◆デンジャラス◆ [本]
文豪・谷崎潤一郎の、
妻・松子の妹・重子が一人称で語る、
谷崎の素顔。
重子は、
谷崎の小説「細雪」で、
三女・雪子のモデルと言われている事が自慢で、
自分は、
谷崎にとって、特別な人間だという自負がある。
2年半ほど前に、
「細雪」を読んだばかりなので、
↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2019-07-31
まだ記憶に新しく、
この小説は大変に興味深く、
そして面白かった。
私がとても気になった「細雪」のラスト、
『下痢はとうとうこの日も止まらず、
汽車に乗ってからもまだ続いていた』
が、この本でも触れられていて、
重子の夫、田邊は、
「なんやねん、あのラストは。
あれではまるで、
雪子の結婚が不幸になるのを予言しているみたいやないか」
と言っているのが可笑しい。
不思議な均衡を保っていた谷崎家に、
波紋が広がるのは、
松子の連れ子と結婚した千萬子を
谷崎が大層気に入り、
舅と嫁、という関係以上の親密さになった事。
千萬子は、気位が高く、
松子や重子のような古臭い考え方をする女と違い、
いかにも現代風で、小生意気な、
可愛げのない女で、
でも、谷崎の目には、
それがとても新鮮で、
面白い女に写る。
松子と重子は、
谷崎が千萬子に夢中になっていく様子を
傍からやきもきしながら見ている。
あたかも、それは、
今まで主役だった自分が、
脇役に降格されたかのような、失望感。
それでも重子は、
谷崎の新作小説「鍵」で、
↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2015-09-26
密かに、これは自分がモデルだと考え、
内心小躍りしたり。
他にも、
千萬子をモデルにして書いたと言われているのが、
「瘋癲老人日記」。
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https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2013-06-17
谷崎の家には、
常に女中を数名置いているのだけれど、
彼女たちの日常を描いた小説が、
「台所太平記」。
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https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2015-12-31
などなど、
多数の谷崎作品のタイトルが出てきたのが
面白くて、
夢中で読んだ。