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「にあんちゃん」 [映画]

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〔1959年/日本〕


朝鮮戦争後の佐賀県。
在日コリアンの4人兄弟、
キイチ(長門裕之)、ヨシコ(松尾嘉代)、タカイチ(沖村武)、スエコ(前田暁子)は、
炭鉱夫だった父を亡くし、今まさに葬儀の真っ最中だ。


炭鉱の町は大変な不況で、
人々の生活は困窮しており、
仕事を見つけるのも難しい。
キイチはなんとか炭鉱の臨時雇いに採用されたが、
本採用になる見込みはなく、
またヨシコも近所の家の子守の仕事をするが、
小学生のタカイチとスエコを養うのは大変だ。


案の定、キイチもヨシコも仕事を失い、
2人は唐津に働きに出掛ける。
その間、弟たちは近所の辺見源五郎(殿山泰司)の家に預けるが、
辺見の家も生活が苦しく、
辺見の妻に、あからさまに嫌な顔をされる。


さらに辺見は炭鉱で大怪我を負ってしまい、
炭鉱自体も閉鎖になってしまう。
タカイチとスエコは、
今度は亡くなった父の友人の家に行くが、
山奥の掘っ立て小屋に彼らの居場所はなく、
また町に戻ってくる。


2人に親切にしてくれたのが、
保健婦のかな子先生だったが、
彼女も貧しい街の保健指導に限界を感じ、
近々、東京に戻って恋人と結婚する予定だという。


どこまでも行き場のない兄妹だったが、
スエコから“にあんちゃん”と呼ばれるタカイチは逞しく、
なんとかして生きる道を模索する。
いつか必ず4人が暮らせるその日を夢見て・・・。





今村昌平監督作品。


在日コリアンの兄弟が主人公という事で、
大変な差別の物語かと思っていたが、
それは殆ど前面に出てこず、
彼らが日本人だとしても、
普通に通じる話であった。


とにかく町全体が貧しくて、
差別だの、いじめだのと言っている場合でないのである。
人々は日々、会社側との交渉に追われ、
自分たちが食う事で頭が一杯。
誰がどこの国籍だろうと、
そんな事は二の次三の次のようだ。


しかし、何だかんだ言っても、
人々は食べている。
キイチは「映画に行く」と言って、
タカイチと取っ組み合いの喧嘩をしたりもする。
なので思っていたほどの悲惨さは伝わってこない。
小学生とはいえ、タカイチも、
なんとかアルバイトで凌いでいる。


タカイチが全く悩んでいないのがいい。
それは「前向き」とも違う、
(「前向き」っていうと、なんだか無理に自分を奮い立たせている気がする)
とにかく、何かを苦にするという事が、彼には無いようだ。


彼は思い付きで、
何の当てもなく一人フラリと東京に行ったりもするのだ。
(通報されて、すぐ連れ戻されるけど(笑))。
あの、何も考えていない感じは、
逆に見習いたいくらい(笑)。


評価 ★★★☆☆

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コメント 2

k_iga

去年の夏、文庫本が発売されてましたが泣きそうな予感がして
購入を見送りました。弟妹思いの兄姉というのに弱いです。

by k_iga (2012-01-05 05:52) 

青山実花

k_igaさん

それはぜひ読んでみてください。
そして、ご感想を聞かせてほしいです。
泣いてもOKですよ、
電車の中でもない限り(笑)。


by 青山実花 (2012-01-06 14:35) 

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