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「東京家族」 [映画]

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〔2012年/日本〕


広島の小島に住む老夫婦、
平山周吉(橋爪功)ととみこ(吉行和子)は、
東京に住む3人の子供たちを訪ねてやって来る。


長男・幸一(西村雅彦)と、その妻・文子(夏川結衣)。
長女・滋子(中嶋朋子)と、その夫・庫造(林家正蔵)。
そして次男・昌次(妻夫木聡)。
滞在先は、幸一の家で、
最初の夜は、それなりに楽しく過ごす。


幸一は開業医、滋子は美容院経営と、
順調に暮らしているが、
心配なのは昌次だ。
舞台美術の仕事といえば聞こえはいいが、
フリーターのようなもので、
元教師の周吉には、昌次のそんな生き方が理解できない。


子供たちは、久し振りに会う両親を、
歓迎する素振りは見せるものの、
自分の生活が忙しく、
ペースを乱す両親の上京を、
疎ましく思わないと言ったら嘘になる。


幸一と滋子は相談の上、
横浜の高級ホテルに両親を泊まらせる事にする。
都内をあちこち歩くより、
その方がゆっくり出来るだろうとの考えだったが、
泊まり慣れないホテルに、
両親は1泊で帰ってきてしまう。


その後、周吉は、昔の知り合いに会いに行き、
とみこは昌次のアパートに泊まる。
とみこは昌次の恋人・紀子(蒼井優)を紹介され、
しっかり者の彼女に一安心するが、
その後、思いがけない展開になる・・・。





小津安二郎監督の名作、「東京物語」をモチーフに、
山田洋次監督が作った映画という事だ。
リメイクというほどではないけれど、
基本的な流れは、
「東京物語」と同じだ。


上京してきた年老いた両親と、東京で暮らす子どもたち。
彼らは互いに気を使いあってはいるけれど、
どこかギクシャクしていて、
なんとも歯車が噛み合わない。


子どもには子どもの生活があり、
親の相手をしてやりたい気持ちはやまやまだけれど、
現実にはそれもかなわないほど忙しい。
横浜のホテルにやったのだって、
表向き、「その方がくつろげるだろうから」と言ってはいるけれど、
体よく追い払われているように、
観る者には感じられるし、
実際、その後、そのようなセリフがある。


これは感想を書くのが難しいな。
私自身、どうしても、
子ども世帯の目線でこの映画を観てしまうので、
本当の意味での、
親の哀しみは理解できない。


うっすらと子どもに邪険にされる親を、
可哀相だと言ってしまうのは簡単だけれど、
でも、現実問題、
どうすればいいのかというと、分からなくなる。


それにしても、
子どもの出来不出来が、
人生の終盤において、
ここまで、「成功」「失敗」と分けられるのかと思う。
というのも、
周吉が、久し振りに友人と酒を飲んだ時、
そのような事を言われるんだな、
「お前は息子が医者だから、子育て成功」みたいな事を。


人は、死ぬまで、
「成功」「失敗」「勝った」「負けた」で生きていくんだと、
常々思ってはいたけれど、
こうハッキリと、それを見せつけられると、
なんともガックリくるね。
そういう私自身も、
そのような価値観で生きている部分がある事を
否定できないし。


蒼井優の登場シーンがとても好き。
というより、
家族家族できていたお話しの中に挟まれた、
唯一、色恋っぽいエピソードだったから、
ちょっとホッとできたのかもしれない。


なんか上手い事書けない。


評価 ★★★☆☆

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コメント 4

いっぷく

山田洋次って、結構毒のある台詞の作品作りますよね。
寅さんでも、女性はずいぶん無神経で残酷な
こと言ってるシーンがあったし。
山田洋次は東大時代、共産党の駒場細胞(支部)に
いた人ですが、そういう人間の嫌なところを
描くのは、山田洋次自身が官僚主義というかスターリニズム
の外面民主主義者だからなのか
マルクス・エンゲルスの科学的社会主義という立場から
人間性弱説に基づいてあえて弱いところ、悪いところを
慈しみを以って描いているのか、
そういう社会主義者としての路線のような
ものを確認してみたいという興味が有ります。
山本薩夫とか今井正などは後者だと思うんですけど。
by いっぷく (2013-01-21 04:21) 

su-nya

うん、うん、わかります。
東京物語の原節子さんの立派すぎる態度と笑顔、
そして自分でも「私ずるいんですの」、みたいなことを言っている。
あんな風な子供世代は幻想だといわんばかりに。

あと、人生や子育ての成功、失敗。
負け犬という言葉が流行ってイヤーな感じがありました。
人生で勝ち負けって言われると、私なども本当に滅入ってきそうになります。

「東京暮色」というのを3日間限定でうちの近所で上映していたので
行こうかなと思っていたら、愛猫の見送りで、行けませんでした。

テレビでやっていたのをちらっと見ただけですが、
蒼井優さんは「おとうと」でもそんな感じの役でしたね。
すごい美人ではないのに、不思議な雰囲気のある人です。
by su-nya (2013-01-21 05:49) 

青山実花

いっぷくさん
コメントありがとうございます。

たしかに寅さんは、ずいぶん言いたい放題な場面もありますね。
寅さんが何か理不尽な事を言い出した時、
「私だったら、こう切り返す」と思った事が何度あった事か(笑)。

なるほど、山田監督にはそういった側面がありましたか。
映画の監督さんの中には、
色々な主義主張を持った方がいて、
サブリミナル効果のように、
いつの間にかそれに影響されながら、
映画を観ている場合があるんですね。

山田監督のこの手の映画って、
なんか悪口が言いにくく出来ている。
いっぷくさんが書かれているようなものが、
透けて見えるのでしょうか。

by 青山実花 (2013-01-21 23:07) 

青山実花

su-nyaさん
コメントありがとうございます。

そういえば、原節子さん言っていたような気がします、
「私ずるいんですの」って。
この映画には、原さんに当たる人は出てこないのですが、
その代わり、自分がずるい人間になった気がします。
色んな意味で。

その一つに人生の「勝ち」「負け」の本音があります。
出来れば人と張り合いたくはないのだけれど、
でも、自分だって張り合っていないと言えば嘘になる。
人は死ぬまで、「勝った」「負けた」。
昔の友達には幸せアピール。
人間って、そうやって生きていくんですね。
最近、色々あって、さらにその思いが強くなりました。

「東京暮色」は本当に悲しいお話ですが、
ぜひsu-nyaさんに観てほしいです。

蒼井優さんは不思議な方ですね。
ほんわかしているかと思えば、
ゴシップ誌では色々違う面が書かれたりして、
その多面性が面白い。
これからが楽しみな女優さんの1人です。

by 青山実花 (2013-01-21 23:26) 

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