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◆壺中美人◆ [本]


壺中美人 (角川文庫)

壺中美人 (角川文庫)

  • 作者: 横溝正史
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1976/10/30
  • メディア: 文庫


高級住宅街・成城で、
高名な画家が殺害される。


犯人はチャイナドレスを着た女のようだ。
女は、逃げる途中、
不審尋問しようとした警察官をも、
刃物で刺し、
重傷を負わせる。


そこで登場するのが、
金田一耕助。


彼は凄いな。
だって、
この事件が起こる50日前、
テレビで、
犯人のチャイナドレスの女が、
口の狭い壺の中に入ってしまうという
曲芸を見ていたのだ。


テレビで見たばかりの女が、
殺人事件を起こし、
事件解決のため、呼び出されるって、
凄い確率だ(笑)。
・・・って、
いやいや、
少し前に書いたけど、
私だって、
前日、ネットで見た人が、
ライブ会場で隣の席だった、なんて、
凄い偶然があったではないか。
 ↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
人生、何があるか分からない。


物語が進むにつれ、
この事件は、
同性愛のもつれが原因だという事が分かってくる。


同性愛は、
太古の昔からあった事だと思うので、
珍しくはないんだろうけど、
ただ、この作品が書かれたという、
昭和35年の世の中の空気ってどうだったんだろう。
同性愛に、それほど寛容ではなかったのではなかろうか。


金田一耕助の発言にしても、
それを、令和の今言ったら、
世間の顰蹙を買うのでは、と思われるような
箇所がある。


それほどの深みはないけれど、
犯人が気になって、
一気に読んだ。

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◆死の枝◆ [本]


死の枝

死の枝

  • 作者: 松本清張
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/05/17
  • メディア: Kindle版


松本清張さんの短編集。


11作品の短編推理小説が収められていて、
全ての作品で、
殺人事件が起こる。


直接、手を下したわけでなくても、
明らかに殺意を持って、
相手が死ぬように仕向けるものもある。


松本清張さんは、
推理小説の大家だけど、
恋愛小説の名手でもある、という
どなたかの書評を読んだことがある。


確かに、
本作でも、
8割の話が、
恋愛絡み。
男と女の痴情のもつれが、
事件に発展するものが多い。





11作、どの小説も、
とても面白いけれど、
その中でも、私は、
「史疑(しぎ)」という作品がとても面白いと思った。


福井県の田舎町に、
「江戸時代の学者・新井白石の著書、”史疑”を所有している」
と話す、
偏屈な老人がいる。


老人の変わり者っぷりは、
それは大変なもので、
先祖から受け継いだ、
おびただしい数の古書を、
自宅に積んではいるが、
それを、
どんなに高名な学者が閲覧を申し込んでも、
決して公開せず、
宝の持ち腐れのようになっている。


特に、「史疑」は、
学者たちが喉から手が出るほど欲しい、
幻の名著で、
その日も、東京から来た、
野心に燃えるある学者が、
「史疑」を見せてほしいと頼むも、
簡単に断られ、
学者は、夜になるのを待って、
老人の家に忍び込み・・・という内容。


で、まぁ、殺人事件はともかくとして、
行き過ぎた偏屈は、
学問の損失にも繋がるのだと、
悔しい思いがした。


というのも、この老人の死後、
彼の息子は、
その蔵書の価値も分からず、
全て焼いてしまったというのだ。


もう、
何をかいわんや。
架空の話とはいえ、
勿体なくて、
地団駄踏みたいような気持ちになった。

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◆ゴッドファーザー 〈上〉〈下〉◆ [本]


ゴッドファーザー〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

ゴッドファーザー〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2005/11/01
  • メディア: 文庫



ゴッドファーザー〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

ゴッドファーザー〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2005/11/01
  • メディア: 文庫


先日、
映画「ゴッドファーザー」を、
シリーズ1~3まで、
一気に観たと書いたけれど、

https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2021-03-08
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2021-03-09
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2021-03-10

