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◆暗渠の宿◆ [本]


暗渠の宿 (新潮文庫)

暗渠の宿 (新潮文庫)

  • 作者: 西村 賢太
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/01/28
  • メディア: 文庫


またまた読んでしまった、
西村賢太氏の私小説。
好きだねぇ、私も(笑)。


中編が2編収録された本作。


1作目は西村氏のデビュー作、
「けがれなき酒のへど」。
ソープ嬢に入れあげた、
おそらくは西村氏本人であろう主人公が、
100万円近い金を騙し取られる過程が、
克明に描かれる。


そっか、男を騙して金を取る手口ってこんななのかと、
妙に感心させられたりもする(笑)。


主人公は、
金を払って女を買うのではなく、
普通に付き合える恋人を、
喉から手が出るくらい渇望し、
それをソープ嬢の中から探そうという無謀とも思える計画を立てる。


件のソープ嬢は、他のベテラン嬢と違い、
どこか素人っぽい女の子で、
純情そうな物腰で、実に巧みに主人公の心を捉える。
普通に考えれば有り得ない言い訳
(ケータイは持っていないとか)も、
主人公の気持ちに、焦りというフィルターがかかっている為、
疑いのネタにはならない。





本のタイトルにもなっている、もう1作は、
西村氏の読者にはお馴染みの、
人生でたった一度、同棲したした女の子との、
出会いから、アパート探し、
最初に声を荒げた時、
そして、初めて暴力を振るった時の事が、
これまた克明に描かれる。


暴言を吐いたり、殴ったりする理由というのが、
どこでスイッチが入るのか分からなくて怖ろしい。
「生ラーメンのメーカーを間違って買ってしまった」とか、
「主人公が入っているトイレを誤って開けてしまった」とか、
普通なら、「ごめんね」で済む事を、主人公は許さない。


粗忽者で、注意力散漫な私が、
もし西村氏と一緒に暮らしていたら、
1000回くらい殴り殺されていると思う(笑)。


あんなに望んでいた恋人なのだから、
なぜ大切にしないのかと、そこが私には不思議だが、
彼も、そんな自分が分かっているようで、
1編目の「かぎりなぎ~」のラストで、
我と我が身を振り返って、嘔吐したりしている。


やっぱり面白い。
あと数冊残っている、
西村氏の未読の著書、
おそらく全制覇してしまう気がする。

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don

苦役列車、予約確保とのことなので、
あす図書館で借りてきます^^
by don (2012-04-14 12:56) 

青山実花

donさん
コメントありがとうございます。

「苦役列車」楽しみですね。
私も西村賢太氏の本との出会いは、
「苦役~」でしたので、
なんだかもう一度読んでみたい気持ちでいます。
by 青山実花 (2012-04-14 16:59) 

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