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「ストックホルム・ケース」 [映画]

stockholmcase.jpg
〔2018年/カナダ・スウェーデン〕


スウェーデン、ストックホルム。
この街のある銀行にアメリカ人のヒッピーのような恰好をした男、
ラース(イーサン・ホーク)が
強盗に入った。


彼は女子行員のブリジッタ(ノオミ・ラパス)と、
クララ(ビー・サントス)を人質に取り、
現在ムショに入っている友人のクラークの釈放と、
車、金などを、警察に要求する。


恐怖に怯えるブリジッタたちだったが、
警察、政府、銀行の対応のマズさに、
立て籠もりの時間が長引くにつれ、
犯人たちとの間に
不思議な連帯感が生まれてくる。


銀行の建物の外は、
警察、マスコミ、野次馬でごった返し、
大変な騒ぎ。
ブリジッタたちはどうなるのか・・・。





「ストックホルム症候群」の語源になった事件の
映画化。


まず最初に書きたいのだけれど、
「ストックホルム症候群」という言葉を
違った意味で捉えている方がいるように思う。


以前、ある人から、
「女は男に乱暴されると、その男にシンパシーを抱くようになる。
 だって、ストックホルム症候群という例もあるでしょ」
と言われた事がある。


何言っちゃってるんだろう。
加害者に都合のいい理屈を、まぁ。
Wikipediaによると、
「ストックホルム症候群」とは、
心的外傷後ストレス障害であり、
生き残るための当然の戦略であると書かれてある。


そういう、加害者側に立つ人は、
この映画を観るがよい(笑)。


事件が起こった1973年。
劇中のセリフにもあるけれど、
「これはスウェーデン初の立て籠もり事件」
という事らしく、
警察も、政府も、
全ての対応が後手後手に回り、
してはいけない事の連続で、
事件を長引かせたいのか?と言いたくなることばかり。


今なら、同様の事件には、
必ずマニュアルがあるだろうし、
犯人の心理なども研究されて、
もっとずっとマシな対応が取られる気がする。


ブリジッタたちが、
「国も、警察も、銀行も、私たちを助けてはくれない」という
絶望的な気持ちになるのは当然であろう。


それに、犯人のラースとクラークは、
話してみると、そこまで悪い人間ではないのだ。


彼らは、別に暴力的ではないし、
意外と優しい。
ブリジッタは、自宅に電話をして、
夫や子供と話をしたりする。


しかも、
ラースが前科者なのは、
昔、小児性愛者を殺したからだと言う。
それが本当なら、
なんだ、いい奴じゃん・・・とまでは言わないが(笑)。


つまり、ブリジッタたちと、ラースたちに
連帯感が生まれたのは、
それなりに理由があっての事で、
乱暴されて、いきなりシンパシー、
なんて事では絶対に、ない。


そこまで悪い奴らでないなら、
なんだかもう、
上手く逃げられたらいいのに、
という気持ちになる。
オチは書かないけれど。


評価 ★★★☆☆

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コメント 4

tommy88

「乱暴されて、いきなりシンパシー」は教養のない下品な頭空っぽ人間の自分勝手な妄想です。人間として与えられているマットウな想像力が欠如した連中のすがる現実逃避です。そういうセリフが平気で吐けるおバカさんとは距離を置きたいものです。躾がなっていない予備軍かしらねぇ。ちなみにイーサン・ホーク、いつまでたっても哀愁ただようつぶらなお目目がいとおしいです。


by tommy88 (2020-11-21 17:09) 

青山実花

tommy88さん
コメントありがとうございます。

全く同感です。
そういう事を言う輩は、
被害者が、自分の、
娘だったら、
姉だったら、
妹だったら、
妻だったら、
恋人だったら、
という想像力がないのです。
同じ事を、
娘や
姉や
妹や
妻や
恋人に言えるのか、と聞きたいです。
by 青山実花 (2020-11-22 21:23) 

裏・市長

あ!青山実花さんもご覧になったんですか!、
「ストックホルム・ケース」。

実はボクも観たんですよ、
「ストックホルム・ケース」劇場で。

もう劇場の環境が最悪でしたね。
今どき、これだけコロナが再度活発に感染拡大
している中、都会では座席を
ひとつおきに販売するのが常識でしょう?。

それを「当館では全席販売しております」と、
さも自慢げに…。
田舎というのもありますし、関西と言う土地柄も
あると思います。

「せっかく客おるのに、半分しか売らんって、
 儲からんやないかいワレ、みな売ってこませや!ワレ」。

それで館内に客を詰め込むのです。
コロナがなければ立ち見になって、スクリーンの前に
体育座りで観る人も出たでしょう。
それほど本作は大人気映画でした。

内容的にはストーリーはごく単純。
冒険やファンタジーはなし。
ほぼ銀行内で展開される密室劇…と
いったところでしょうか。

ただ、この描き方ではマスコミ、警察のほうに
観ているこちらも敵意を抱いてしまいそうです。
とにかく「警察はなめられちゃいけない」ですから。

人命は二の次、三の次です。

実際ワタシも映画を観終えた後、国家権力に反抗心を
憶え、テロリスト組織に入団しようかと思えたほどです。
間違えてストリップ小屋に入ってしまい、
エロリストに第二次性長してしまったのは、
ここだけの話にとどめてください。

もし、青山実花さんが銀行強盗に人質にされた際は、
警察より先にご一報ください。真っ先に現場に
駆け付け、野次馬として声援を送り、
青山実花さんのご無事をアラーの神に祈ります。


by 裏・市長 (2020-11-28 15:40) 

青山実花

裏・市長さん
コメントありがとうございます。

裏・市長さん、
あなたが、わたくしと同じ、
「ストックホルム・ケース」を観た、というのは
よーく分かりました。

でも、
「劇場が最悪でしたね」と念を押されましても、
わたくし、どうお答えすればいいのでしょう。
裏・市長さんがどちらの劇場で観たかなんて、
わたくし、知りませんもの。

そうですか、
そんなに密でしたか。

右も、左も、前も、後ろも
ギュウギュウで、
身動きが取れなかったのですか?

隣のおっさんが扇子で仰ぐ、
コロナウィルスの混ざった空気が、
裏・市長さんの方まで
流れてくる感じでしたか?
そのような不安な環境で、
映画を心底楽しめるのでしょうか。


え?わたくしですか?

わたくしは、
以前ブログにも書いた、
新宿ピカピカデリーの
プラチナルームで、
この映画を観ました。

一部屋たったの50万円ですから、
お安いものです。

赤の他人と一緒に映画を観るなど、
新コロに感染しに行くようなもの。
なぜ皆様、このプラチナルームを利用しないのか、
不思議に思っております。

by 青山実花 (2020-12-07 21:39) 

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