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◆聖ロザリンド◆ [本]


このマンガがすごい! Comics 聖(セイント)ロザリンド (このマンガがすごい!comics)

このマンガがすごい! Comics 聖(セイント)ロザリンド (このマンガがすごい!comics)

  • 作者: わたなべ まさこ
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2017/02/27
  • メディア: 単行本


少し前に、
秋葉原の「まんだらけ」さんに行き、
 ↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2022-03-28
友人からもらったギフト券で、
何の漫画を選ぼうかと、棚を眺めていましたら、
わたなべまさこさんの、
伝説の作品、
「聖ロザリンド」がある事に気付き、
すぐに手に取りました。


表紙にある、クマのぬいぐるみを背負った、
8歳の女の子・ロザリンド。
誰からも愛され、
可愛がられる、
天使のように美しい少女。


一体、誰が、
この子が殺人鬼だなんて想像するでしょう。


でも、この子は、
正真正銘の人殺し。
それも、被害者は一人ではなく、
何人も何人も、数えきれない人間を、
実に無邪気に殺してゆく・・・。


その殺し方も、
多種多様で、
映像だったら、直視できなさそうなものもある。


調べてみると、
この漫画は、
1973年に「週刊少女フレンド」に連載されていたようです。


よくもまぁ、当時、
少女漫画に、
このような作品が載ったものだと思います。
いや、むしろ、
今ほど、色々な事にうるさくなかった
昔だからこそ、
掲載できたのかもしれません。


今なら、まず、
ネットが騒ぎ出しそうです。


実に不気味で、グロテスクな物語であるものの、
今でも、
ずっと語り継がれ、
「このマンガがすごい!」に選ばれるような、
強く心惹かれる、
「何か」がこの物語にはあります。


とても面白かったです。

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◆デンジャラス◆ [本]


デンジャラス (中公文庫 (き41-2))

デンジャラス (中公文庫 (き41-2))

  • 作者: 桐野 夏生
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2020/06/24
  • メディア: 文庫


文豪・谷崎潤一郎の、
妻・松子の妹・重子が一人称で語る、
谷崎の素顔。


重子は、
谷崎の小説「細雪」で、
三女・雪子のモデルと言われている事が自慢で、
自分は、
谷崎にとって、特別な人間だという自負がある。


2年半ほど前に、
「細雪」を読んだばかりなので、
 ↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2019-07-31
まだ記憶に新しく、
この小説は大変に興味深く、
そして面白かった。


私がとても気になった「細雪」のラスト、
『下痢はとうとうこの日も止まらず、
 汽車に乗ってからもまだ続いていた』
が、この本でも触れられていて、


重子の夫、田邊は、
「なんやねん、あのラストは。
 あれではまるで、
 雪子の結婚が不幸になるのを予言しているみたいやないか」
と言っているのが可笑しい。





不思議な均衡を保っていた谷崎家に、
波紋が広がるのは、
松子の連れ子と結婚した千萬子を
谷崎が大層気に入り、
舅と嫁、という関係以上の親密さになった事。


千萬子は、気位が高く、
松子や重子のような古臭い考え方をする女と違い、
いかにも現代風で、小生意気な、
可愛げのない女で、
でも、谷崎の目には、
それがとても新鮮で、
面白い女に写る。


松子と重子は、
谷崎が千萬子に夢中になっていく様子を
傍からやきもきしながら見ている。
あたかも、それは、
今まで主役だった自分が、
脇役に降格されたかのような、失望感。


それでも重子は、
谷崎の新作小説「鍵」で、
 ↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2015-09-26
密かに、これは自分がモデルだと考え、
内心小躍りしたり。


他にも、
千萬子をモデルにして書いたと言われているのが、
「瘋癲老人日記」。
 ↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2013-06-17


谷崎の家には、
常に女中を数名置いているのだけれど、
彼女たちの日常を描いた小説が、
「台所太平記」。
 ↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2015-12-31


などなど、
多数の谷崎作品のタイトルが出てきたのが
面白くて、
夢中で読んだ。

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◆幻色江戸ごよみ◆ [本]


幻色江戸ごよみ (新潮文庫)

幻色江戸ごよみ (新潮文庫)

  • 作者: みゆき, 宮部
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1998/08/28
  • メディア: 文庫


宮部みゆきさんが描く、
江戸・下町の、
人情と恐怖。


12の短編が収められていて、
どれも面白い中、
私が一番好きだと思ったのは、


第四話の、
「器量のぞみ」。


「醜女」で「大女」、そして「愛想なし」。
深川で父親と暮らすお信は、
花も恥じらう18歳だというのに、
長屋の皆からそう言われているし、
自分でも、重々承知している。
気風が良くても、
器量ばかりは、どうする事もできないと
諦めている。


ところが、そんなお信を、
この界隈でも有名な美男子・繁太郎が
嫁にほしいと言ってきた。


「冗談はよしとくれ」と、
最初は怒ったお信だが、
どうやら繁太郎は本気らしい。
彼は、お信に一目惚れしたと言う。


噂は瞬く間に広がり、
それを聞いた誰もが、
「ひえー」と声を上げる中、
お信は、繁太郎の元に嫁いだ。
繁太郎が優しくて、真面目で、働き者。
さらに、
舅姑、そして2人の妹たちも、
それはもう、お信に親切に接してくれて、
お信は、幸せながらも、
何か、恐ろしいような気持ちを拭えない・・・。


