「瘋癲老人日記」 [映画]
〔1962年/日本〕
元ダンサーの若尾文子は、
現在は、川崎敬三の妻として、
義理の両親と同居している。
舅・山村總は、病気で左手が利かず、
寝たり起きたりの生活だが、
若尾の事が大変に気になるらしい。
そんな山村の気持ちを知っている若尾は、
山村の部屋に通じるシャワールームで、
わざわざ、「今、鍵を掛けてないわよ」などと挑発的な事を言う。
山村は不自由な体を這わせるようにして、
シャワールームに入り、
若尾の足に接吻したりするが、
若尾は、シャワーをかけたりして山村を翻弄する。
若尾は山村に何か一つ許す度に、
高価なものをねだる。
首筋にキスさせた代償に、
大きなキャッツアイの指輪を手に入れ、
それを知った山村の妻や娘は驚く。
山村は、若尾にはいくらでも金を出すが、
実の娘には1円の援助もしないのだ。
山村は京都に自分の墓を建てたいと言い出し、
若尾を伴って出掛ける。
彼の夢は、墓石に仏足石を彫る事。
その足型を若尾の足から採りたいと、
彼女の足の裏に朱墨を塗り始める・・・。
谷崎潤一郎原作。
若尾文子さんの、この手の映画は大好きなはずの私だけれど、
これはさすがに、ちょっと受け付け難かった(笑)。
若尾さんと山村總さんの関係が、
もう完全に、女王様と下僕って感じで。
嫁と舅という関係なのに、
若尾さんは敬語を使う気さえ、まるで無し(笑)。
山村さんが、どういう気持ちでこの役を演じているのか、
そればかりが気になって仕方なかった。
谷崎文学を演じているという気持ちなのか、
何だって俺がこんな・・・と、自分を情けなく思っていたのか。
病気の山村さんが、
這うようにして、若尾さんに迫っていくと、
彼女は、「汚らしいわねぇ、お爺ちゃんは」と、
追い払うようで、突き放しもせず、
いい塩梅に、山村さんを転がす。
元が普通のお嬢さんなら、
こんな舅、毛嫌いしそうだけど、
水商売をしていた若尾さんにとっては、
そんな事はお手の物らしい。
そして、欲しいものをどんどん手に入れていく。
なにせ、山村さんちには、相当お金がありそうだ。
家政婦さんが2人に、
山村さん専属の看護師さんまで常駐している。
ただ、山村さんも、
年を取っても、女なら誰でもいいというわけではないようで、
この中年の看護師さんには、食指が動く気配はない(笑)。
このころの医療がどうなっていたのか、
若尾さんは、看護師さんが留守の時は、
山村さんに注射までしてやっている。
観ているこちらにしたら、
だ、大丈夫!?って感じで。
お客さんの殆どは、
中年以上の男性だったけれど、
皆さん、これを観てどう思われるんだろう。
私にはよく分からない(笑)。
評価 ★★★☆☆
山村さんのエロジジイ役が、イメージがわかないので・・どんなのかとても興味あります。
by ミスカラス (2013-06-17 19:36)
私たちの知り合いで、昭和の先輩と呼ぶお爺ちゃん(まだお若いですが)がいます。保護司の仕事もやっておられ、やんちゃな若い子の世話を親身になってやっておられます。この映画を見たら何ておっしゃるか?多分「何やってんだこの爺は?」でしょうが、意外と「やるじゃねえか、この爺」とか言ったりして。どっちだろ?
by さつき (2013-06-17 21:11)
読めませんでした・・・瘋癲。
フーテンといえば、寅さんだよなあ・・でも考えてみたら、
意味もちゃんとは知らないなあと気づいて、辞書を引いてみました。
ほんとに無知で^_^;
寅さんみたいにブラブラしている人、という意味のほかに、
精神状態が正常でないこと、とありました。うーむ・・・(笑)。
お金持ちで、いろいろなことがそこそこ思い通りになってきた人生だと、
女王様みたいな女性に強く惹かれてしまう、のかしら。
それにしても、おじいさんが、若尾さんに高価なものを買って
あげているのを知った奥さんや娘さんの気持ちって・・
そこリアルに想像するとこじゃないよ、って作り手から言われそうですが。
この作品、ラストどうなったのか、とても気になります。
レンタルになさそうなので、いつか原作を読んでみたいです。
by yonta* (2013-06-17 23:01)
ミスカラスさん
コメントありがとうございます。
私も全く同じでした。
いつも素敵な中年男性を演じておられる山村總さんが、
一体どんな風に、この役を演じるのだろう、って。
映画は、このジャケットの通りか、
それ以上でした(笑)。
山村さんが気の毒になったくらいです。
by 青山実花 (2013-06-17 23:34)
さつきさん
コメントありがとうございます。
お知り合いの素敵な昭和の先輩さんは、
おそらく現在は、「何やってんだ?」で、
時代が移行するにつれて、
「やるじゃねえか」に変わっていくような気がします。
(すみません、私の想像です(笑))。
いくつになってに、人間は枯れないものなのですね。
by 青山実花 (2013-06-17 23:38)
yonta*さん
コメントありがとうございます。
私も若尾さんの映画がなかったら、絶対読めなかったと思います。
よく見てみると、フーテンって「やまいだれ」なんですね。
そっかぁ、寅さんはある種の病気なのか・・・と、
変な所で感心してしまいました(笑)。
yonta*さん、鋭いです。
映画の中で、娘さんは何度も、
「家を建てる為の援助をしてほしい」と頼むのですが、
山村さんは毎回、大変冷たく拒絶するんです。
妻から「実の娘より、他人が大事なんですか」と言われても、
色ボケ(言葉は悪いですが、実際そんな感じです)となってしまった
彼は、意に介さず。
本気で娘さんが気の毒になる場面なんです。
yonta*さんのコメントを読ませていただいて、
私も色々調べてみましたら、
なんと、1987年にオランダでリメイクされているんですね。
日本でもビデオ化されたようですが、
Amazonにも無いようで。
気長に探してみようかと思います。
この若尾さんの方も観てみてくださいと言いたい所なのですが、
ちょっと気持ち悪くなってしまいそうなシーンもあって、
「ぜひに」とは言えない感じです(笑)。
原作の方が、直接的でない分、いいかもしれません。
by 青山実花 (2013-06-18 00:03)
>皆さん、これを観てどう思われるんだろう。
男って哀しいものだって思いながら観たんでしょうね
by いっぷく (2013-06-18 08:34)
いっぷくさん
コメントありがとうございます。
哀しいもの・・・そうなんですね。
私の隣に座っておられた、初老の男性は、
「げっ!、そんな不潔な・・・」と私が目をつむってしまった場面で、
何か声にならない声を発しておられました。
その後、劇場を出られて、戻って来なかったです。
理由は分かりませんが・・・。
by 青山実花 (2013-06-20 16:34)