「杏っ子」

〔1958年/日本〕


高名な作家・平山平四郎（山村聡）は、
妻と、
娘・杏子（香川京子）と
息子・平之助（太刀川洋一）の家族4人で、
ある高原に疎開している。


年頃の杏子に、
縁談が次々舞い込んでくるが、
杏子はどの話にも、今一つ食指が動かず、
そんな時、近所に住む漆山亮吉（木村功）が、
杏子と結婚させてほしいと、平山に申し出る。


亮吉と杏子は結婚し、
本郷に新居を設けるが、
亮吉は売れない小説を書き、
生活は苦しい。


そんな娘夫婦を見兼ねて、
平山と妻は、自分の家の離れを提供するが、
荒んでしまった亮吉は、
朝から酒を飲み、
杏子に当たり散らし、
その声は、平山の母屋にまで聞こえてくる。


結局、また別のアパートを借りた杏子たちだが、
貧しい生活は変わらず・・・。





室生犀星原作小説の映画化で、
タイトルだけは知っていたけれど、
こんな話だったんだ。


出だしは、高原で暮らす、
作家一家ののんきな話という風情で、
これがずっと続くのかと思ったいたけれど、
とんでもない間違いだった。


杏子の根性には頭が下がる。
私だったら、こんな夫、
とっくに見限って出てゆく。


それほど、木村功演じる夫は酷い。
生活力がなく、
毎日毎日小説を書いては、
出版社に持ち込むも、まるで相手にされない。


それでも夫が優しく、穏やかだったら、
まだ救われる。
彼はそんな自分を恥ずかしく思うのか、
杏子に当たり散らすその様は、
観ているこちらが、
辛いというより、呆れ果てると言うしかない。


彼がなぜそこまで依怙地になって、
小説家を目指すのか、
それは、偉大すぎる舅・平山への
プレッシャーに他ならない。


平山は一度も亮吉を責めた事などないのだけれど、
亮吉が勝手に一人で、
舅を意識し、
時に、負け惜しみを口にする。


平山の家に間借りしているときの場面が
一番辛かった。
平山とその妻にしたら、
毎日毎日、娘が婿から酷い仕打ちをされるのを見続ける事になる。
私だったら、娘が可哀想で気が狂いそうになるだろう。
そして、その苦しさから逃れたい一心で、
「別れたら？」と口に出してしまいそうだ。
それでも平山は、
「夫婦の事だ」と、口出しはしない。


どうやら原作では、
離婚するようだけれど、
映画の杏子は、
絶対に別れるとは言わないし、
ものすごく強い。
あの強さはどこから来るんだ。


親は大金持ちだし、
離婚したって生活の心配は全くないのに・・・
と思う私は、
相当に甘えている女なのでしょうね(笑)。


これは絶対、原作を読まなければと
強く思った1本。


評価　★★★★☆

コメント 12

結婚を通して女の幸福の限界を・・・
今のｱﾀｼσ(￣ ￣〃)は幸せなのか？(〃－｀ω´－)ﾝｰ
平凡が幸せなのかな？
by 原みつる (2015-11-16 19:59) 

小説で飯を食おうと考えていたが甘かったか。(￣◇￣;)
by U3 (2015-11-16 22:22) 

私も、題名は知っていましたがまさかこんな内容とは
思っていませんでした。可愛らしい響きですものね。

売れない作家、怖いですね。
若気の至りでした。雰囲気と顔で言うとタイプは芥川なのですが

でもそれでもやっぱり好きだったら耐えられるのかな。
実は今流行りのツンデレだったりしてw


by su-nya (2015-11-17 04:20) 

木村功さんが高村光太郎役のドラマを視たことがありますが
とても、はまり役だと思いました
智恵子役は・・・アレ、でてこない・・・
「若者たち」に出てた女優さんで、どなたかの娘さんで・・・認知症かなぁ＾＾
by mitu (2015-11-17 06:45) 

原みつるさん
コメントありがとうございます

そうですね、
平凡は幸せだと思います♪
私も、「平凡こそ命」の女です～＾＾；

by 青山実花 (2015-11-17 22:15) 

U3さん
コメントありがとうございます

いえいえ、それは一人一人で違うのではないでしょうか。
この映画の亮吉は才能が無かっただけで、
U3さんは上手くいくかもしれません♪
by 青山実花 (2015-11-17 22:16) 

su-nyaさん
コメントありがとうございます

そうなんです。
私も、杏の実のなる高原かどこかで
繰り広げられる、青春物か何かだと思っていました。

私は、早速原作を読み始めたのですが、
なんと、芥川竜之介ご本人が登場します。
この物語は、室生犀星の自叙伝と考えていいようですね。

売れない作家さんを支えるのは、
相手の態度次第かもしれませんね。
「大変な思いをさせてごめんね」という態度を示されれば
頑張れるかもしれませんが、
この映画の亮吉の、荒みっぷりは見るに堪えなくて・・・。
あんな男では軽蔑さえしてしまいそう・・・。
by 青山実花 (2015-11-17 22:23) 

mituさん
コメントありがとうございます

調べてみた所、
木村功さんの「智恵子抄」の相手役は、
佐藤オリエさんとなっていました。

認知症だなんて、早すぎます～。
誰かの名前が出てこないって、
私なんか、しょっちゅうです～＾＾

by 青山実花 (2015-11-17 22:27) 

佐藤オリエさんでした
あ～スッキリ！！！ありがとうございました(^^)/
by mitu (2015-11-18 11:58) 

本筋とは違いますが、太刀川さんとは一緒に仕事をしていた時期があります。「杏っ子」を観ておくべきでした。
by sig (2015-11-20 19:44) 

mituさん
コメントありがとうございます

良かった、
mituさんがスッキリされて、
私も嬉しいです♪
by 青山実花 (2015-11-21 20:55) 

sigさん
コメントありがとうございます

太刀川洋一さん、
杏子の弟役でしたね。
綺麗なお嫁さんをもらって、
杏子とは正反対に、幸せな結婚をするという
設定でした。
この映画は、ラピュタ阿佐ヶ谷で観たんですよ。
知っていれば、sigさんにお声をお掛けしたのに。
残念です。

by 青山実花 (2015-11-21 20:57)