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「雲右衛門とその妻」 [映画]

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〔1962年/日本〕


浪曲師・吉川繁吉(三波春夫)は、
楽屋で、師匠の三河屋梅車が、
相三味線をつとめる妻・お浜(月丘夢路)に
暴力を振るったのを見て、止めに入る。


その事がきっかけとなり、
お浜は繁吉に稽古を付けてやるようになるが、
それが梅車の耳に入り、激しい怒りを買ってしまう。


2人は地元にいられなくなり、
流浪の旅に出、
大道芸のようなことをして
金を稼ぐしかなく、
苦しい日々が続く。


しかし、元々才能のある繁吉のこと、
九州で徐々に名を上げ、
「桃中軒雲右衛門」と改名後、
大スターへの道を歩みだすが・・・。





明治時代、
絶大な人気を誇ったという、
浪曲師・桃中軒雲右衛門の、
スターになるまでの半生を描いた映画。


正直、観る前は、
面白いかどうか、不安だった。
とりあえず、大映の映画だから観ておこう、
そんな気持ちだった。


けれど、観始めると、
これが滅法面白い。
まだ無名の雲右衛門が、
師匠の妻に稽古を付けてもらっただけなのに、
師匠の逆鱗に触れ、
2人で、逃げるように街を出る。


何らやましい関係ではないのに、
世間は、
まるで2人が不倫の末、駆け落ちしたかのように噂する。
観ているこちらは事情を知っているから
それは違う、と言いたくなるけど、
ただ、まぁ、そう言われてしまうのも仕方のない状況は状況。
それに、旅の途中で2人は本当に結ばれるし(笑)。


三波春夫さんが若い。
私が三波さんを知った子供の頃には、
もう既に、おじさんとしか言いようのない
年齢だったけど、
昔は、このような映画に出ていたんだなぁと。


繁吉が、自分の芸名を
「桃中軒雲右衛門」と付けたエピソードが素晴らしい。


繫吉とお浜が大道芸をしているとき、
食事をしようと入った店で、
お金がなく、ご飯をお新香だけを頼んだところ、
店の娘が、見るに見かねて、
おかずをサービスしてくれる。
その店の名前が、「桃中軒」。


「桃中軒」と聞いて、
ピンと来られる方も多いと思うけれど、
こちらのお店は、
駅弁で有名な、あの「桃中軒」さんの事だ。


昔は駅弁屋さんでなく、
食堂だったんだ、と分かるのも面白いし、
恩を忘れず、
芸名に店の名前を付けてしまう
繁吉も素晴らしい。


「雲右衛門」は、
富士山より上にいる雲のようになりたい、
という思いからだそうだ。


いい映画を観た。


評価 ★★★★☆

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