読み進めながら、
あぁ、どうか、
お信が不幸になりませんように、
この物語がハッピーエンドですように、と
願わずにはいられない。


でも、うん、大丈夫。
とても素敵なラストでした。





〓〓〓〓〓〓


ところで、この本、
近所の古本屋さんで買ったのですが、


中に、書店の栞が挟まれていました。

IMG_4365.jpg
「白石書店」。


うーん、どこの本屋さんだろう、
多分、今まで聞いた事のない本屋さん。

IMG_4365.jpg

「エスパル」というショッピングモールも、
ちょっと記憶にありません。


気になるので、検索してみましたら、
福岡県の本屋さんだと分かり、
ビックリ。
そこまで遠いとは思っていなかったのです。


福岡の本屋さんの栞が、
海を超えて、今は私の手元にある。
どのような経路を辿ってきたのかは、
分からないけれど、
ちょっと面白く思った出来事でした。

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◆テスカトリポカ◆ [本]


テスカトリポカ (角川書店単行本)

テスカトリポカ (角川書店単行本)

  • 作者: 佐藤 究
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/02/19
  • メディア: Kindle版


『第165回 直木三十五賞 受賞』
『第34回  山本周五郎賞 受賞』


このダブル受賞は、
17年ぶり、2度目の快挙だという。
(ちなみに初のダブル受賞は、
 熊谷達也さんの「邂逅の森」でした。
 ↓
 https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2017-01-03
 こちらも傑作です)


こういう凄い本を読むと、
自分は小説家になるのは、
とても無理だな、と痛感する。
(そもそも、なれるとも思っていないが(笑))。


著者の佐藤究さんは、
日本人・・・なのよね?
メキシコや、インドネシアの、
裏社会を、
なぜこんなに深く描けるのか、


アステカの神話に詳しい、というより、
メキシコの老女の気持ちそのものになりきって、
その深い信仰心を
なぜここまで、強く描けるのか、
凄いとしか、言いようがない。
(もちろん、参考資料があるのは、
 巻末の一覧で分かるけれど、それにしても)





メキシコでは泣く子も黙る、
麻薬王の男が、
長い逃亡の末、
日本にやってくる。


彼は、日本人の屈強な男たちを、
「メキシコ式」
の教育で、殺し屋として育てる。


この
「メキシコ式」


というのが肝だ。


想像を絶する。
日本のヤクザとは、レベルが違い過ぎる。


全編、犯罪だけの本。
詳しい事は書けないけれど、
一人でも多くのかたに読んでいただいて、
この世界観を味わってほしいと思います。

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◆愛がなんだ◆ [本]


愛がなんだ (角川文庫)

愛がなんだ (角川文庫)

  • 作者: 角田 光代
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2012/10/01
  • メディア: Kindle版


2年半ほど前に観た、
映画「愛がなんだ」、
面白かったなぁ。
 ↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2019-05-09


これはその原作で、
物語の流れは、
映画とほぼ同じ。


ただ、小説なので、
当然の事ながら、
主人公のテルコの行動が、
さらに詳細に描かれていて、


彼女の、マモちゃんを思うが故の行動が、
映画以上にストーカーチック(笑)。


なにせ、テルコは、
「今夜、マモちゃんから食事の誘いがある・・・かも」
という理由だけで、
すぐ会えるよう、
彼の会社のある、
飯田橋だか神楽坂だかの近くで、
待機しているのだ。


それでも、連絡がなく、
仕方なしに、
高円寺の自室に帰って、
風呂に入っていると、
深夜に連絡が入り、
「今から、飯食わない?」の言葉に、
いそいそと出掛けてゆく。


そんな時、テルコは、
「ずっと、連絡待ってたのよ」
なんて、
拗ねて、言ったりはしない。
ストーカー行動をしている事や、
重い女と思われたくない事から、
「仕事が忙しくて、今帰ったとこ」と、
何でもない風を装う。


でもね、
重い女ってのは、
いくら隠しても分かっちゃうようで、
マモちゃんから、会話のあとで、
「俺、君のそういうところが苦手」なんて言われてしまう。


さらに、である。
マモちゃんとテルコは、
肉体関係があるというのに、


マモちゃんは、
自分が熱烈に恋している、
年上のすみれさんの話をし、
すみれさんと海に行きたいばっかりに、
テルコを必死で誘う。
すみれさんは、マモちゃんと2人きりでは来てくれないと、
分かっているから。
で、テルコは、マモちゃんとすみれさんと
3人で海に行くのだよ。


その辺の感覚が、私には分からん(笑)。
何で、そんな気の狂いそうな事を、
せねばならんの。
そこまでいくと、もう、
苦行だわ。
テルコは好き好んで、
その苦行を自ら行っているとしか思えん。


原作のすみれさんと、
映画のすみれさんは、
ちょっとイメージが違う。


映画のすみれさんは、
江口のりこさんが演じていて、
めっちゃ個性的でクールな印象だったけど、
本の方は、もう少し普通。


その辺りは、
映画の方が好き。

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