その内容の、あまりの素晴らしさに、
原作を読んでみた。


面白かった。
理解の難しい場面は、
何度も戻って、
分かるまで読んだ。


原作と映画、どちらがいい、という事ではなく、
映画には映画の良さが、
そして、原作は、
映画では描き切れなかった場面や、
心理描写などが深く掘り下げられている。


マーロン・ブランド演じる、
マフィアのドン、
ヴィトー・コルレオーネは、
映画で観る以上に、
人間的な魅力に溢れている。


ドンは、
確かに、時に、
人を殺すことを躊躇しない人間だけれど、
常に人から信頼され、
ドンなりの正義を持って生きている。


売春と麻薬を嫌い、
そこに、ビジネスの道を見出そうとしない姿勢も、
ドンらしく、
そのストイックさがカッコいい。


売春をビジネスにしなかったという事からも
分かるけれど、
ドンは妻をとても大事にしている。
ニューヨークの5大ファミリーの頂点に立ったからと、
古女房を捨てて、
トロフィーワイフに走るような男とは、
はなから人間性が違うのだ。


この、ドンの妻、
ママ・コルレオーネ(と、みんなから呼ばれている。可愛い♪)は、
ドンがまだ、普通の青年だったころに結婚した、
マフィアのドンの妻然としていない女性で、
三男マイケルの恋人・ケイと久し振りに再会したシーンなど、
気のいいイタリアのおばちゃんといった風情で、
心温まる。


そういえば、マイケルが、
一時、身を隠していた、
シチリア島での出来事が、
私には、ちょっとショックだったけれど、
それも、本を読んで納得。


映画だと、あの出来事は、
なんだか唐突に感じるけれど、
原作では、もう少し時間をかけて描かれているし、
マイケルのケイへの思いも、理解できる。


私が、ドンの描写で、
とっても好きで、可愛い♪と思ったのが、
「ドンは、温室で栽培される、
 季節外れの大きな黄色い桃やオレンジが大好きだった。」
という部分。


泣く子も黙るマフィアのドンが、
フルーツが大好きで、
しかも、それを、
家族や舎弟に買いに行かせるのでなく、
自ら果物店に寄る事を習慣としていたという、
そのミスマッチな感じが、何とも愛おしい。
店の主人は、ドンがお得意様な事を
さぞ誇りに思っていた事だろう。


といっても、
その習慣が仇となり、
ドンは店の前で襲撃されるわけだけど・・・。


こんな本なのだから、
もっとマフィア同士の抗争などの場面に注目すればいいのに、
つい、
家族や日常の、チマチマした場面に関心が行ってしまう、
私は小さい人間だ(笑)。


今度は、この原作を念頭に、
また映画を観直すつもり。

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◆猿の見る夢◆ [本]


猿の見る夢

猿の見る夢

  • 作者: 桐野 夏生
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/08/09
  • メディア: 単行本


主人公は、メガバンクから、
女性向けファッション業界に出向している、
薄井正明、59歳。


妻、一人。
息子、二人。
愛人、一人。


ある日、薄井が家に帰ると、
リビングでジャージを着て、寛いでいる見知らぬ”おばさん”がいて、
仰天する。
妻曰く、
「彼女は、長峰栄子先生といい、
 彼女に悩みを相談すると、たちどころに解決する」と言う。


あんな”おばさん”に一週間も居座られるなんて、
冗談じゃない。
とっとと帰ってもらうよう、
明日きつく言わなくては・・・。





久し振りに読んだ桐野夏生さんだけど、
やっぱり凄いな。


主人公に対する、
突き放した視線。
まるで小馬鹿にでもしているような。
自分の書く小説の主人公を、
あんな風に描けるなんて、
さすが、クールビューティの桐野さん。
それとも、それも、桐野さんの愛情表現か。


