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「女衒 ZEGEN」 [映画]

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〔1987年/日本〕


明治時代。
村岡伊平治(緒形拳)は、
故郷・島原を捨てて、
香港にやって来た。


シベリアで密偵の仕事などしていた伊平治だが、
幼馴染の女・しほ(倍賞美津子)が、
シンガポールで女郎をしているとの噂を聞き、
彼女に会いに行く。


しほを買い戻した伊平治は、
香港で女衒を始める事を思い付き、
日本の女を多数密航させる。


商売は成功し、
4つの娼館を経営するまでになった伊平治だが、
天皇が崩御し、
廃娼制度ができ、
世の中は変わろうとしていた・・・。





「女衒」なんてタイトルだから、
もっとジメジメした内容かと思ったけど、
案外、そうでもなく、
コミカルな場面も多い。


それは、舞台が東南アジアというせいもあるのかも。
他の映画で観るような、
「女郎屋に売られた、女たちの哀しみ」
のような感傷は、
この映画にはない。


Wikipediaによると、
この映画、
客が全く入らず、
予定より早く上映打ち切り、
さらに、出品したカンヌ映画祭では、
殆ど無視されたそうだ。


まぁ、そうでしょうね。
だって、面白くないし(笑)。


女性を、ほぼ騙す感じで連れてきて、
男の相手をさせるなど、
1987年の作品とはいえ、
嫌な気持ちになるし、
かといって、
女性の気持ちに寄り添った内容でもない。


緒形拳さん演じる伊平治がまた、
それを、そう悪い事だと思っていないのも、
始末が悪い。


ラストの伊平治は、
滑稽やら、哀れやら。
世の中の流れに、
自分をアップデートできないと、
ああいう最後になるのか、という思い。


評価 ★★☆☆☆

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「山男の歌」 [映画]

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〔1962年/日本〕


大学の山岳部の部員、
森田(藤巻潤)と、有川(小林勝彦)は、
親友同士。


有川は、
自分の誕生パーティに、
密かに思いを寄せている、
同じ大学の妙子(三条江梨子)を招く。
両親も、姉も、
妙子を、大層気に入ったようだ。


パーティの帰りに、
有川は、妙子に自分の気持ちを打ち明けるが、
妙子から、
「自分が好きなのは、森田」
と言われてしまう。


打ちのめされた有川だが、
森田に振られた事を打ち明け、
その後、
2人は剣岳の岸壁に挑んだ。


すると、有川が足を滑らせて、墜落し、
死亡してしまう・・・。





恋敵の友人と、
険しい剣岳に挑み、
滑落して死亡する学生・有川。


世間は、
生き残った森田に、
批難の目を向け、
森田も、
自分のせいではないかと苦しみ、
もう一度、
同じ岸壁に挑戦する。


しっかし、
有川も、
恋の手順を間違えていやしないだろうか。


まだ、妙子の気持ちも聞かぬまま、
先に家族に会わせるとか。
それも、山岳部の仲間の一人としてでなく、
いかにも、この先、
自分の嫁にでもしそうな勢いで。


妙子の気持ちが、
どう見ても、自分にない事は分かりそうだけど、
やっぱり恋しちゃうと、
分からないものなんだろうか。
有川に強引に迫られ、
断るために、
「私が好きなのは森田」と
言いたくもないのに、言わなくてはならなかった
妙子が気の毒だ。


どーでもいいけど、
これと全く同じ話を、
タレントのクリス松村さんが、
テレビで話されていて、
凄く印象に残っている。


クリスさんの友人が、
ある女性に恋心を打ち明けるも、
その女性から、
「私が好きなのは、クリスさん」だと言われて、
振られてしまう。


映画と違うのは、
実はクリスさんは、
その友人に恋をしていて、
彼の恋敵になってしまった事が、
本当に悲しかった、というオチ。


映画を観ながら、
実は森田が、
有川を好きだった、


なーんて内容だったら面白いと思ったけど、
さすがにそれはなかったです。
それだと映画のテーマが変わってきてしまう(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「喜劇 男の腕だめし」 [映画]

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〔1974年/日本〕


小原松太(湯原昌幸)は、
警察官だった父に憧れ、
自分も刑事になった。
父は高潔な人物で、
殉職しており、
松太は、そんな父を深く尊敬している。


一方、
ストリップ劇場「春風ミュージック」の
小屋主・八田庄助(フランキー堺)は、
公然わいせつで捕まったストリッパー、
緋桜お駒(太地喜和子)を
警察まで迎えにきた。


警察署内で初めて出会った2人だが、
「どうも馬が合わない」と、
互いにそう感じ、
松太は、庄助の劇場の手入れを
熱心にするようになる。


そんな中、松太の母・トミ(市原悦子)が
松太の働きぶりを見るために、
田舎から上京してくるが、
庄助の姿を見た瞬間、
息も止まるほど驚き・・・。





以前、感想を書いた、
「喜劇 女の泣きどころ」と、
「喜劇 男の泣きどころ」、
 ↓
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2022-11-19
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2023-12-24

