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「家族を想うとき」 [映画]

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〔2019年/イギリス〕


イギリス・ニューカッスルで暮らすリッキーは、
宅配ドライバーの仕事に転職する。
社員として雇われたのではなく、
個人事業主として、
預かった荷物を運ぶという雇用形態。
車は持ち込みで、
だから、バンに買い替えた。


妻のアビーは、
介護福祉士をしている。
認知症や体の不自由な老人の世話をする、
神経を使う仕事だ。
夫が仕事で車を使うため、
バスで移動するしかない。
大変だけど、仕方ない。


思春期の息子・セブは、
不良がかった仲間とつるんでいて、
学校を休みがち。
リッキーと顔を合わせると、
つい言い争いになってしまう。


小学生の娘・ライザは、
そんな家族の不穏な空気を
敏感に察知し、少し不安定に・・・。





働いても働いても、
楽にならない暮らし。
いや、むしろ、
働けば働くだけ、
貧しくなっていくような気さえする。


「ワーキングプア」という言葉を
最近、よく聞くけれど、
それを目の当たりにしたような衝撃。


家族のために、家が欲しい、
そう望んで転職したはずだったのに、
何もかもが上手くいかず、
八方塞がりな感じに、
息苦しささえ覚える。
一体どうすりゃいいんだ、と、
観ているこちらの胸が潰れる思いがする。


リッキーがしているような、
労働の形態、
最近、日本でも、同じ話を聞く。


会社の方は、
保険も、労災も、
何も掛けずに、
何かあれば、自己責任という形で、
負担が少ないのは分かるけど、
働いている方は、
薄氷の上を歩いているように、
心もとなく、
病気や事故になれば、
全てが立ち行かなくなる。


さらに、この映画の場合、
問題は、長男のセブ君。


この子は、
根は優しい子だと思うのだけれど、
喧嘩をしたり、
万引きをしたりして、
その度に、両親は学校に呼び出される。


宅配の仕事で疲れ果てている上に、
一日も休めないリッキーは、
呼び出しに応じる事も難しく、
そんな事を繰り返されたのでは仕事を失ってしまう。


セブ君、
お願いだから、
余計な仕事を増やさないで。
ご両親は、あなたと、あなたの妹の幸せのために
必死に働いているのよ、
あなたのせいで、
ご両親が仕事を失ったら、
困るのはあなたなのよ、と、
フィクションなのに、呼びかけたくなってしまう。


一つだけ。


こんな苦しい状況でも、
やっぱり全員がスマホだけは持ってるのね。


昭和の貧乏とは違った、
これは、新型貧乏。


世界は一体、どこへ向かっているんだろう。


評価 ★★★★☆

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