世間の基準から言ったら、
それなりの立場の男なんだろうけど、
その中身は、まったく頼りない(笑)。


彼には自分というものがなく、
何かあると、
そっちに流れ、こっちに流れ、
定まった軸がない。


そんな彼が、
妻の連れてきた”おばさん”に
翻弄される。


”おばさん”を冷たく拒絶したかと思えば、
自分に不都合が起こると、
頼ったり、
一貫性もなく。


そんな「おばさん」が、
薄井に、
遺産相続の件で、重大な予見をする。


この辺りの場面が、
私は一番好き。


薄井は、”おばさん”の言う通りに動き、
法律的に言ったら、
犯罪に当たるであろう、
ある行為をする。


面白くて、馬鹿馬鹿しい、
滑稽な男の2~3か月の間に起きた騒動。
一気に読んだ。

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◆世の中と足並みがそろわない◆ [本]


世の中と足並みがそろわない

世の中と足並みがそろわない

  • 作者: ふかわりょう
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/11/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


東京MXテレビの、
「5時に夢中」を、
”毎日録画”設定にして、
見るようになってから、
もうずいぶん経つ。


曜日ごとにコメンテーターが変わり、
各曜日でカラーが変わるのも、面白く、
「笑っていいとも!」終了後の、
 ↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2013-10-22
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2014-04-04
会社から帰ったあとの
毎日の楽しみの一つ。


で、「5時に夢中」を見ているうちに、
おかしな感情が湧いてきた。


司会のふかわりょうさんに惚れてまいそうだ、って(笑)。


「5時に夢中」を見るまで、
正直、ふかわさんに興味を持った事もなく、
むしろ、ちょっと変な人?というイメージだったのに。


でも、毎日彼を見ていると、
知的で、聡明で、育ちがいいのが、
すごく伝わってくる。


奇しくも、私がそんな気持ちを抱き始めた頃、
月曜コメンテーターの若林史江さんが、
何かの話の流れで、
「ふかわさんと話していると、好きになっちゃう」と
仰られたのが、
私の中に、ストンと入ってきた。
そうそう、その感じ、分かる。


一目惚れされるタイプではないけれど(ごめんなさい(笑))、
じわじわと、その魅力に引き込まれるタイプ。


そんな彼の素敵さに気付いたのは、
女性だけではなかったようで、
新潮社出版部の企画の男性が、
番組を見ていて、
「何か書いてみないか」とオファーされたそうで、
それで出版されたのが、この、
「世の中と足並みがそろわない」。


Amazonでも、売上ランキングの上位に上がったとの事。
世の中には、
隠れふかわファンが多いのかもしれません。


本の内容は、
タイトルの通り、
自分では普通のつもりなのだけれど、
なんだか、
「世の中と足並みがそろっていない」気がする自分、
というエピソードを集めたエッセイ。


あぁ、分かるなぁ、
私も自分の事を決して、
「世の中と足並みがそろっている」とは思わないもんなぁ、
自分ではそろえているつもりなんだけど。
って、そんな感じ(笑)。


なーんて事を思いながら、
ふと、ふかわさんのインスタを見てみたら、
なんと、ふかわさんが、
この本を朗読している動画があるではないか。

IMG_0599.PNG IMG_0625.PNG

眠る時、聞いていると、
まるでふかわさんが
そこにいてくれているような心地よさ(笑)。
こんな事をしている自分は、
やっぱり、
「世の中と足並みがそろって」いないんだろうか。



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このブログは、1月に書いて、
「いつか出せばいいや」なんて、
のんきに考えて、
下書きに入れっぱなしだったのですが、
先週でしたか、
ふかわりょうさんが、
「5時に夢中」を卒業するというニュースがあり、
なので、今日出す事にしました。
書いた時のまま、手直しはしていません。


事情はよく分かりませんが、
なんでも、同じMXテレビの、
夜のバラエティ、
「バラいろダンディ」という番組の司会者さんと、
交代するのだとか。
「5時に夢中」は継続して見ていきたいし、
そこにプラス、
「バラいろダンディ」が加わるのかぁ、
見る時間あるかな、とちょっと心配なのですが、
とりあえず、なんとか頑張ります(笑)。

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