの考え方。


さらに、警察にしても、一部の市民にしても、
「この人たちは、私とは精神構造が違うんだ」とでも思わないと、
観ていられない。


犯人は、最初から誰だか分かっているので、
推理する楽しみはないけれど、
その分、
普段、善良そうな顔をしている、
一見、気の弱そうなあの男が、
なぜ、あのような殺人を、と、
そちらに関心がいく。


犯人は、
「薄汚い娼婦を、俺が始末してやっている」と
本気で思っている。
その信念が恐ろしい。


確かに、売春は褒められた行為ではないけれど、
娼婦たちの生活は、
息苦しくなるほど、貧しく、
おそらく、他に仕事がないのだろうと思われる。
そして、そんな彼女たちを買う男がいるから
商売が成り立っているわけであり、
女だけが悪い、男だけが悪い、という問題ではない。
一方的に、「街を浄化する」なんて、
偉そうに言うな、と言いたくなる。


さらに、そこに絡んでくるのが、
宗教と、
激しい女性蔑視。


ラストは、一瞬は、
胸がスッとするんだけど、
その後の展開にはゾッとする。
ネットでは多くのかたが、
「胸糞」と。


映画自体は面白いけれど、
ものの考え方は、
最後まで相容れない。


評価 ★★★★☆

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