そして、この、
「喜劇 男の腕だめし」が、
太地喜和子ストリッパー3部作と
言われるシリーズ。


この3作の中で、
私は本作が一番面白いと思った。


このような古い映画、
誰も観ないと思うので(笑)、
ネタバレしてしまうけど、


刑事の湯原昌幸さんと、
ストリップ小屋経営のフランキー堺さんは、
実は親子だった、
という事実が分かるのだ。


ショックを受けるのは、
どちらもなんだけど、
私は、フランキー堺さんの気持ちが
心に染みた。


まさか、想像もしていなかった息子がこの世にいて、
しかも、立派な刑事になっているという事実が、
彼の気持ちを変える。
ものすごく愛おしい気持ちで、
湯原さんを見つめて、
そして、こんな仕事からは足を洗おうとまで考える。
あぁ、親子っていいな、
自分の子供というだけで、
こんなにも変われるものなのかと、感動しちゃった。


逆に湯原さんは、
尊敬していた父が、実父でなかった事が衝撃で、
全てに投げ槍になってしまうのが悲しいけど。


フランキー堺さんが、
3人のストリッパー(園佳也子・春川ますみ・川村真樹)と、
それぞれに内緒で付き合っているのだが、
それがバレて、
大喧嘩になる場面には爆笑。
3人とも、芸達者でクセの強い女優さんだから、余計に。


結局、最後、
フランキーさんと湯原さんは、
親子でない事が証明されて、
湯原さんは、気持ちを立て直し、
刑事に戻る。


良かった。
若者が、なりたかった職業を投げ出すのは、
勿体なさすぎるもの。


評価 ★★★☆☆

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「母恋星」 [映画]

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〔1949年/日本〕


金持ちの市橋家の一人息子・高行(夏川大二郎)は、
使用人の澄(三益愛子)と恋仲になり、
澄は妊娠する。
しかし、高行の父は、澄を預かるとして、
高行を留学させる。


高行の父は、高行の居ぬ間に、
澄を、運転手の坂上に、
お腹の子供ごと、押し付けようと計画していたが、
澄は市橋家を飛び出し、
以来、女手一つで、
生まれた息子・高夫を育ててきた。


小学校を卒業した高夫は、
成績優秀だったが、
貧しさのため、中学に進学できず、
新聞売りをしていた。
そこで、偶然、父の高行と出会う。


高行は結婚していたが、
子供がおらず、
高夫を引き取りたいと、
澄に申し出た。


貧しい自分が育てるよりも、
高行の家から学校に通わせた方が、
高夫の将来のためになる。
澄は、引き裂かれるような思いで、高夫を手離すが・・・。





「母もの」を演じたら、
右に出る者はいないと言われた、
三益愛子さまの、
泣かせる映画。


愛する男の子供を産み、
一人で育ててきた母・澄だけど、
貧しさから、
息子の高夫を中学に入れてやれない。
実際、高夫は、
受験をして、
試験に合格しているのだ。
なのに、進学を諦める様子が、
観ているこちらは、
勿体なくて、ガックリする思い。


そんな所に、偶然現われた父・高行。
金持ちの父は、
高夫を引き取って、学校に行かせてやると言う。
その申し出は、
本当に嬉しいけれど、
でも辛い。


結婚している高行は、
澄まで引き取るわけにはいかず、
母子は引き離される。
今まで親子2人で、
肩を寄せるように仲良く暮らしてきたのに、
突然、子供がいなくなるって、
どれだけ淋しい事か。


でも、これ、
澄と高夫の生活はそのままで、
高行は、金銭的な援助だけする、
という風にはできなかったのかな、と映画を観ながら思う。


それだと、
妾と隠し子を囲っているようになるので、
無理か。
でも、澄は、
妻より先に高行と出会って、
子供を産んでいるのだから、
養育費を払うのは当然のような気がするのだけれど。
今とは、感覚が違うのかもしれない。


その後、澄は、
正当防衛から、人を殺めてしまい、
高夫の将来を思って、
完全に姿を消す。


大人になった高夫は、
必死に母を探す。
ハッピーエンドだから、
安心してください(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「ポトフ 美食家と料理人」 [映画]

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〔2023年/フランス〕


19世紀のフランス。
美食家のドダン(ブノワ・マジメル)と、
料理人のウージェニー(ジュリエット・ビノシュ)は、
食における、黄金コンビ。


ドダンがメニューを考案し、
ウージェニーがそれを再現する。
2人の舌は完璧で、
出来上がった料理は極上。


そんな彼らの名前は、
ヨーロッパ各国に広まり、
ユーラシア皇太子から、
晩餐会に招待されるまでになる。


しかし、豪華なだけの料理に辟易したドダンは、
最もシンプルな料理「ポトフ」で、
皇太子をもてなすという計画を立て、
ウージェニーに打ち明ける・・・。





この映画は、
お腹が空いている時に、
観ない方がいい(笑)。


なにせ、冒頭20分くらいであろうか、
ドダンとウージェニーの料理の場面が
描かれて、


極上の食材、
手際の良さ、
出来上がった料理の見た目、
そして、絶対美味しいであろう、その味、
と、全てに完璧なものを見せられて、
空腹だったら、拷問に近い(笑)。


音楽の世界に、
絶対音感というものがあるのは、
知っているけれど、
料理の世界にも、
絶対舌感というのがあるのでしょうね。
そして、そんな絶対舌感を持った2人が、
出会った事も奇跡だし、
20年間、仲違いする事もなく、共に過ごすというのもいい。


それから、この2人が料理をする時、
まだ幼い、ポーリーヌという少女が、
助手をしているんだけど、
この子の舌が、また凄くて。


ドダンはポーリーヌの能力を買っていて、
自分の後継者として育てたいと思っているのが分かる。
私もこの子の将来が楽しみだ。
スクリーンの向こうに世界があるなら、
この子のその後を見てみたい。


評価 ★★★☆☆

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