◆赤目四十八瀧心中未遂◆ [本]
主人公は世捨て人のような男である。
学歴もあり、
サラリーマン生活も経験したが、
今は尼崎のアパートの一室で、
牛や鶏の臓物に串を刺す仕事を、
日がな一日こなしている。
アパートは、
ヤクザ、売春婦、彫り物師など、
これまた社会の道から外れた人間が住む、
「この世の果て」のような場所であり、
主人公はそこで、一人の美しい女、アヤ子と出会う。
アヤ子は彫り物師の情婦であったが、
ある日、主人公の部屋に突然入って来、
ほぼ無言のまま、二人は交わる。
その場面は強烈である。
あらゆる欲望を棄てたと思われた男が、
アヤ子の誘いで欲情する。
私には、彼に一条の生きる力を見た気がした。
何とも不思議な味わいの小説である。
主人公は無気力でありながら、
死の匂いは感じない。
ただ、そこにいる。
彼は彼自身でしかない。
ラストまで読ませる。
もし出来るなら、
今度はアヤ子の人生を読んでみたい。
彼女の人生は、物凄く興味深い。
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